祭の終わりに
水に揺蕩うその狭間で。
美しい言の葉を聞いた。
これは祝詞というやつか。
神社はおめでたいこと専門。
死者の御弔いとかやらない、はず。
美世に故郷の山河あり
あまねく天津星ぼし 国造りの神よ
この国は夫婦となりし男と女。
そして寡婦たち…
独り身の心優しき男子が1人
我に後顧の憂いなし
私は杏飴が食べたいのだ
「え」
「この日起きた事、そのすべては祭の上の催しであった!」
人々は後に、祭主様より、こんな言葉を聞く事になる。まあ、神輿を背負っているのが「国の民の皆様」とかあえて言わないところが。寧ろ彼女らしいな…と僕は思う。
ところで海の藻屑と化した僕。
あの世に行く間。
ほんの束の間。短い夢を見ていた。
夢の中では、僕のマンションに初めて訪れた時の円乗さんが現れて。
「ワッショイ!」「ワッショイ!」
そう言って僕を励ましていた。
あれから僕も神社について。
少しは勉強してみたんだ。
ワッショイ!ワッショイ!
思えば不思議な言葉だ。
ワッショイとは元々は「和を背負う」そんな意味があるらしい。
円乗さんは散華に勝てただろうか。脳みそまで海水に浸かりながら、
僕は思った。
彼女なら…きっと大丈夫だ。
円乗さん!ワッショイ!
僕も円乗さんと一緒にいて。
彼女の背負った荷物すべて。
この身に引き受けられる。
そんな男だったらよかった。
そんな自分になりたかった。
水の中で薄目が開く。
目の前に水中カメラを担いだ寡婦。
防水したカンペを見せる。
【構図が命】
うるせえよ。早く助けろ…
敵でも南極条約とか…あるだろ。
水の天井を破り。
誰かが海に飛び込む。
目の前に竜宮城の乙姫様が現れて。僕の唇にキスをしたんだ。
それは末期の夢だったのか…
記憶は肝心なところで途絶えた。




