「中国はいかにして覇者たりえるか?」という話 #思考実験
「中国はいかにして覇者たりえるか?」という話 #思考実験
現在の中国共産党は、薄氷を踏むような統治運営を続けている。これは総書記一個人の問題にとどまらず、中国という国家が抱える構造的な弱さに起因すると考えられる。
では、中国はいかにして覇者たりえるか?
本稿では、思考実験として検討する。
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## 1. 背景
### 1.1. 二つの中国
中国共産党は1921年7月23日に、中華民国政府の統治下で創設された。中華人民共和国(現在の中国)は1949年10月1日に建国されている。いずれも当時のソビエト連邦共産党の支援を受けていた。
第二次世界大戦において、日本が戦った相手は中華民国である。したがって、現在の中華人民共和国が「抗日戦争勝利」を記念することは、歴史的にはやや複雑な事情を含んでいる。ただし、同様の構図は朝鮮半島にも見られるため、単純な比較はできない。
実際に日本と戦ったのは国民党軍(国民革命軍)であり、中国共産党の軍事組織である中国人民解放軍(創設:1927年8月1日)は、その一部(1/10と仄聞している)が国民党軍と協力したにすぎない。
日本との戦いで疲弊した国民党は、そののち米国から十分な支援を得られず、ソ連の後押しを受けた人民解放軍に敗北した結果、台湾に撤退し「二つの中国」が成立した。
余談だが、中国の至宝は台北市にある国立故宮博物館にある。
### 1.2. 香港
当時の香港は英国の領有下にあり、一時期日本が占領したものの、1997年7月1日の返還まで英国領が続いた。
冗談めかして「英国が租借した相手は清朝であり、その後継は中華民国(台湾)であるから、返還先は台湾であるべきだ」という意見も存在するが、もちろん正式な議論ではない。
### 1.3. 米国
個人的な見解ではあるが、歴史を学ぶうえでまず不可解に思えたのは「ニクソン大統領の訪中」である。
中ソ対立が1956〜1960年に顕在化した後、1972年に米国は中国との関係改善に踏み切った。
#漁夫の利 をえればよいものを、どうして米国が待てなかったのかはその内政に起因する。話が長くなるので、また別の機会にしよう。
また、米国の一部は「中国を支援すれば民主化が進む」という期待を抱いていたとされる。
しかし、権威主義国家において施政者が自ら権力を手放すことはほとんどない。カザフスタン共和国のヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領も、権力移譲後に失脚した例が示すように、権力者にとって権力の喪失は極めて危険である。
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## 2. 思想
### 2.1. 価値観の比較
一般に、以下のように語られることがある。
- 日本人は「和」を重んじる
- 米国人は「自由」を重んじる
- 中国人は「徳」を重んじる
以下では、それぞれを考察する。
#### 2.1.1. 日本
日本人が「和」を重んじるという評価は事実だが、それは必ずしも生来の気質によるものではない。
平安後期以降、長期間にわたり武家政権(軍事政権)が続いたことを踏まえれば「和」が重視される背景には、集団的秩序を維持する必要性があったと考えられる。
社会が不安定で、弱者が強者に対抗するためには集団に属することが不可欠であり、その集団を維持するためには規律が求められる。結果として「和」が尊重される文化が形成されたともいえる。
#### 2.1.2. 米国
米国が「自由の国」と称されるのは広く知られている。しかし、その「自由」は、多くの場合「自分自身の自由」であり、他者の自由を同等に尊重するものとは限らない。
米国は個人主義的傾向が極めて強い国家――権力の分断を好む国家であり、建国の由来にもそれが表れている。英国からの独立も、言わば「力による現状変更」で勝ち取った自由である。
JFKによる「国のために何ができるかを考えよ」(意訳)という言葉は、その個人主義的価値観を逆説的に示している。
米国の自由主義は理想として世界に受け入れられたが、その理想を自ら破壊するように今も変わらず分断している。
#### 2.1.3. 中国
中国文化は本来、徳による統治(徳治・王道)を理想とする。しかし実際には、王道が成立しにくい現実を理解しており、利益を最優先する覇道的行動に傾きやすい。
その背景には「易姓革命」の思想がある。天命を失ったと見なされれば、為政者は正当性を失い、処罰されうる。前政権の人物が強く処分されることも歴史上では多々あった。
そのため、中国社会では「一族」という単位が重要になり、広範な社会的信頼が育ちにくい。結果として、王道的なノンゼロサムゲームが成立しづらい。
### 2.2. ルール遵守の困難
たとえば「すべての運転者が車間距離を守れば渋滞が発生しない」としても、それを全員に徹底させることは容易ではない。
他国の人々に日本と同じ遵法意識を期待するのは現実的とは言えず、報酬制度などを導入しても効果が長続きしない可能性が高い。
### 2.3. ルールを守らせる条件
長期的利益を得るためには、短期的利益を他者に譲る必要があるという仕組みを構築することが望ましい。
復讐に罰ではなく幸福を与えるほうが効果的であるという指摘もある。自身の行動が長期的な不利益につながると気づけば、自滅的行動は減少する。
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## 3. 崩壊しない未来図
### 3.1. 反スパイ法の一時凍結
反スパイ法(中華人民共和国反間諜法)を一時的に停止することは、中国にとって一定の利点がある。
他者を信用しないという構造的問題が中国の弱点であり、それを法律として制度化することは、経済・外交の双方で不利益をもたらす可能性がある。
権威主義国家は時に不当な拘束を行うことがあるが、問題化した際に外交交渉で調整できる場合もある。
### 3.2. プロジェクト2049
建国100年となる2049年まで、特段の動きを見せず静かに影響力を蓄える選択もあり得る。
決定的な局面で一度だけ情勢を反転させればよい、という発想である。
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## 考察 #思想実験
中国は「勝てる」と確信した時に、早々に勝利を宣言する傾向があるが、これは必ずしも賢明ではない。
香港をめぐる統治でも、民主主義を急激に変更させるのではなく、時間をかけて自然に変質させることも可能であったと考えられる。
ジョークだが、中国が台湾側への返還支持を示した場合、国際社会がどのように混乱したかを想像すると、異なる展開もあり得た。
中国は「勝てるはずの勝負」で失敗することがあるが、それは体制の構造的な制約による部分も大きい。
日本にとって脅威となるのは、中国が弱者を装いながら強力に行動する場合である。
ただし、中国人民解放軍が党の軍隊である限り、中国共産党は常に緊張状態を維持せざるを得ず、安定的な覇権確立は容易ではない。




