第21話 妻として
「ノルベルトが格好良すぎて、私、幸せだわ!」
「……お嬢様が幸せそうでなによりです」
呆れたようにノルベルトが返す。そんなノルベルトは今日、派手な正装に身を包んでいた。
しかも、頭上にはきらきらと輝く王冠。
「世界一格好いい、私の王子様……」
「王子、なんて年齢じゃないですよ、とっくに」
「何歳になっても私の王子様はノルベルトだけよ!」
ルアーナの言葉に曖昧に頷き、ノルベルトは鏡を見て頭をかいた。
はちゃめちゃに似合っているのに、どうやら本人は今の格好を気に入っていないらしい。
「うん、似合っているね、ノルベルト」
部屋に入ってきたミルコが、満足そうに呟く。
最近、彼の顔色はどんどんよくなっている。ノルベルトへ王位を譲ることが決まり、療養にあてる時間が増えているからだろう。
「……兄上まで」
「君は昔からそういう格好を避けてきただろう? 兄としては、弟の晴れ姿が見られて嬉しいよ」
にやにやと笑いながら、ミルコがノルベルトの肩に手を置く。
ミルコを前にすると、いつもとは違って弟感満載のノルベルトを見られて楽しい。
(それに、顔が少し似ているから、シンプルに眼福なのよね……!)
にやけた口元を抑えていると、メイドが部屋に入ってきた。
「ルアーナお嬢様。そろそろ、お嬢様も身支度のお時間です」
「えっ!? あ、そうだったわね! ごめんなさい、気づかなくて!」
慌ててノルベルトとミルコに挨拶をし、部屋から出る。式典については、ルアーナは離れた場所から見学するだけだが、その後のパーティーはルアーナのお披露目でもある。
(とびきり着飾って、幸せな姿をアメーリア伯爵家の人達に見せつけてやるんだから!)
◆
「お綺麗です、ルアーナお嬢様!」
身支度を終えたルアーナを見て、メイドがうっとりとした表情で両手を組んだ。
ルアーナが着用しているのは、ルアーナの美貌が際立つ純白のドレス。アクセントで使われている桃色のレースは、ルアーナの髪と同じ色。
胸元には光り輝く首飾り、耳には同じデザインの耳飾りを。
まるで、絵画から抜け出したかのような美少女が、鏡に映っていた。
「まあ……!」
(自分で言うのはなんだけど、超! 可愛いわ!)
こんな風に、パーティー用に着飾るのは初めてだ。鏡に映る自分に、つい興奮してしまう。
「きっとノルベルト様もお褒めになってくださいますよ」
「そうかしら……! そうよね、きっと!」
なにより今日は、アメーリア伯爵家の皆に見せつけるため、婚約者として相応しい振る舞いをするとノルベルトは言ってくれている。
(つまり、大多数の前で公然と、いちゃつきまくれるってことよね!)
絶対今日は、最高の一日になるに違いない。
◆
式典は室内ではなく、王都の中央広場で開催される。
新たなる王の誕生を高官達だけではなく、民衆に見せるための古くからの伝統だそうだ。
噴水の前に、ノルベルトが跪く。そして、ミルコが冠を脱ぎ、そっとノルベルトの頭に載せる。
たったそれだけ。
しかし、厳かな雰囲気が、これから始まるノルベルトの生活を物語っているような気がした。
(ノルベルトはもう、自由に、目立たずに生きるなんて無理なのよね)
きっと、大変なこともたくさんある……というか、大変なことの方が多いだろう。
本来、ノルベルトが好む生き方でもないはずだ。
だが、ノルベルトは覚悟を決めて、王になることを選んだ。
(だったら私は妻として、ノルベルトを支えてみせるわ!)
――と、ルアーナが決意した、約1時間後。
レーゲンボーク帝国から多くの客を招いたパーティーが、幕を開けたのである。




