行先を見極めるぞ!
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離れに戻り、なぜ捕捉できなかったのかを考える。
私が戻ったときには既に今日のチームが屋敷の周囲で配置についていた。つまり監視チームは私が出かけている間に交代している。
例の空き屋敷には今誰も居ない。路上にもいない。もう遠く離れているのだろう。帰るときに行き違いになった可能性はあるけどここでは置いておく。
チーム毎に道が違う可能性もあるけど、そうなると追跡の続きは今晩ではなく明日の晩になってしまう。日数が限られているからこれも横に置いておこう。
前回見失った辺りの屋敷には居ないはず。念入りに屋敷内の魂を視て確認をしたから確かだと思う。
張り込みした場所が悪かったのかな。それはありそうだ。私が張り込んだのは見失った辺りから南西に少し離れた場所。なにしろ屋敷と道ばかりで丁度いい場所がなかったのだ。真っすぐ南に来てもまた西に折れても見つけられる場所ではあったんだけど、もし東に戻るルートだったら見落としてしまう。
地上に出た可能性もあるか。それだと光学迷彩に遮られて視えなかっただろう。
仕方ない、今晩はもっといい位置で張り込みしよう。具体的には誰かの屋敷の庭の真ん中だ。勝手に入って申し訳ないけど、真夜中だし誰も来ないよね。
夜。
見知らぬ誰かの屋敷の庭を拝借して張り込みを開始する。
直径10mの光学迷彩で横や上から見られても大丈夫。下は雪化粧した芝生だけど魔力かんじきのお陰で跡はつかないはず。
待つ事しばし、監視チームが北からやってきた。もちろん地下だ。
霊視で見ていると思ったよりも北で進路を西に変えた。これか! 昨日見つけられなかった原因は。
ごちん!
さて追跡を再開、と思ったところで背後で鈍い音がした。
「痛てえ! 何かあるぞ!」
「マジかよ。何も見えないぞ」
振り向くと光学迷彩越しにうすぼんやりと灯りが見える。見回りだ! しまった、地下にばかり気を取られていた!
私は音を立てないよう息を止め、魔力かんじきをうねらせて反対方向へと逃げ出す。
「ほらここに……あれ、何もない」
「ホントに何かあったのかよ」
「確かにあったんだって!」
灯りを左右に振って辺りを見回しているらしい。
こっちに来ませんように!
光学迷彩のせいで前が見えない。魔力の手探り移動だからノロノロとしか動けないのだ。
「フォックス、お前疲れてるんだよ」
「いいやこの膝の痛みは本物だ」
「でも何もないぜ。まあいいか。もう少し付き合ってやるよ」
付き合わなくていいから! 早く医務室に連れてってあげて!
そんな思いもむなしく彼らはしばらく探し続けた。
見つからないかドキドキだ。
なにしろ光学迷彩といっても完璧な物じゃないのだ。周囲の景色をを引き延ばすことで中にいる私が蜘蛛の糸のように細く、もしくは芥子粒のように小さくしか見えないようにする仕組み。注意して観察すれば景色が歪んでいるのが分かってしまう。
十分離れた所に移動できたと確信したときには冷や汗でびっしょり。
光学迷彩で高い筒を作り魔力の足で体を高く持ち上げて紙飛行機でテイクオフ! なんとか見つからずに屋敷を脱出できた。
当然のことながら監視チームは見失ってしまった……
人様の屋敷に勝手に入り込んだのがいけなかったんだろう。
考えてみれば夜は道を歩く人なんかいないはず。ということで今晩は道の真ん中で張り込もう。
がすっ!
「ぐぉっ! 何だこりゃあ!」
ひえええ、ごめんなさい!
巡邏の衛兵さんがいたよ。逃げよう。
屋根の上だ。
地面にこだわる事なんかなかった。高い位置だから下向きの視野もそれだけ広く取れて追跡にも都合がいい。今晩は屋根の上で待機だ。
どすっ!
「フギャアア!!」
ああっ、猫さん危ない!
咄嗟に魔力のクッションを屋根の脇に広く展開、なんとか落っこちた猫を受け止めるのに成功した。あれ、鳴き声から猫かと思ったけど意外と重めだ、別の生き物だろうか。とにかくビックリして気絶してるみたいだ。落っこちたら大怪我したかもしれない。危ない所だった。そっと地面に下ろしてあげよう。
そうだ! 光学迷彩が固いのがいけないんだ。光学迷彩の周りに柔らかな魔力を展開して事故を防ごう。
これでよし。
今日こそは行先を見極めるぞ!
2020年最後の投稿です。良いお年を。




