第20話 パーティーの参加者
「――というわけで、今日はここまで!」
ルアーナがそう宣言すると、席を立ちあがった子供達が一斉にルアーナを取り囲んだ。
今日集まってくれたのは22名ほど。多くはないけれど、少なくもない人数だ。
「ありがとう、ルアーナおねえさん!」
「ねえ、最後に、ぼくの名前の書き方、教えてくれませんか?」
「わたしも! わたしにも教えてください、おねえさん!」
集まってきた子供達に笑顔で応じ、一人ひとりの要求に応えていく。余裕をもって部屋は抑えてあるから、時間に問題はない。
子供達に教育の機会を与える。その目的のもと、まずは文字の読み書きを教えることにした。
何の勉強をするにせよ、まずは文字を覚えることだ。そうすれば図書館の本も利用できるようになる。
(長い目で見れば、子供達の教育は絶対に大事よね。この子達が将来、国を支えてくれるんだもの)
国のためになにができるのか。まだ、ルアーナには分からないことだらけだ。
けれどこうやって、まずはできることから、行動に移していきたいと思う。
(そして、私の功績が認められたら、きっとノルベルトだって……!)
『お嬢様……いや、ルアーナなしでは、公私共に生きていくことはできない。ルアーナ、俺と永遠に一緒にいてくれ。世界一愛している』
(なんて、甘い言葉を囁いてくれるに違いないわ!)
愛するノルベルトとの幸せな未来のためにも、もっと頑張らなくては!
◆
「お嬢様、これを」
「……これは、名簿?」
「はい。今度のパーティーに参加する客達の名簿です」
受け取った名簿を、上から順に確認していく。
ルアーナの目線が固定されたのは、ちょうど真ん中あたりだった。
・フランチェスコ・アメーリア
・マルティーナ・アメーリア
・オルガ・アメーリア
「……お父様達が、くるのね」
「兄に確認をとったところ、実際の関係性がどうであれ、お嬢様の親戚に招待状を出さないわけにはいかない、とのことでした」
当然だ。パーティー当日、ルアーナは新国王の婚約者として発表されるのだから。
ルアーナの家族がいなければ、なにか事情があるのかと勘繰られてしまうに違いない。
(アメーリア伯爵家とは、正直もう縁を切ってしまいたい。だけど、不仲だということが知られても、現時点で私にメリットはないわ)
アメーリア伯爵家は、レーゲンボーク帝国でもそれなりに力を持つ伯爵家だ。
今後のことを考えても、繋がりを持っておいた方がいい。
「パーティーの際は、お嬢様を一人にしないようにします。……大丈夫ですか?」
「……大丈夫よ」
本当は、もうアメーリア伯爵家の人々の顔も見たくない。しかし、逃げるつもりは全くない。
「愛するノルベルトと結ばれて幸せだっていうところを、あの人達に見せつけてやるわ!」
「……それは少し、語弊がありますが」
ノルベルトは溜息を吐いて、ルアーナの手をぎゅっと握った。
「その作戦には、全力で協力させていただきます」
「……え?」
「当日は、お嬢様の婚約者として相応しい振る舞いをすることを約束しましょう」
目が合うと、ノルベルトは少し悪戯っぽく笑った。
口の端だけを上げるような、ちょっぴり茶目っ気があって、なにより色気のある笑顔。
「わっ、わわっ……!」
「お嬢様?」
「私の婚約者が、格好良すぎるっ!!」
再び溜息を吐くと、ノルベルトがルアーナの両肩に手を置いた。
「お嬢様。そのような反応は、婚約者としてはいささか過剰かと」
「へ?」
「当日はもっと、余裕のある振る舞いをしてください。……そのために、練習しておきましょうか」
「へっ!?」
ルアーナを真っ直ぐに見つめ、ノルベルトがにっこりと笑う。
反射的にきゃあっ! と歓声を上げたルアーナに、ノルベルトが真剣な顔で告げた。
「この距離にお慣れください、お嬢様」
「……ひゃ、ひゃい……」
なんという神展開だろう。
(顔も見たくなかったけど、あの人達がくることになってよかったわ!)
この機会に、とことんノルベルトの顔を見つめまくってやろう。
そう決めたルアーナだったが、五秒も経たぬうちに、ノルベルトの視線に負けて目を逸らしてしまった。
(とっ、ときめき過ぎて、心臓が持たない……っ!)




