巨大丸木橋
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二つの植木鉢を魔力の手で抱え、歩きながら巨木を曳く。
しかしこのスピードだと時間がかかりすぎる。
かと言って走った場合何かの拍子に後ろの巨木に轢かれてしまいそうで怖い。
木の後ろに回った場合は前方確認に問題が出る。
魔力の腕だけで曳く? そうするとバランスをとるための腕のパワーが不足しそうだ。腕の総出力は全体で共通なのだ。
何かいい方法はないだろうか。
……風魔法が使えるかも。
この国で風魔法というと単純に大気を動かして風を吹かせるだけの魔法だ。
但し魔力の消費が少ない割に結構な風速が出せる。
魔力で帆を作って風を当てれば引っ張らなくても進みそうな気がする。
巨木の真ん中あたりに魔力で大きな帆を作り、後ろから風を当ててみる。
ああっ! ひっくり返る!
慌てて逆側から風を送り、魔力の腕も使って木を安定させる。
うーん、いいアイディアだと思ったんだけど、バランスをとるのが思ったより難しい。
よし、押してダメなら引いてみよう。
魔力の帆を消し、代わりに魔力の道側面の壁を上に伸ばし天井も作る。
巨木がすっぽりはまった縦長の魔力のパイプの出来上がりだ。
そして風魔法で前面の空気を追い出してやると……
前後の気圧差で木が前に進み始めた!
おお、こちらの方がバランスを取りやすい。速度を出しても大丈夫だ。
その分先頭部分を伸ばしていくのが大変だけど何とかなる範囲。このままガンガン進もう。
ちなみに私はパイプの上を走っている。出来れば木の天辺あたりに座って制御に集中したかったんだけど流石にパイプの中に入る気にはなれなかったのだ。
例の分かれ道にはもう誰も居ない。お陰で心置きなく巨木の運搬に集中できる。
全行程の中で分かれ道部分だけは急カーブなのだ。ここだけはゆっくり慎重に方向転換。残りは高速ですっ飛ばして川まで移動。
結構時間がかかったような気もするけど星座の位置を見る限り夜明けまではまだ時間がある。
川の手前で木をゆっくり倒していく。一気にズダーーン!!と倒すのは危険だ。衝撃で川岸が崩れてしまうかもしれない。
まず魔力の板を何十層も重ねて急斜面を作り巨木を立てかけた。そして板を一枚ずつ消していってゆっくりゆっくり水平にしていく。
最後の一枚は向こう岸まで伸ばしてある。その上を滑らせて向こう岸まで木を渡す。あ、先端の細い分(と言っても太さ1m以上あるけど)ちょっと邪魔だな。奥の森の中に突き刺さりそうだ。思い切って切り落としちゃおう。うん、それでも両側とも20mぐらいは余裕があるね。
転がったりしないよう岩を置いて固定して巨大丸木橋の出来上がりだ。
こちら側で直径5m、向こう側でも4m近い巨木の橋だ。なかなか迫力がある。
ふぃー、疲れた。それに大分魔力を消耗したよ。魔力のパイプは魔力を消費しない、というか材料である魔力を最終的に回収できるので問題ないんだけど、盛大に使った風魔法で大分消費してしまったのだ。
移動中に魔力不足気味になってしまい、久しぶりに積極的に魔素を取り込んで回復を図ったんだけどそれでも足らず、最後の方はパイプの長さを短くしてその分浮いた魔力で魔法を使っていたのだ。
外に展開していた分の魔力は体に纏わせている分を除いて全部回収したから今の消耗具合はそんなでもないんだけど、精神的にちょっと疲れた。帰る前に少し休もう。
改めて巨大丸木橋を見る。
どう見ても唯の丸木だ。この上を馬車では渡れないよね。
しょうがない、少し加工しておこう。
丸木橋の横に魔力の足場を作り、魔法の大鋸で半分にスライスする。
そして切り取った上側を半回転させつつ横に下ろせば、ああ何という事でしょう、上面が平らな橋が出来たではありませんか。しかも幅が2倍に! これなら馬車でも悠々通れることでしょう。
岩と土を追加で持ってきて強固に固定する。ついでに匠の心配りとして上り下りするための斜路も作る。厚みが2.5mもあるから必要だよね。
馬車二台分ぐらいの重さの岩を背負って向こう岸まで行ったり来たり、ちょっと飛び跳ねてみたりしたけど橋はびくともしない。
うん、完璧。
欄干がないのと真ん中に割れ目があるのが気になるけどやり始めたらきりがない。まあ大丈夫だろう。きっと。
私たち旧街道組は夜通し移動して予定通り旧街道を抜けることが出来た。
基本的に何の問題も無かった。例の橋を除いて。
皆橋を警戒したので渡るのに半日かかってしまったのだ。
警戒した理由は生木だったから。つまり作り立てだったので何かよからぬ仕掛けがあるのではないかと警戒したのだ。上に乗ったらぼっきり折れるようになっているとかね。
だからまず罠がないかを調べたのだ。命綱を付けて橋の裏側まで調べる徹底ぶりでこれにかなりの時間がかかった。罠なんか無いよ大丈夫だよと言えないのがもどかしかった。
もっとも橋の近くに隠しておいた植木鉢を自然に回収できたのでその意味ではよかったのだけど。
いざ渡る段になっても切り出したばかりの木だと強靭化を受け付けないからと馬車を一台ずつ慎重に通過させることになった。ちょっと慎重すぎない? とも思ったけど皆第一王子派の妨害工作が頭にあったんだろう、誰も反対しなかった。
そんなこんなで橋を渡るのには時間がかかったけど、その後はサクサク進むことが出来たので最終的には予定通りだ。
因みに「馬車を曳く幼子」には出会わなかった。そんなの居る訳ないよね、と言ったらボブに変な顔をされた。解せぬ。
一方で本街道組はきっちり足止めされてしまったらしい。
次の町まで王家一行と一緒に移動するところまでは予定通りだったらしいのだけど、その後何やかやと移動を制限されて国領を出るまでの何日かは王家と共に移動するしかなかったんだとか。
ともあれ旧街道組が成功したので第一王子派の陰謀は潰えたのだ。めでたしめでたし……ってこれから王様達を接待する準備をしなきゃならないんだけどね。




