白鷺舞闘会Ⅳ
「僕が死人に見える?」
「神の鳳輦である鳳凰に触れ、生きている者がいるとは思えないが」
「見ての通り」
僕は生きている。
「ならば君は」
なんでため息つくのさ。
素直に喜んでくれよ。
抱きついてくれても。
「鳳凰に選ばれたのであろう。もはや…ついて来るなとは言わない!」
「僕は何をしたらいい?」
「振り落とされぬように」
「しっかり掴まっていろ」
捕まえていたいのは君だ。
そんな思いは風に浚われ、
鳳凰は地上に向かって急降下する。目も開けていられない加速と重圧。
茅の輪の中心めがけ飛び込んだ。
話したかったことは沢山。
全部話せたわけじゃない。
ねえ円乗さん。
鳳凰は僕が此処にいることを認めた。なら君はどうなんだろう。
僕はこれからもこうして。
君の側にいていいんだよね。
そんな君への問いかけ。
僕が心で呟く言葉すら。
眩い閃光の中に消えた。
『我往きて降しすべして自ら…「神軍を率いて」その箇所が、一文削除されておりましたよ、宮様。私も、今からそれをお伝えに参ります!』
薫は放送マイクのスイッチを切り、縁起書を丁寧に懐に仕舞った。
そして懐から取り出した端末。
あの少年に頼んだら快く貰えた。
一葉の写真。
「実は円乗さんも映ってる写真」
こっそりフォルダに保管してた。
「内緒だよ」
なかなかに心根のよい方です。
仲間の禰宜たちと夏の公園。
その中央で微笑むのは宮様。
隣で微笑む優しげな少年。
薫は加工ペンでその顔に✖️
宮様の写真を引き伸ばした。
メイド様姿のお写真。
今度は貰えるかしら。
「私如きの言葉より」
この世で最も気高く美しい。
その清らな御影に唇が触れ。
その御名を唇が辿る。
やがて薫は立ち上がる。
その姿は白鷺に変わる。
新たな祭主となった円乗花女より。
神御衣祭が執り行われた際賜り。
和妙と荒妙により織り成された。
それは神依であり。
戦の装束でもあり。
けして袖を通すことなき。
それは白無垢の花嫁衣装。
化粧なき美しい面立ち。
その素顔を仮面で覆い。
神軍の一兵士となって。
程なく其処から消えた。
空と大地と海を埋め尽くす。鬩ぎ合う白と黒。まるでそれは対極。
対極の紋様を見るようであった。
茅の輪を潜り抜ければ眩い光。
光の渦に呑まれ。
思わず目が眩む。
漸く目を開けた時。
僕たちが見た光景。
そこは大海原。
敵陣の真っ只中。
空と海を埋め尽くす。
黒衣の寡婦の軍勢。
散華の鳳輦は八咫烏。
僕がそれら全てを視覚として。
漸く認識出来たのは数秒後だ。
その前に激しい衝撃があった。
円乗羽女の鳳凰。
散華の八咫烏の目前に出現し。
怯む事なく体躯を激突させた。
衝撃で鳳凰の首は消し飛び。
八咫烏の左翼は半壊した。
しかしそれよりも疾く。
円乗羽女は散華の鼻先にまで到達。
手にした榊を降り下ろしていた。
「我、光速を越えて神速に至らず」
「なかなかに謙虚」
「志が高いな」
羽女の放った一閃。
難なく受けとめた散華。
刃の下で薄笑いを浮かべた




