Chapter 35 実行委員の仕事①
9月に入った。月が変わっても暑いことには変わりはないが。
その初めの週に、文化祭実行委員の集まりがあった。
集まりの内容は、各クラスの出し物の確認、食品提供やステージ使用に必要な許可の話だった。僕たちのクラスのように食品提供をする場合、保健所の許可が必要になるので、各自申請してほしいとのことだった。
この日の夕方、僕は葛城さんと一緒に帰っていた。
「はぁ、めんどくさい」
僕は大きなため息をついた。
人生で初めてやる実行委員。しかも「食品提供」という厄介な仕事。
何事もなく終わればそれでいい。だが、食中毒を出してしまえば、学校にも責任がかかるし、僕も辞めなければいけない。去年まで学校行ってなかった僕が、何でこんな重責を担わなければいけないんだ。
ため息どころか、考えるだけでも涙が出てきそうだ。
「そこまで考え込まなくたっていいって、東条くん」
慰める葛城さん。そのときの笑顔は、かなり落胆している僕にとっては、目がつぶれてしまいそうなほどに眩しかった。
「葛城さん、言っておくけどこっちは初めてなんだよ。それに中学の1年半は学校行ってないんだよ。そんな僕にできると思う?」
「もう、大げさなんだから。あのとき言ったじゃない。私がいるから、って」
余裕そうな笑顔で、背中を押すように葛城さんは言った。
「なんでそんなに平然としてられるの?」
「中学のときやったことあるから。それだけ」
「なるほど。やっぱりそうだったんだ」
僕は先週マックで聞いた、
「あ、何かわからないことがあったら聞いてね。私も実行委員に選ばれてるから」
という葛城さんの言葉を思い出した。
どうりで実行委員に選ばれていても、冷静でいられるわけだ。経験があるかないかでは、だいぶ気の持ちようが違ってくるものなんだな。
「それはいいとして、今日は宿題として、北区のホームページを見て書類のPDFをダウンロードすること。そしてそれを持ってきて私に見せる。いい?」
「うん」
僕はうなずいた。
帰ったあと、すぐにPCを起動し、届け出に必要なPDFデータをダウンロードした。




