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明らかな詐欺ですね

感想・評価・ブックマーク有難うございます。

 王都の北側には運河が西から東に掘られていて王都の物流を支えている。

 もちろん寒さが厳しい時でも運河が凍ることはない。水温が少し高めなのだ。寒い日なんかはまるで湯気が立っているように見える程だ。触ると冷たいんだけど。


 岸には船着き場があり大型の魔導帆船が何隻も停泊していて大勢の人たちが荷物の上げ下ろしをしている。

 そこから坂を上ると王都の北門だ。港から入ってくる荷物や王都から運び出される荷物を運ぶ馬車がひっきりなしに出入りしている。

 門の両脇は広めの公園になっていて庶民の憩いの場として提供されている。(何度も言うけど南半球なので北側の方が陽当りがいいのだ) 今は冬だからかあんまり人がいないけど。


 私は公園の一角にある四阿の中で人を待っていた。四阿に居るのは私とアリス、ボブ、トニーの何時ものメンバーだけで他に人は居ない。


 今日は割合温かい。あと十日もすれば春分の日。この国の暦では春分の日からが春だ。春になれば魔法学園では後期の授業が始まるし私達は王都を発ちエーコ領に戻る。そんな時期だ。


 あのショーの日からは大分日にちが経ったけど、あの日から監視は一度も来ていないし何の接触もない。どうやら諦めたようで目出度い。


 暇なので辺りを見回す。

 四阿の一方は壁になっていて、色んな広告が貼ってある。それを冷かす。

 模造紙ぐらいのサイズの和紙っぽい紙に手書きで文字や絵が描いてあるもの、小さめの紙に版画で刷ったらしいもの。色々ある。こんなに広告が貼ってあるってことは王都の識字率はそこそこ高いのだろう。

 そんな中一枚の広告が目に留まった。演劇の広告のようだけど知った名前があったのだ。それはこんな広告だった。


――――――――――――――――――――――――――――――

劇団「こそこそ屋」旗揚げ公演!

本当にあった怖い話を完全舞台化!


『恐怖 呪いの少女と怨念の屋敷』


あらすじ:

美しき貴族令嬢フレナは偽手紙でとある朽ちかけた屋敷に呼び出される。

そこに待ち構えていたのは悪徳貴族ボーレイとその一味。彼がフレナを罠にかけたのだ


しかしボーレイは知らなかった、その屋敷に巣くう怨念を。

そして少女が背負っていた古の呪いを。


怨念と呪いが響き合い、今、惨劇の幕が上がる……




東広場16番テントにて絶賛公演中!

(心臓の弱い方は決して見ないでください)


脚本・演出: 吟遊詩人マルク

………

……

…

――――――――――――――――――――――――――――――


 最初に目に留まったのは吟遊詩人のマルクさんの名前だけど、あらすじを見て噴きそうになった。これって私が巻き込まれたあれが題材じゃないですか。しかもよく見ると人名が大して変わってないし。筋は例によって大幅に脚色してあるみたいだけど。


 あの日のショーを見たのは私以外にはオーレイとその配下だけ。私はリース以外には話していないからオーレイ側から漏れたのだろう。マルクさんが言葉巧みに聞き出したのかな。それともあの演技論を戦わせていた監視チームの人達が本当に舞台俳優に転向してマルクさんに協力を仰いだって可能性もあるか。

 どんな話に仕上がっているのだろう。知りたいような知りたくないような……


 そう言えば舞台で悪徳貴族にされているオーレイだけど、メガネを買ったそうだ。もちろんレプリカメガネ、つまり伊達メガネで当人はファッションで掛けていると言っているそうだけど、噂によると相場の数十倍の金額を出したらしい。

 なぜそんなことをしたのか。

 噂によれば始まりはオーレイが「とある場所」で「小さな女の子の亡霊」を見てしまった事だそうだ。しかもその女の子と目が合い、抱き着かれてしまったらしい。その時女の子はおぞましい笑みを浮かべていたとか。うーん、可愛く出来てたと思うんだけどなあ。

 女の子はオーレイに抱き着くと直ぐに消えた。そしてそれ以上の事は起こらなかったんだけど、その時以来オーレイは引篭もってしまった。風の音にも怯えるような有様でずっと布団を被っていたらしい。ちょっとやりすぎたかも。

 周囲は魔力体を使ったイタズラだろうと言ったらしいのだけど本人は納得しなかった。魔力も変調放射も感じられなかったからと。

 そこに現れたのが自称霊能力者。オーレイは悪霊の邪視を受けたのだと言って解呪の儀式をしたのだそうだ。

 ちなみに邪視というのは見るだけで相手に呪いをかける能力のことらしい。リースは「呪いは相手に憑きっきりでかけるものよ。そんな便利な能力なんて無いんじゃない?」と言ってたけど。

 さらに自称霊能力者は「これを掛ければ更なる邪視を防ぐ」と言ってそのメガネを薦めたのだそうだ。オーレイは即座に言い値で買い取ったとか。前世で聞いたことがある手口、明らかな詐欺ですね。

 つまりオーレイが騙されて高すぎるメガネを売りつけられたっていう噂だ。

 でもその後オーレイはメガネを掛けることで立ち直ったそうだ。だからオーレイの身内は分かってて敢えて見逃したのかもしれない。


 しかし何処からこんな噂が流れてきたんだろう。オーレイの身内は喋らないだろうし、あと知ってるのは霊能力者? その霊能力者だって何処から話を聞いたかっていうとオーレイの身内からだろうし、口止めされているはずだし。


 そういえばさっきの劇団、立ち上げるのに元手が掛かっているはずだよね。もし劇団員がオーレイに不満を持っていたあの密偵達だとしたら、その資金、もしかして……


ちょっと長くなり過ぎたので二つに分けました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伏線が面白いですね!
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