大団円Ⅱ
「烏舟の再生は?」
【予定より60‰…遅れています】
「構わぬ。それで出る!」
【しかし…鏡の損傷が激しく、射程が僅か10km…これでは、島の落下に巻き込まれ危険です!】
カンペに書くより直接喋れ。
途方もない緊急事態ぽいぞ!
「私が改變で島を動かす!目視捕捉可能な距離まで接近する!」
「あ、姉様」
「ちょっと行って来る!」
「行くって…私も!」
「これは己が招いた禍だ。自分で始末をつける!それに、もはやお前には、そんな力は残ってはいまい。大人しくそこで、そいつとイチャでもリバでもしておれ!」
散華の足元に微塵の鎖が落ちる。
「リバでなくてラブか」
「姉様…鎖!?」
「祭だ」
散華は、顎に貼った絆創膏を引きちぎり。海に投げ捨てた。直ぐ様、海中から浮上した八咫烏に乗り込む。
「縁日や、花火には間に合わぬが、には直会には戻る!酒と何かアテ…簡単なものでいい。それから…」
この犯罪者は何を言っている。
堂々と実家の敷地を跨ぐ気か。
それが散華を見た最後だった。
「寡婦たちを頼む!」
それだけを言い残して。
暮れ始めた空に向かい。
八咫烏は飛び立った。
残された寡婦たちは空を見上げて。
一人で向かう散華に手を降り続け。
彼女の名前を口々に呼び。
その姿が空から消えても。
その場から離れなかった。
投げた寡婦たちの仮面。
夕暮れの大空に舞った。
埠頭では声を取り戻した。
時田さんの奥さんが歌う。
オペラが流れていた。
「ベッリ-ニのノルマです」
薫さんが教えてくれた。
「夕暮れに似合う」
「綺麗な曲ですね」
薫さんは目を閉じて頷いた。
「マリアカラスの十八番です」
今現在も、この星に島クラスの隕石が墜ちたという報告も記録もない。
その証拠に、今日も僕たちは、こうして平穏無事な日常を送っている。
寡婦帰島という島も、散華も、八咫烏も、この世界から忽然と消えた。
散華の消息は現在も不明のままだ。
「宇宙海賊にでもなったのかな」
「あれだけ、派手な立ち回りを演じた後だから、決まりが悪くて、隠れているんだと思う。もし、姉様が死ぬ理由があるなら、ぜひともこの私に教えて欲しいものだ!」
円乗さんは僕に言う。
「あるいは…あの黄泉渡の舟に乗り、今も探しているのかも知れない」
「探している?」
「姉様の連れ合いは、かつては飛行機乗りであったらしい」
しかし俺は思うのだ。島ひとつ、成層圏まで浮上させる力があるのならば。格闘なんてまるで意味がない。
少年ジャンプじゃないんだから。
そんな疑問を彼女にぶつけてみた。
「姉様は優しいのだ」
そんな返事が返って来た。
寡婦たちの姿を、最近街でよく見掛ける。仮面は祭の時だけらしい。
最初は喪服を怖がる人も大勢いた。
彼女達の服の色も、いつかは街の色に染まり。誰も気にしなくなるだろう。喪服を着なくても喪に服せる、
今は亡き人も思い人も。
いつも心にいてくれる。
この世界は、出会いもあれば、別れもある。それを繰り返す。そんな世の中こそが。僕らが生きている。
普通の世界なんだと僕は思う。
祭は終わった。
けれど僕と円乗羽女の物語。
まだ終わってはいなかった




