↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/42

散花


「変わった名前ですね」


「華と散るために、生きている訳ではない…散る華はあっても宿命、散る事の出来ぬ華のためにこそ…」


「私は今を生きている」


「それが、この名前に宿された命、業であり、そして意味であると、私は考えているのだよ」


「少年」


やはり円乗羽女に彼女は似ている。


ただ真っ直ぐで曇りない。直向きな眼差しが、とてもよく似ている。


たとえ、この世界が僕の事を愛してくれなくても。円乗羽女。


彼女の瞳に映る世界。

僕はとても好きだ。


彼女がこの世界を愛しているのが、僕にも分かるから。


だから僕はこの世界に留まりたい。


心からそう願う。


円乗さんによく似た女。


彼女にあるもの。

醸し出すオーラ。


それはまるで真逆なもの。

悲しみと憎しみの宿る瞳。


彼女にあって円乗羽女にないもの、それはこの世界への深く暗い憎悪。


「この世界に弾き出されてから」


指折り数えるように女は呟いた。


「私もずっと1人だよ少年」


「愛人、知人、友人…君の好きに呼んでくれて構わないよ!」


おそらく僕が初めて会った時。

化粧で円乗さんの姿に似せた。


よく見れば、瓜二つという訳ではない。しかし陰陽五行の対極のように対。


「あんたの目を見てると、私は切なくなっちまうのさ。あんたは…私と同じで、この世界を憎んでいる」


「さあ、一緒においで少年。あんたの居場所は此処でも、まして賽の河原なんてとこでもない!」


甘い毒が体を痺れさせる。

言葉が染みるように響く。

真実を含んでいるせいか。


「あんた妹より私に似て…」


優し気に、僕に向かって差し伸べられる。たおやかな指先。


しかし瞬時にその表情が一変した。すぐにその場から飛び退く。


目の前を矢のように通り過ぎた。

玉串が路上に突き刺さる。


榊に巻かれた紙垂が風に揺れる。

それを僕は茫然と眺めていた。


「その人に触れないで!」


声の主は円乗羽女だった。


「大姉様」


彼女は喪服の女にそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。