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どうしよう

評価・ブックマーク有難うございます。

 どうやって直径5mの巨木を伐るのか。


 切断力に優れた魔法と言うと光剣魔法だ。今はもうちゃんとマスターしている。

 他に切断に使える魔法というと魔法の刃を飛ばす飛刃とか、後は魔法の砂粒を叩きつける強風(ゲール)なんかもあるけど、切断能力は光剣の方が段違いに高い。

 鋸(のこぎり)みたいに挽(ひ)く必要がなく押し当てるだけで切れていくのもメリットだ。

 但し問題もある。

 最大の問題点は刀身の長さだ。1m弱しかない。無理をすれば伸ばせるんだけどその分脆くなってしまい実用には堪えない。というか3mも伸ばしたら多分動かしただけで壊れる。ある程度以上伸ばすと急激に維持が難しくなるのだ。


 ではどうするか。

1. 魔力の板を用意します。形は細長く、厚みは薄く。長さは幹の直径より少し長い必要があります。

2. 板の縁に沿って光剣魔法を展開します。太さは板の厚みに合わせて細く。片側だけで十分です。

 するとあら不思議! 魔法の大鋸(おおのこ)の完成です。

 伸ばし過ぎた光剣魔法の脆さを魔力の板が補う。ここで使うのが「魔法体」魔法だったりすると光剣と反発しあうので光剣が壊れる。かといって本物の板を持ってくると光剣が板自体を破壊してしまう。でも魔力の板は単に硬いだけの魔力なので問題は起こらないのだ。


 早速木の根元に魔法の大鋸(おおのこ)を押し付ける。

 大鋸は最初軽く押すだけで木に食い込んでいった。しかし少しすると徐々に重くなっていき、しまいには押しても引いても動かなくなった。身体強化をMAXにかけてもびくともしない。


 これは……巨木の重みで魔力の板が挟まれているんだ。

 木を少し押してみ……ると手形が木に残りそうだったのでまず魔力の板でぐるりと幹を保護してから押してみる。

 おお、大鋸が動く。しかし少し動かすとまた動かせなくなってしまった。

 今度は魔力の腕で木の上の方を押してみる。

 魔力の腕は私の腕力に比べれば非力なんだけど遠くで押した分だけてこの原理が働いて何とか幹の真ん中まで刃を通すことが出来た。

 同じ要領で反対側からも刃を入れて巨木を根から切り離すことが出来た。


 さて動かそう、と思ったけど横に張り出している枝が邪魔だね。

 魔力で巨木が倒れないように固定しながら太い、というか巨大な枝を切り落としていった。勿論自由落下させるのではなく魔力の滑り台で邪魔にならない場所に纏めておく。

 本体がぐらぐらするので倒れないように固定しながらの作業はかなり集中力が必要だった。先に枝を切り落としてから幹を切るべきだった。なんとかやり切ったけど疲れた。


 ちょっと息を整えてから次の作業だ。


 挿し木の準備をしないと。

 植木鉢はもう冷めているかな。と思って見てみたら……

 おおう、なんか割れています。それはもうぱっくりと。落とした枝がぶつかったとかではなく自然に割れた感じ。流石に作り方が適当過ぎたのかも。

 成功させるには適切な温度とか焼き物に向いている土とかを見つける必要がありそうだ。でも試行錯誤している暇なんかない。

 別の方法を考えないと。なにか使えるものは……あ、あるよ。あるある。木材が沢山。さっき切り落とした枝が使える。


1. まず適当な太さの枝を丁度いい長さに切ります。

2. 次に魔力で少し先がすぼまった円柱を作り、表面に沿って光剣魔法を展開します。もう剣とは言えない形だけど……

3. 断面に円柱を押し当てます。

円柱はどんどん木材に食い込んでいき、上手い具合に器になった。水抜きの穴をあけて木製植木鉢の完成だ。

 同じ要領で受け皿も作った。

 あとは石を敷いて土を詰め、杉に似た枝の先っぽを三本ほど挿してみる。

  うーん、やっぱりたった三本だと不安だな。十本にしておこう。でも小さい植木鉢にそんなに植えるのはさすがに過密かも。よし、植木鉢と受け皿のセットをもう一つ作って五本ずつにしよう。

 葉っぱは少ない方がいいんだっけ。少し毟っておこう。上手く育つといいんだけど…… あ、水も遣っておこう。雪を溶かせばいいだろう。




 さて、挿し木も準備できたしいよいよ木を動かそう。

 この村には巨木を倒せるようなスペースがないので立てたまま移動だ。


 今のままだと持ちにくいので一工夫。

 木をちょっと向こう側に傾けて開いた隙間に魔力の板を挿入。次に木を手前に傾けて魔力の板を向こうまで伸ばす。

 切り口を魔力の板で覆ったら、板の縁から筒状に魔力の壁を立ち上げ木全体を覆う。

 最後に適当な位置にリュックのような肩紐を魔力で作って出来上がり。これで木を背負える。


 肩紐に腕を通してよいしょと立ち上が……れない! 重い!

 身体強化しても持ち上がらないなんて想定外だ。ちょっと過信していたかも。

 魔力の腕で補助してみてもダメ。魔力の腕を複数出してみたんだけど、その分だけ一本当たりのパワーが落ちるらしくまるで持ち上がらない。


 どうしよう。




 現状、私は身体強化を発動し、伐った巨木を立てたまま魔力で覆っている。

 今晩中にこれを遠く離れた川縁まで運ばなければならない。

 でも重くて持ち上がらない。以上。

 はい、詰んでます。


 いや、簡単に諦めちゃいけない。

 運ばないと川を渡れないし、伐りだすのを許可してくれた墓の下の何者かにも申し訳ないし、そもそも伐った木を置いておけるような場所がない。


 もう一度いまの状態を詳しく見てみよう。

 身体強化はMAXだ。これ以上出力は上がらない、いつものやり方なら。

 ……実はもっと出力が上がりそうな方法がある。出力を抑えるための勉強をしている時に気付いたのだけど、魔力を調整すればもう一段出力が上がりそうな気配がするのだ。

 でもその方法は出来れば使いたくない。暴発したときの被害がその分大きくなってしまうからだ。そんなことになったらもう人間社会では暮らしていけなくなるかも知れない。そうなったら森の奥でクマオと引篭もり生活……一瞬それもいいかもと思ってしまったけど諦めるのはまだ早い。試すのは最後の最後にしよう。


 切り口に挿入した魔力の板は潰れずに形を保っている。巨木の全重量がかかっているにもかかわらずだ。これは持ち上げるのに使えないだろうか。

 魔力の板を変形して厚みを増加…あっ! 潰れてしまった! 板が消えて厚み分数センチ落下した巨木がしぐらぐら揺れる。とっさに魔力の腕で木の上部を支え何とか安定させる。ふぃぃ、危なかった。

 考えてみれば当たり前だった。魔力の腕の力と言うのは魔力の形を変える力そのもの。魔力の腕で持ち上がらないのだから板の変形だって使える訳がない。


 でも一旦形を固定した魔力は巨木の重量を支えられるのだ。持ち上げるのではなく道として使えばいいんじゃないだろうか。


 もう一度切り口に魔力の板を被せる。

 今度は切り株側にもだ。その切り株側の板を幅はそのままに長く伸ばしていく。横に落ちないように側壁も必要かな。

 そうして出来上がったのは幅4m長さ50m程の樋(とい)のような道。緩やかにカーブして村の入り口から道へと続いている。傾きは無く水平だ。

 巨木を立てた状態で慎重に魔力の道の上を押していく。魔力の手を使ってバランスを取りながら、倒さないように慎重に。

 うん、これなら私の力で動かせる。

 でも前が見えないな。森の木なら魔力感知で分かるけど岩とかがあると分からない。魔力探知を使い続けるって手もなくはないけどアレは集中力が必要で疲れるから長くは続けられない。リースの霊廟の時みたいに魔力の触手で触って確認するのは速度を出すのには向かないし。

 よし、魔力で引き綱を作って引っ張ることにしよう。

 暗視のおかげで視界は十分だ。これで問題ない。

 元からの道の上に魔力の道を構築していく。通り過ぎた部分は消す。よし、これでどこまでも行けそうだ。


 村の入り口でいったん止まる。

 村の奥には二つ並んだ墓。もしかしたら中にいる誰かがこっちを見ているのかもしれない。

 取り敢えずそちらに向かって

「有難うございました。失礼します」

と言ってみた。返事はなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ペイシェンス(生活魔法しか使えません)「首チョンパカッター!」 魔物は首を刎ねられた。 魔物Aは死んだ。 魔物は首を刎ねられた。 魔物Bは死んだ。 魔物は全滅した。
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