表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/375

少し酔っていたのかも知れない

評価・ブックマーク有難うございます。

 頑張ってエールを飲む。

 ヴォルフくんがあんなに頑張ったのだから飲みづらい位で弱音を吐いてはいられない。前世の死因も関係ない。とにかく飲む。


 その後、ヴォルフくんのお母さんで私の乳母だったロッテさんも会いに来てくれた。

 今はこの村で旦那さんと一緒にエールの原料になる大麦を育てているらしい。元気そうで良かった。


 そうこうしているうちに、思いの外早くエールを飲み切ることが出来た。やれば出来るじゃん私。

 でも将来結婚する時には豊穣の神殿は止めよう……って結婚できないから関係ないか。


 空になった特大ジョッキを返して馬に乗って屋敷に帰る。実際には私は鞍に横乗りしているだけで、アリスに引いてもらうんだけどね。乗馬の練習なんてしたことないし。因みに馬は王都まで共に旅したジーク君だ。彼は私の馬ということになっているらしい。そのうち乗る練習もしないとね。


 アリスに引かれて村から出たところで猟師のクルトとスージー父が不穏な動きを始めた。振り返らなくても魔力感知で背後の動きは分かるのだ。

 私の居たあたりに来て二人で地面を見ている。何をしているのだろう。もしかして足跡をチェックしている? おおう、まだ疑われてるよ。


 しかし問題なし!


 今履いているのは改まった席用のおしゃれなパンプス。しかも泥道を歩くための木製のオーバーシューズを装着済み。足跡はひし形を2つつなげたような特徴的な形になっている。森に行くときはぺったんこなショートブーツだ。形もサイズも違うのだ。木に付いた足跡と比べても同じとは思われないはず。

 あ、ショートブーツを急いでどうにかする必要があるな。

 相手がスージー父なのが痛い。スージーならブーツを持ち出せる、というか足型をとれるからだ。靴は全て私の足に合わせた職人の手作り。ぴったり一致したら私のだという証拠になってしまう。

 捨てるのは悪手。捨てたらスージーに直ぐバレてしまうので疚しい証拠があったと喧伝するようなものだ。捨てたブーツを回収されてしまうと最悪だ。

 よし、靴底にスニーカーのような滑り止めの溝を彫ろう。つるつるで滑りやすいのが気になってたからいい機会だ。滑り止めがあれば違う靴だと主張できるだろう。よし離れに戻ったらさっそくやってみよう。


 その時私は少し酔っていたのかも知れない。


 指先に魔力の渦を小さく纏わせ靴底に軽く触れると少し削れる。靴底は単なる一枚革であまり厚くないから穴を開けないように気をつけないと。そのまま指を動かすと溝が出来る。ジグザグに動かすとジグザグ模様になる。これを全体にやれば滑り止めの完成だ。

 でも唯のジグザグ模様じゃつまらないな。

 よし、踵の所をクマの絵にしよう。

 線はどうしてもシンプルにせざるをえないので某SNSのマスコットキャラそっくりになっちゃったけどしょうがないよね。穴も開かなかったし上出来上出来!




 そして翌朝、私は頭を抱えた。


 後ろには点々と特徴的な足跡。特に踵部分にある無表情なクマの顔がよく目立つ。

「まあ、可愛らしい足跡ですね!」

 悪いことにアリスにバッチリ見られてしまった。

「へえ、面白いね」

 ブラインお兄様には興味を持たれた。

「どうしたのこれ! 私も欲しい!」

 ミリアお姉様は欲しがった。

「…………」

 剣術指導のフランツ教官は何も言わなかったけど天を仰いで嘆息していた。


 朝から剣術の稽古があったので何も考えずいつものショートブーツを履いていったらこうなってしまったのだ。


 クマの顔付き足跡が私のだと知られてしまった。これでもし森の中で足跡が見つかってしまえば私だと一瞬でバレてしまう。きっと外出禁止にされてしまうだろう。

 もうこのブーツを履いて出られない。でも他の靴は運動には向かない。激しく動くと脱げてしまいそうなものばかりだ。どうしよう。


 裸足で出かける? 身体強化で怪我はしないだろうけど私の素足の跡が残ってしまいそう。それに裸足で出歩くのはさすがに抵抗がある。

 靴の上からオーバーシューズを付ける? 残念ながら昨日オーバーシューズの足跡をしっかり見られてしまった。足跡を残せないのは同じだ。

 新しい靴を作ってもらう? お父様の許可か出るかどうか……それに経験上直ぐには出来上がらない。職人を呼んで足型を取ってと色々あるのでそれなりに時間がかかってしまう。

 魔力で何とかする? もしかしたら魔力の纏わせ方次第では足跡を残さずに歩けるかも。なにしろ今まで靴底は強靭化こそしっかりやっていたものの魔力纏いは適当だったのだ。まだまだ研究の余地が沢山ある。

 よし、しばらく試行錯誤だ。色々試してみよう。


 ちなみにお姉様のブーツにも同じ加工をする事になった。ただし顔はネコ。出来上がったらお姉様はあちこちで自慢するだろう。つまり私の足跡の認知度も一気にアップするわけだ。とほほ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ