監視
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今回は少し短めです。
憑かれている!
最初はそう思った。
魔法を使う時の魂と魔力の動きを調べようと朝から霊視で周囲を調べ続けていたら、不審な魂が四つほど見つかったのだ。
明らかに人間の魂。だというのに魔力は奇妙なほど弱い。植物並みだ。明らかに普通の人間じゃない。(この際自分はどう見えるかについては横に置いておく。)
屋敷には入って来られないのか私が中にいる間は外で佇んでいる。しかし外出するとつかず離れず付いてくるのだ。
しかも毎日魂が入れ替わっている。そして三日目に元に戻る。つまり魂は十二……どう考えても組織的な監視アンド尾行ですね。魔力が弱く見える理由は魔導具か訓練か……それとも体質か。
おばちゃんの屋台でホットチョコレートを頂きながらさりげなく近くにいる一人を確認してみる。どこにでもいそうな地味なおじさんだった。こちらを気にしている風でもなくじゃがバター的なものを買い食いしている。あんなのもあったんだ、いつも真っすぐおばちゃんの屋台に来るから気付かなかった。後で買いに……じゃない。地味なおじさんが食べ終わる前におばちゃんの屋台を離れる。
地味なおじさんは私を気にせずじゃがバター的なものを食べ続け、その代わりに別の尾行者――こちらも特徴のない初老男性――がさも通りかかった風に付いてきた。全く不自然なところはない。しかも屋敷の周りにいる時とは違い二人とも普通の魔力を放っている。隠れている時とは全然印象の違う魔力。きっと偽装だね。
残りの二人は私の行く先に回り込んでいるようだ。
暫くして初老男性が脇道に逸れた。代わりをするのは少し先で屋台を冷かしているお兄さんの尾行者だろう。
気が付くとさっきじゃがバター的なものを食べていた尾行者が追い抜いていった。いつの間にか雰囲気や魔力がガラッと変わっている。もう別人にしか見えない。いつの間にか服装も変わっている。
これ、霊視で気付いていなかったら絶対分からないよね。つまり相手はプロ。ネット小説によく『影』とか『暗部』っていうのが出て来てたけどきっとそれだ。なんだか嫌な感じ。
でもプロの監視を付けられる覚えなんて……結構あるかも。
まず実家。
私が外出する時はアリスやボブやトニーが付いて来ているけど三人とも私と仲が良い。だから監視を別に用意することも考えられなくもない。お姉様には付いていないみたいだから護衛ではないはず。
次に悪役令嬢。
悪役令嬢が私の行動パターンを把握しようと監視を付けていた、ということはあり得る。前回会えたのはお姉様がタレこんだせいだけど、それを毎度当てには出来ないだろう。また偶然を装って接触してくるつもりなのかもしれない。それとも悪役らしく罠を仕掛けてくるか。
弱みを握ろうとしている可能性もある。エーコ家の中で一番何かやらかしそうなのは私。それを待って攻撃材料にしようとしているのかもしれない。
罠とか弱みとかなら悪役令嬢以外の第一王子派の可能性だってある。何しろ敵対派閥だし、派閥抗争に熱心だったエーコ家は目障りだろう。排除しようと考えても不思議はない。
ひょっとしたら国自体かもしれない。
王都を危険な爆弾娘がうろついているのだ。監視ぐらい付けてもおかしくはない。
幸運にも私の深夜の外出は気付かれていないっぽい。離れを出た後ももずっと屋敷を見張っているみたいだからね。光学迷彩がいい仕事をしてるみたいだ。これからもバレないように気を付けよう。