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第82話 叙爵

 ルノザールから王都までは馬車で移動すると4日かかるが、領主館の馬車も板バネが装備されたのでだいぶ快適になった。


「これもアル君のおかげだよね」

「うん、アルのおかげ」

「しっかしさ、アルってあっと言う間に滅茶苦茶凄いもん考えて、この国にすんげー貢献してるよな」


(あっと言う間に考える訳じゃないんだけどさ)


「アルは勲章だけじゃ釣り合わない」

「釣り合わないって、どうすれば釣り合うのよ?」

「おほん、実はそのような話も王宮の中では出ていてね、アルフレッド君への報酬を検討しているようなのだ」


 乗っている馬車は6人乗りの馬車だ。領主様とギルド長、それに月盟の絆の4人が乗っている。


(領主様から王宮で報酬を検討しているっていう事を聞いたけど、お金は沢山持っているしもう要らないぞ?)



 4日目、王都のルノザール伯爵邸に着いたのは6の鐘に近かったが、先触れが届いていたため陛下の予定もしっかり調整されて? いたのだろう。

 着いたらすぐに王宮へ来るようにとの伝言も届いていた。


「陛下の“新しい物好き”の病気が再発していそうだな」

「普通は明日になるんだがな」


 領主様とギルド長が二人そろって苦笑いしている。


「仕方ないな、このまま真っ直ぐ向かおうか」

「もう少しの辛抱だ、みんな頑張ってくれ」


 ルノザール伯爵邸に届くや否や、俺たちはそのまま馬車を降りずに王宮に向かった。


◇◆◇


「ここに! ここに設置してみてくれ!」

「陛下、ここはダメでございます。何かあった場合、防衛ができません」

「試すだけだから、試した後にはちゃんと部屋を作るから」

「左様でございますか。それならば……」


 宰相さん、ご苦労様です。いつも陛下に振り回されているのですね。


「では、ここに設置させましょう。少しお待ちください」


 俺は、魔道トートバッグから折りたたんだ状態の魔道転移ドアを取り出して、設置に取り掛かった。


「ここからは、ルノザール領主館、ルナの町のギルド長室、私たちの宿泊所、そしてルナ迷宮の60階層にあるダンジョンコアの部屋に繋げられます。ここの数字のボタンで4つの場所を選ぶことができますが、どこに飛ぶように設定しましょうか?」

「それならば! 是非ともダンジョンコアの部屋に行きたいぞ!」

「陛下! それは危険でございます! もしも魔物がいれば一大事でございます!」


 宰相さんは大慌てだ。


「コールリッジ公爵様、ダンジョンコアの部屋には私も行きましたが魔物が入ってくることはありません。念のために先にアルフレッド君たちに行って来てもらい、危険がないか確認してもらえばよろしいかと」

「ルノザール卿がそうおっしゃられるのであれば……」

「では、そのように頼む」

「承知しました」


 俺はドアの設置を終えて、暗証番号の入力に移った。コア部屋の暗証番号は……


「これでルナ迷宮のダンジョンコアの部屋と繋がりました。一旦私たち4人が入り向こう側を確認してきますので少しお待ちください。じゃあジムから順番に行こうか」

「入ります!」

「行きます!」

「私も」

「では行ってきます」

「陛下!」


「入る前に『陛下』って聞こえたけど、気のせいかな。って、何やってんですか陛下!」

「こんな面白そうなもの、黙って待ってられるものかね」

「それで宰相さんの抑止を振り切って入って来たんですね」

「ああ、おーーー、これがダンジョンコアか! 素晴らしい!」


 宰相さんがドアの前でおろおろしている姿と、領主様とギルド長が揃ってこめかみに指を当てて俯いている姿が目に浮かびそうだ。


「ほうー、壁はこのように薄っすらと光っているのか」


 陛下は壁に手をペタペタと当てながら、移動している。そっちはボス部屋に続く通路ですよー。


「陛下、そちらに行けばヒュドラがいますよ」

「なにっ! この先にいるのか」

「ちょっと見てみますか?」

「ヒュドラか! 見てみたいぞ!」


 やっぱり陛下は乗ってくる。期待を裏切らない人だ。


「お、おい大丈夫かアル」

「最悪はまた倒せばいいだけだから。陛下、向こうには気付かれない様にゆっくり移動して、こっそりと見てくださいね。くれぐれもこの通路からは出ないように。石にされますからね」

「そ、そうか。……わかった」


「ミラ、アクアを頼む」

「うん、分かった」


 万一の事を考えて陛下が石化しないようにと、ミラにアクアセレストの召喚をお願いする。

 このダンジョンコアの部屋でも何とか召喚できるだろう。


「透明なる波紋を、その身に宿す水の精霊アクアよ。我が呼び声に応じ、この地に蘇れ。サモンサーヴァント!」


 紫色の魔法陣によって、水の精霊獣アクアセレストが姿を現した。


「おお、精霊獣か!」

「はい、この精霊獣がいれば、陛下がもし石にされても、治すことが出来ます」

「ハハハ、それは有難い」


(なんか、あんまり有難そうにしていないが、まあいいか)


「ここからは静かに、ゆっくり移動してください」

「分かった」


 ヒュドラよりレベルが高いことが石化に勝つ要素なのだとしたら、もしヒュドラよりかなりレベルが低かったらどうだろう。近くに寄っただけで石化してしまう事は無いのだろうか?


(やばい、そんな事を考えていたらちょっとドキドキしてきた。陛下のステータスってどんななんだろう)


―――― ステータスオープン ――――


――――――――――――――――――――

 名前:サミュエル・ブラッドフォード・

    グランデール

 年齢:50歳

 性別:男

 経験値:44824

 レベル:22

 冒険者ランク D

 体力:889/894

 魔力:1335/1335

――――――――――――――――――――


 確認すると思っていたより経験値が高い。それに冒険者ランクがDランクだとは。


(若いころに冒険者やってたのかな?)


 ともあれ、レベルが低すぎて石化してしまったってことは……無さそうだ。無いと思いたい。



 陛下はボス部屋からダンジョンコア部屋までの細い通路にこっそり隠れ、へっぴり腰であのうねうねしたヒュドラを鑑賞した後、スッキリと満足そうな顔をして王宮に戻られた。


「陛下! 心配しましたぞ! お怪我はありませんか?」

「そう心配するな宰相、ダンジョンコアはとても素晴らしかったぞ!」

「さ、左様でございますか……」


 さすがにヒュドラを見た事は話されなかった。宰相殿が卒倒するからだろうな。



 1週間後。再度王宮に呼ばれた俺には、謁見の間で国王陛下より叙爵が言い渡された。


 「魔道大剣の開発、魔道ロッドの開発、魔道転移ドアの開発、そしてルナ迷宮の攻略によりダンジョンコア部屋への魔道移転ドアの設置など、魔道具師アルフレッドに於いてはこの国に対して多大な功績をあげておる。故に、ここに騎士爵の称号を授けることとする」

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