これからは“(仮)”を取って悪役令嬢と呼ぼう
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廃村を出て帰り道、ボブ達はまだ作業していた。もう木は片付けられていて、今は偽の森があった辺りで何かしている。
穴ぼこだらけのはずだから地面を均しているのかな。
そういえば誰かが気になる事を言ってたな。偽装に使われた木は伐られたばかりだって。つまりしばらく前に来たという悪役令嬢(仮)はあの偽装とは直接関係ない。
彼女は廃村で二泊したこという。つまり町から三日間離れていたのだ。本当にあの石碑があるだけの廃村で二泊もしたのだろうか?
ちょっと悪い予感がしたので旧街道を辿ってみた。
そして見つけてしまいました。
ドーナズス川を渡るためのつり橋が見事に落ちているのを。
悪役令嬢(仮)はきっちり悪役をこなしていたんだね。これからは“(仮)”を取って悪役令嬢と呼ぼう……って現実逃避してる場合じゃない。
どうしよう。
ここはあの分かれ道から大分進んだ所。もしここに来て引き返すとなったら三日はロスする。
かといって橋を直せる?
つり橋が架かっていたのは崖の上。先端は水没しているみたいだけどつり橋の大部分はあちら側にぶら下がっている。見た感じこちら側の綱が切れた(切られた?)だけみたいだ。
引き上げて切れた所を繋ぎなおせばつり橋の形にはなるだろう。結び目の分も考えると綱の長さが足りないから蔦か何かで間を埋める必要がありそう。
でも強度が心配だ。少なくとも馬車一台の重さに耐えなければならないのだ。
私が強靭化を掛ければ皆渡れるかな。蔦を魔法できっちり乾かせば強靭化はできるだろう。
でもその後が問題だ。私がいなくなって強靭化が解けた後、関係ない人が通りかかったときに落ちてしまったら最悪だ。
自分で修理するのは諦めよう。
かといって旧街道チームに修理できる人と道具があるだろうか。ロープはあるはず。でもつり橋に使う想定はしてないだろうから強度の問題は残る。
周りに木が生えているからそれを材料に新たに橋を架ける? 分からないけどムリそうな気がする。なにしろ向こう岸までは魔力の腕を伸ばして計ってみると50mぐらいはある。それなのにここらの木はどれもその半分以下の樹高なのだ。長さが足りないのをどうにかするなんてきっと専門技術。本職の人でもないと出来ないんじゃないだろうか。
せめて向こう岸まで届くような高い木でもあればなんとかなると思うんだけど……ってあったね、巨木が。例の廃村に。
そんな訳で廃村に戻ってきた。
道すがら周囲の木を見てみたんだけど巨木は一本もなかった。
この廃村を境に急に巨木が増えるイメージだ。とはいえ森の奥から木を運び出すのは大変だろう。まず木を通すための道が必要になる。その点広場に面したのならそのまま運んでいけるから楽だ。
適当な一本を魔力で包んで形と大きさを調べる。
根元近くは直径5mほど。スギかヒノキか分からないけどそれっぽい針葉樹で幹は真っすぐに伸びている。80m上でも直系3mだ。あそこに架ける橋の建材としては十分だろう。
でも勝手に切り出しちゃっていいのかな。
周りの地形を確認したけど切り株らしきものはない。少なくとも林業はやっていないみたいだ。
でも念のためここの主には話を通しておこう。
ここは国領だけど勿論相手は国ではない。リースみたいな誰かだ。居ればだけどね。魔力も何も感じないんだけど、もし居るなら二基の墓のどちらかだろう。
墓の前で手を組んで祈りの姿勢をとる。
「不躾ながらお願いがございます。
急いで郷里に戻らなければならないのですがドーナズス川のつり橋が落ちているのです。新たに橋を架ける建材としてこの村に生えている巨木を一本分けていただけないでしょうか」
『構わないよ。僕らにはもう用がないものだからね。要るだけ持っていって』
おおう、居ました! クリクソン将軍か、それとも他の誰かかは分からないけど居ましたよ! 無断で切らないでよかった。危なかった。下手したら呪われる所だったよ。
「寛大なお言葉、感謝します」
『その代わりといってはなんだけど少しお願いがあるんだ。無理なら無理で構わない。失敗しても文句は言わない。切った木の枝先でいい、何本か持って行って挿し木で育ててほしいんだ。最終的にはリョーザンの地に植えてほしい』
「種ではいけないのでしょうか? それからリョーザンの地とは何処でしょうか?」
『挿し木でお願い。枯れたら枯れたで諦めるから。リョーザンはイーデン川の中流にある盆地だよ』
イーデン川という名前には聞き覚えがある。確か国の北東の方を流れていたはず。あとで地図を調べればわかるだろう。
「お答えいただき有難うございます。微力を尽くしてご依頼を果たします」
『行く機会があったらでいい。無理はしなくていいからね。もう一度言うけど枯らしてしまっても恨まないから』
「畏まりました」
余計な事は言いません。理由は聞かないし正体は誰かも尋ねません。触らぬ神に祟りなしです。折角許可してくれたのだから余計な事はせずにさっさと作業に移ろう。
まずは依頼を果たすため、植木鉢を用意しないと。
素焼きの鉢なら作れるかな。縄文時代からあるものだしそんなに大変じゃないはず。
取り敢えずその辺で取った泥をこねて鉢と受け皿を作り、魔力で密閉空間を作って炎魔法でしばらく加熱してみる。
どのくらい焼けばいいんだろう。よくわからないけど見た目はカラカラのカチカチっぽくなったので終了。自然冷却させておく。
その間に木の伐り出しだ。




