相棒ミルム
氷像と化したルードを見ながら、ジグは酒を呷る。
「はぁ、さてどうしたもんかね、こいつは。」
自分で撒いた種とは言え面倒な事になったとジグはため息をついた。
本当は我慢するつもりではあったのだがあまりにルードに腹が立ったため堪えきれなかったのだ。
「堪え性ないよね、ジグって。」
「全くその通りだ、ってうおっ!」
いつの間にかジグの隣には小柄な美少女が立っていた。
青髪のショートヘアがよく似合っている。
「ミルムか、気配絶って近づくなよ。趣味悪いぞ。」
「癖だからしょうがない。で、どうすんのこれ。」
「どっか山にでも埋めてくるわ。」
「今から面倒くさくない?それ。」
「そうだけどよ、なんかいい方法あんのかよ?」
「ある。」
そう言ってミルムは懐から一本のナイフを取り出す。
「チェンジ、ビッグハンマー。」
ミルムがそう唱えるとナイフはたちまち巨大なハンマーに変化する。
「おおー、相変わらずすげえな、このマジックウェポン。」
「えへん。」
「で、どーすんだ?…おいまさか。」
ミルムはその小柄な体格とほぼ同等のサイズのハンマーを軽々と持ち上げ、ルードの氷像に振り降ろした。
バキィ!!
「うわぁ…。」
若干引き気味のジグを尻目に、何度もミルムはハンマーを叩きつけ瞬く間にルードの氷像は粉々になった。
「こんなもんかな。チェンジ、ナイフ。」
ミルムはハンマーをナイフに戻して懐に仕舞う。
「ジグ、風魔法ウィンドストーム。」
「…そういう事か、はいよ。」
そう言ってジグは粉々になった氷の破片に手をかざす。
ブァッ!
すると小規模ながら強力な風が竜巻の如く舞い上がり氷の破片が宙に舞い上がり、キラキラと光を放つ。
「綺麗だねジグ。」
「…お前、やっぱ趣味悪いわ。」
「ジグ。」
「あん?」
ジグがそう言った瞬間ミルムが目にも止まらない素早い動きでジグの肩に乗り肩車の形になる。
「お前何やって…!」
そしてミルムはギリギリと両足でジグの首を締め付ける。
「私はお前じゃない。」
「ぐぉ、離せ!」
「ちゃんとごめんなさいって言って。あと手伝ったんだからありがとうも。」
「お、お前なぁ!別に大して手伝っちゃ…あっ。」
ジグが二つの失言に気づいた時には締め付けがさらに強くなっていた。
「ぐぁっ!分かったよ!お前って言ってごめんなさい!それと手伝ってくれてありがとう!」
「よし。」
ミルムは満足気に頷いてジグを解放して地面に降りる。
「ゲホゲホっ!ったくよぉ。」
「ところでジグあの護衛達はどうするの?まだ死んでないんでしょ?」
「ああ、まあな。良く分かったな。」
首をさすりながらジグは護衛達を覆っていた氷に手をかざすと氷はあっという間に溶けていき護衛達は地面に倒れ込む。
皆気を失っているが息はあるようだ。
「なんだかんだで優しいから、ジグは。」
「けっ。言ってろ。」
ジグは悪態をつきながら酒瓶を取り出し残り全部を一気に呷った。
「お酒なくなっちゃったね、どっか飲みに行く?」
「おま…じゃなかった、余裕だなミルム。」
「何が?」
「何がって分かってんだろ、明日リーナと…。」
「関係ない。」
ミルムはジグの言葉を遮るように言い放った。
「誰が何と言おうと私はジグの相棒だから。誰の許可もいらない。ジグの許可も。」
「俺の許可はいるだろ…。」
「明日は一応挨拶に行くだけだから。それより早く行かなきゃ店閉まっちゃう。」
ミルムはジグの手を取って強引に引っ張って行きながら心で誓いを立てる。
(あの日ジグに救われてから、ジグの相棒になるためひたすら鍛え続けてきた。今度は私が一生かけてジグを救う。)
「痛ぇーよ、引っ張んなって!そもそもまだ飲みに行くとは決めてねーから!」
ミルムは改めて心で誓いを立てて文句を言うジグは無視して酒場まで引っ張っていくのだった。




