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第75話 召喚魔法

「それで、お前たちは現在どのくらいまでの階層が攻略が出来ているんだ?」

「これまではパーティランクがBランクだったので、40階層までで止まっています」


 そう、パーティランクがAランクになった時に、リリアンさんから不思議がられたから魔道ロッドの届け出をすることになったのだった。


「どうせ、それらの魔道武器でサクサクと行けてるんだろうが、40階層から下は魔法を使って攻撃する魔物が増える。ちょっとした判断ミスが全滅に繋がることもよくある話だ。無茶はせず、少しずつ経験値を積み重ねていって安全にこのルナ迷宮を攻略してくれ」

「「「はい、わかりました」」」

「わかった」


 俺たちはリリアンさんに40階層のボス部屋を攻略したのち、41階層以降へと進んでいく考えを話した。


「もう、私は何があっても驚きませんから。でも、ほんっとうに命を大事にしてくださいね」

「分かってますよ。パーティを組んだ当初から、“いのち大事に”が月盟の絆のモットーなんです」

「もう、なんかアルフレッドさんには、いつもはぐらかされてる様に感じます」


 リリアンさんは時々忘れ物をするけど、いつもは堅実で頼りになるお姉さんだ。ギルドカードの更新を俺に伝え忘れていたのは、今となっては微笑ましい出来事だ。


「ねえ、アル君ってリリアンさんと仲がいいよね。アル君って年上が好きなの? ねえ、年上が好きなの? ってリリアンさん既婚者なのよ?」

「何言ってんの? そんな訳ないじゃないよ」


(やべぇ、ビックリして変な言葉になってしまった。ここは正直に弁解をしておかないとまずかも知れない。というか、前にもこの感じ……デジャブなのか?)


「リリアンさんは、俺が13歳で冒険者になった時色々お世話になったんだけど、その当時から魔物討伐隊やスタンピードやらの時も面倒見てくれててね、多分俺は手のかかる小さな子供の様に思われてるんじゃないか?」

「ふーん」


(あれ、エミーの機嫌が治らないぞ。俺、何か変なこと言ったか?)


「エミー、リリアンさんは大丈夫。そんな匂いは感じない」

「あら、そうなの?」

「うん」


 ミラの一言を聞いて、機嫌が直ったエミーさん。いったい何の匂いがするっていうのか?

 まあ、機嫌直ったからいいか。


◇◆◇


「召喚魔法?」

「そう、召喚魔法」


 ミラが召喚魔法をやってみたいと言ってきた。


「出来るようになったのか?」

「先日、王都に行って来た時にガイウス先生のところ行って、色々教わってきた」

「ミラがね、ちゃんと覚える事が出来るか心配だから、みんなには内緒にして欲しいって言ってね。だから黙ってたんだ」


「それで、召喚って出来るようになったのかい?」

「ガイウス先生が、冒険者ランクがBランクになったら結構いい聖獣が召喚できるだろうって。でもね、初めての時は制御できない可能性も考えて、パーティが揃った時、それも迷宮の中で召喚を試しなさいって」

「だから今やってみたい」


 なるほど、制御できなくなる場合も想定しなければならないのか。


「召喚って、精霊獣の召喚なんだよね?」


 この世界は、魔法が発生するのには精霊が深くかかわっていると考えられている。詠唱に『精霊』という言葉が多く含まれているのもその為だ。

 そして召喚魔法で召喚できる召喚獣も『精霊獣』と言われている。


「うん、イグニスを召喚したい」


 彼女が言う“イグニス”とは、“イグニスキッヅィー”という炎の精霊だ。言いにくいからイグニスと言っているのだろう。


 魔道ロッドを構えて、ミラが召喚魔法を唱え始める。


「燃え盛る炎、その身に纏いしイグニスよ。我が呼び声に応じ、この地に蘇れ。サモンサーヴァント!」


 すると、3mほど先に大きな紫色の魔法陣が出現した。俺は慌てて録画機能をオンにする。

 

(おっと、記録し損ねるところだった)


 魔法陣から発する光が次第に強くなり、上方に向かって伸びて行く。色も眩いばかりの白色に変化した後、次第に魔法陣の方に吸収されてゆく。

光が収まると、そこには召喚されて鎮座した精霊獣が姿を現していた。


「イグニス!」

「ミャーーー」


 イグニスは炎をまとった黒猫といった感じだろうか。ミラの呼びかけに子猫のような声で鳴いて、足元にすり寄ってい来ている。


「召喚魔法、成功おめでとう」

「「おめでとう」」

「やったね」


 召喚魔法でお気に入りのイグニスを召喚したミラは、とても嬉しそうだった。


 それから俺たちは40階層のボス部屋を攻略し、41階層より下の“深層部”と言われる階層を攻略中である。

 イグニスは火の精霊獣と言われ、召喚者の火魔法の攻撃力が上がると言われている。確かにミラの攻撃力が上がったように感じるが、魔道ロッドの効果の方が大きいので良く分からない。

 効果を狙ったわけではなくペットの様な感覚なのだろう。ミラはイグニスを肩に乗せたままだ。


(重くないのかな? っていうか、その炎熱くないのか?)


「重いよー」

「そろそろ一旦戻るか」


 重いよーと言ったのは、肩にイグニスを乗せたミラではなくエミーだった。


 深層部になってくると、魔物が強くなるにつれて魔石も大きいものになっていく。

 俺とジムは魔石入れのバッグを持っているが、既にそれらは満杯になったためエミーたちにも少々持たせている。


 この世界には俺が知る限り、異世界の物語の様に冒険者のバッグとか空間魔法持ちとか、マジックバッグとかいうものは無いのである。


「何とかならないかな」


 マジックバッグのような物が無いと、この先きついかも。俺は何とかならないかと考えながら帰路についた。



 ある日の夜、これまでの魔道具開発の履歴を纏めておこうと、MR装置のログファイルを見ていると、興味深いログを見つけた。見つけてしまったのだ。


 このMR装置が、地球からこの世界にどのようにして飛んできたのか、それが分かる軌跡情報が記録されていたのである。

 この情報によると、この装置は一旦亜空間らしい特別な空間を介してこの世界にやってきたことが分かった。

 そして、このログに含まれる情報は、亜空間へアクセスして突入するプロセスが情報として記録されている。

 更に、この前にミラが覚えたサモンサーベント。これは亜空間からこの世界に精霊獣を呼び出す魔法だ。


「これって、マジックバッグに応用できるんじゃないか?」


 俺は次の日が休みになる土の日の夜に、徹夜をしてログと召喚魔法の魔法陣を解析した。その結果、マジックバッグならぬ“魔道トートバッグ”が夜明け前に出来たのだった。


「あー、眠い。もう寝よう」


◇◆◇


「おーい、アル。まだ寝てんのか? 俺の方は鍛錬の終わったぞー」


 朝日はだいぶ上がっているが、もう少し寝なければ体に悪い。


「昨日根詰めて朝方まで解析してたから、もう少し寝かせてくれー」

「解析って、何をしていたのかは分らんが、睡眠は十分とらんといかんぞ。エミーたちにはうまく言っとくから、起きたらちゃんと鍛錬もやるんだぞ」

「はいはい」

「それと、今日はエミーたちが買い物に行くっていうから、俺も付いていくな。これちょうどいいから借りてくぞ」

「はいはい」


 とても眠かったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 強い武器だけで上がってきたことを指摘する人がいてよかった。中身が伴わない強さほど危険なものはない。
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