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魔力かんじき

評価・ブックマーク有難うございます。

 ついに足跡を残さずに歩けるようになった。

 厳密に言えば巨大な足跡が浅く付くようになった。足の裏に纏った魔力を大きく広げ、体重を分散させたのだ。雪の中を歩くための「かんじき」とか「スノーシュー」みたいなものだね。魔力かんじきと呼ぼう。それよりずっと面積は広いけど。お陰で雑草を踏んでも茎がほとんど折れないくらいの重さしかかからないのだ。足跡を見つけるのはまず無理だろう。

 しかもこれは「魔力体」系統の魔法ではなく単なる魔力操作、魔力纏いの延長なので変調放射も出ないし他人からは視えず感知もできない。

 これで問題なく夜のお出かけが出来るようになった。今までは雨でぬかるんだ日や雪が積もった日(この辺りではあまり無いけど)、つまり足跡がそこら中に付いちゃう日は出かけられなかったけどそれももう大丈夫だ。


 初めの頃は色々苦労した。

 靴底の模様を隠すのは問題なかった。溝の両側を魔力で繋ぐだけで済んだからだ。でもサイズを誤魔化そうと思うと急に難易度が跳ね上がった。魔力を大きく板状に展開しようとしたのだけどなかなか安定しない。すぐ崩れてしまうのだ。

 暫く練習してコツを掴んでからは魔力の板自体は安定したんだけど、それだけではダメだった。

 幅が大きくなりすぎて右足の板を左足の板で踏んでしまって転んだり、それを避けようとしてガニ股になって、でも気を抜くとまた踏んでしまって転んだり、内側部分を無くしてみたけど内股になったときつま先部分を踏んでしまって転んだりと一人コントを繰り広げてしまったのだ。主にクマ姐さん一家の前で。魔力かんじきは他人には見えないから余計に滑稽だっただろう。

 子熊ちゃんたちにあきれられてしまうという悲劇も起こった。もっと悲劇的なのは子熊ちゃんたちが育ってきってしまってもう立派な若熊になってしまっていたということだけど。


 魔力かんじきを足の裏ぴったりのサイズにすれば簡単に解決できるのだけど、それだと最早かんじきではなくなってしまう。ちょっとむきになって色々研究した結果、凄い事が出来るようになった。


 この魔力かんじき、実用性のポイントは二つだ。

 一つ目は広げた足の魔力がもう片方の足や体なんかに干渉しないようにする事。もし本物の板だったりすると踏んづけたりぶつけたりはしょうがないんだけどそこは魔力、調整次第で自分の魔力同士なら問題なく繋がって一体化したり離したりできたのだ。というかこれが出来ないと話にならない。

 コツを掴むまで少しかかったけど、出来るようになってからは普通に歩けるようになった。目出度い。

 もう一つは形を柔軟に変える事。野原を歩くときは水平に広げていればいいんだけど、木の枝に飛び乗るときなんかは広げたままだと幹に引っ掛かって軌道が逸れたりする。その前の踏み切りの時に空気抵抗分だけ強く踏み切る必要があるので結局足跡もハッキリ残ってしまう。(形は足型じゃないけど)

 だから魔力かんじきには柔軟性を持たせ、さらに必要に応じて消したり変形させたりしなければならない。これはもう慣れ。訓練あるのみだ。


 そして「空気抵抗がある」、これが実は凄いことだった。

 今までジャンプして着地するときはかなり勢いが付いていて、かなり深い足跡がついてしまっていたのだけど、空気抵抗を上手く使って減速する事が出来るようになった。

 勿論大ジャンプからの着地だとパラシュート並みのサイズが必要なんだろうけど木から木へ、木から地面へと飛び移るような場合はそれ程の減速は必要ない。というか形を工夫して、例えば紙飛行機型にすれば滑空も出来る。だからそれほど勢いをつけてジャンプする必要も無いし、木と木の間をすいーっとすり抜けてふんわり着地できるのだ。勿論足跡もほとんど分からない位にしか残らない。うん、かっこいい。

 そしてさらに!

 空を歩けるようになったのだ!

 膝を上げるときに魔力かんじきを窄(すぼ)め、降ろすときに広げる。それだけで歩ける。水上歩行の時みたいに爆発させるわけじゃないから魔素を撒き散らすこともない。完璧だ。というかもう水上歩行もこっちの方式でいいんじゃないかな。


 空中歩行と滑空を利用してクマオに背後から近づいてみた。いつもは遠くからでも私を見つけるクマオだけどすぐ傍にいくまで気付かなかった。声をかけたら「フグァッッ!!(ビックリしたっっ!!)」だって。大成功。

 なお、クマオは発情期が終わって求愛行動はしなくなっていた。でも私と仲良くしてくれる。この位の距離感がいいね。




 魔力かんじきの習熟に熱中していたある日、クマ姐さんの所に行くと子熊ちゃんたちがいなくなっていた。

 巣立ってしまったらしい。随分と急だ。

 結局最後までモフれなかった。というか最後の頃は大きくなりすぎていたのでもうあんまりモフる気もなかったのだけど。

 でももし下の村に近づくようなら別の所に連れて行かないと。見つかって討伐されてしまうのはかわいそうだ。

 クマ姐さんは彼らがどっちに行ったのか知らないらしい。「後はアイツ等の人生(クマ生?)」なんだって。野生の親子関係ってさっぱりしているというかなんというか……自分で探すしかないのかな。


 魔力の紙飛行機ですいーっと飛び回ってその晩のうちに二頭とも見つけた。一頭は北、つまり村の方向へ移動していたので説得(物理)して南に行ってもらった。これでもう馬車担ぎの出番は来ないだろう。めでたしめでたし。


今まで毎日投稿を続けて来ましたが執筆が追いつかずストックが無くなりそうです。

次話の怪談を挟んで十歳編に入りますが、そこからは隔日投稿に変更しようと思います。

大変申し訳ございませんが今後ともよろしくお願いいたします。

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