Chapter 36 実行委員の仕事②
次の日の昼休み。僕は昨日ダウンロードしたPDFを葛城さんに見せた。
ダウンロードしたPDFには、書く用のものと書き方の見本となるものが一つにまとめられている。
「持ってきたんだね」
お弁当を包む布を器用に包みながら、葛城さんは言った。
「うん。親切に書き方まで書いてあるね」
「そっか。あとは印刷して書くだけだね」
「うん」
「じゃあ放課後また会いましょう」
「うん」
「お似合いだな、お二人とも」
皮肉っぽい口調で隣にいた九条は言った。
「へへん、うらやましいだろ」
自慢げに僕は言ってやった。
「俺の青葉を返せ!」
「そこまでうらやましかったら、九条がなれば良かったのに」
「ぐぅ……」
恨めしそうに僕をにらみつける九条をよそに、葛城さんは、
「じゃあ、これを印刷しに行きましょっか。コンビニへ。あ、でも、今からだと次の授業に間に合わないだろうから、放課後ね」
「わかった」
放課後葛城さんと会う約束をしたあと、僕はノートパソコンの電源を落とし、カバーに入れた。
放課後。掃除当番を終えた僕は、待っていた葛城さんのところへ向かった。
「お待たせ」
「じゃあ、行きましょう」
川沿いにある学校を出た僕と九条、葛城さんは小路を通り、車どおりの多い道路へ出る。
沈みゆく西日の眩しい光と昼間の熱さが、エアコンの効いた教室に慣れてしまった体にこたえる。
対して九条と葛城さんは、残暑なんてなんのそのといった顔で、汗を拭きながら雑談に興じている。こうして元気な同級生の姿を見ていると、いかに自分の身体が虚弱かよくわかる。
コンビニへと入った。お昼の余熱が残る外の何倍も涼しい中には、制服を着た帰り際の中高生たちが何を買うか選んでいる。
「じゃあ、印刷しようか」
「うん」
「やり方わかるかな?」
「やり方か──」
ぶっちゃけ言うと、全然わからない。何かあるときは基本家にあるプリンターを使ってやっているからだ。虚弱な上に社会性も皆無。この歳になるまで、何もして来なかった自分が恥ずかしくなってくる。
「まず、脇にある縦長の穴がある機械に小銭入れて」
「わかった」
そう言って僕は、ポケットから財布を取り出した。
財布の中を見てみると、入っていたのは10円玉一つ。
行くときには500円玉が入っていたのだが、学校へ行くとき駅でSuicaのチャージに使ったので、もうない。これでも足りるだろうか?
薄っぺらい財布から10円玉を取り出した僕は、機械に入れて、作業を始めた。
「最初にプリントをタッチして」
「わかった」
葛城さんの指示のもと、僕はコピー機の操作をやっていく。
彼女の指示はわかりやすく的確で、すぐに印刷へと漕ぎつけることができた。
だが、ここで問題が起きた。印刷代が20円足りなかった。
「どうしよう。20円足りないんだけど」
たった20円ではあるが、貸してくれ、と言うのも何だかおこがましい。
「おら、やるよ」
九条は財布から20円を取り出し、僕に渡した。
「その代わり、明日アイス奢ってくれよ」
そう言って九条から借りた10円を機械に入れようとしたとき、肩を強く叩かれた。
振り向くと、そこには内田とその取り巻き二人がいた。
「よっ、誠。久しぶり」




