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メタルリースちゃんです

感想・評価・ブックマーク有難うございます。

 あ、オーレイから変調放射。光球系の魔法を使ったみたい。隠れているつもりならせめて魔法ではなく灯りの魔導具を使わないといけないのに。


 ここでシュテファンが話し始めた。


「ここに集いましたるは半月党の精鋭。只今は加護を失っております故月魔法をお目に掛けることは叶いませぬが、皆月魔法の神髄に至りし者共なればその経験は必ずや月ノ巫女殿の力になりましょう。

 本来ここで皆を紹介申し上げるべきなれど、その前にやらねばならぬ事が御座りまする。どうやら屋敷の内に何者かが潜んでいる様子。確認に何人か向かわせまする」


 なるほど。変調放射を無視するのは変だからそうするのが自然だよね。ついでにオーレイの様子も確認できると。なるほどアドリブが上手い。


 シュテファンが目配せすると四人が玄関の扉に向かった。

 折角だから扉を開けてあげましょう。


 魔力の腕で扉をギイィィと開く。勿論中は真っ暗だ。

 本当はもうちょっと後のタイミングでやるつもりだったんだけど先に開けられちゃうよりはいいよね。


 四人の内一人が灯りの魔導具を取り出し点灯する。


「っ……! 足跡が……!」


 こちらに残っている偽月魔法使いの一人が気付いてくれたようだ、私がさっき作っておいた小さな足跡に。玄関まできっちり付けたので見えない小柄な何かが入っていったように見えるはず。


 四人はかなりビビったようだけど逃げずに戸口に近づいていき、中を照らして慎重に確認し始めた。大丈夫、何もありませんよ。


 戸口の四人はシュテファンとアイコンタクトした後おっかなびっくり玄関ホールに足を踏み入れた。

 全員入ったね。閉めてあげましょう。


 バタン!!


 あ、ちょっと勢いが付きすぎた。でも壊れなかったしいいよね。ついでに間違って開かないように魔力の板で塞いであげましょう。

 中からドンドン叩く音が聞こえるけど安心してください。壊れません。


 さて、ここからはずっと私のターンだ。オーレイの筋書きにもちょっと興味があるけど好奇心は猫を殺す、余計な欲はかかずに一気にクライマックスまで持っていく。


「私が今日来たのは」


 唐突に話始める。


「悲劇を起こさないためです。まず言っておきますが私は月ノ巫女などという者ではありません。どうやら一夜橋の件で誤解させてしまったようなので真実をお話ししようと思います」


 都合よく切り取った事実だけを話して間違った真実を読み取ってもらう。どうやら私、嘘をつくのが上手くないみたいだからね。因みにここまで嘘はついていない。もちろん「悲劇を起こさないため」というのもだ。ここでいう「悲劇」はオーレイやその部下が呪われたり祟られたりすることではなくエーコ家が弱みを握られてオーレイにいいように使われることだけど。


「話は二年前、一夜橋が架けられるより少し前に遡ります。

 ご記憶でしょうか、王都で怪異があり王宮の中にある霊廟の扉が内側から開いた日のことを。あの日、私は『永遠の8才』を名乗る人ならざる者と出会い、友人になりました。それ以来私の周りでは不思議な事が起こるのです」


「……リース女王……」


 誰かが呟く。そう、あの日私がリースと出会い仲良くなったのは本当のこと。時系列的には扉を開ける前だけどそこには触れない。あの出会いが初めての怪奇現象だったしその後別の怪奇現象に遭遇したり何度もリースと会ったり霊視能力を得たりしたので「それ以来不思議な事が起こる」もギリ嘘じゃない。


 さあ、どんどん本当のことを話していくよ。


「彼女は何時も私を助けてくる、かけがえのない友人です(本当)。

 もしかしたら皆さんは一夜橋について、私が身体強化をしてディートトゥック村から木を運んだと考えていらっしゃるのかも知れません。でもそれは違います。私は身体強化に関しては人並み以上である自信がありますが、あの橋に使われている木はとてもではありませんが持ち上がりません(本当)。

 あの橋が架かった実際の経緯はこうです。

 ご存知かもしれませんがディートトゥック村には二基の巨大な石碑があります。リース女王とクリクソン将軍の墓と言い伝わるものです。元々架かっていたつり橋が落ちていると知った私はその墓に向かって窮状を訴え、祈りました。すると嬉しい事に不思議な声がその祈りに応えてくれたのです。その方のお陰で橋が架かり、私達は川を渡ることが出来ました。月神(げっしん)の恩寵やら加護やらは関係ありません(ギリ本当)」


 実際には祈りの内容は木を切り出す許可を求める物だったし「構わない」と応じてくれただけで実際の作業は自分でやったんだけどそこには触れない。木をくれたおかげで橋が架かったのも本当だし、嘘はない。色々省略したけど。


 玄関ホール組は外に出るのを諦めて階段を上って行った。オーレイがいる部屋まで行く事にしたようだ。まあその扉も開かないんだけど。


 あ、遂にオーレイが光剣魔法を発動させたっぽい。それまで手下達が蹴ったり体当たりしたりしていたけどどうにもならないんで業を煮やしたようだ。

 さすがの魔力の板も光剣で切り付けられたらどうなるか分からない。ちょっと立ち止まってもらいましょう。

 魔力感知と霊視でオーレイの体の位置は把握できている。床から魔力の手を伸ばし、足首を掴む。


 不可視のままでは見ている手下さん達が詰まらないでしょう。見えるようにメタル状態にしてあげましょう。もちろん形はきっちり子供の手の形にしてありますよ。そこに抜かりはありません。あ、オーレイが腰を抜かした。直接見られないのが残念。


 折角なので手以外の部分も見せてあげましょう。特別ですよ?


 オーレイの脚を手で登っていくようにしながら床から上半身を、次いで下半身を出す。壁抜けしてからじゃないとメタル化出来ないので出てくるのと見えるようになるのに時間差があるけどそこは今後の課題、今日のショーでは大目に見てください。


 出て来たのはメタルリースちゃんです。なんとあの大怨霊リース女王本人がモデルなんですよ。ちゃんと顔のパーツ一つ一つに拘った力作です。微笑んだ顔がキュートでしょう? 結構苦労したんですよ。ここに来る前に本人を見ながら造形して、そのまま不可視状態で維持しながら連れてきたのです。前庭に足跡を付けたのもこの子です。メタルと言いつつ本物の金属じゃないんで触っても冷たくはないんだけどそこは御愛嬌。

 あんまり時間をかけてもダレてしまうので、少し勿体ないけどここでメタルリースちゃんは解体です。体の前側から消していきます。傍から見ているとオーレイの体に入って行くように見えるかもしれませんね。


「うひゃあああ!!!」


 オーレイの悲鳴が聞こえる。うん、少しすっとした。


「ここに来るにあたって皆さんの事を彼女に相談しましたが、彼女は『胡散臭い』と言って信用しませんでした。それどころか彼女はあなた方が私に仇を成すと確信しています。これ以上私と関わり続けると(私とエーコ家にとって)悪い事が起こってしまうでしょう。もう私に関わろうとするのは止めてください。これ以上の悲劇を止めるために」


 言うだけ言って屋敷を出る。もちろん足跡は自分の分だけしか残さない。メタルリースちゃんはオーレイの体の上で消えちゃったんだから屋敷を出ていったら変だよね。


 門から出て中から見えない位置まで移動する。

 そして皆がほっと一息ついただろうタイミングを見計らって開けっ放しだった金属製の門を魔力の腕でガシャンと閉めた。

 終わったと思わせておいて最後に一発かますのも定番だよね。


 間を置かずに塞き止めていた魔力の流れを元に戻し、敷地を囲んでいた光学迷彩も解除した。もちろん魔力の壁も全解除だ。

 庭の灯りが再点灯したようだ。でも人の動きはない。監視チームも付いてくる様子がない。


 あ、全員物凄い勢いで撤収し始めたよ。

 どうやらショーは大成功だったみたいだ。やったね!


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― 新着の感想 ―
ここで「ぷちっ」とやってしまっておけば……!
[一言] とっても面白かったです!
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