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第61話 パーティ登録と宿屋

 一気にBランクになった事には驚いたが、エミーとミラの意見を聞いて今後の行動を決めなければならない。


「エミーとミラは、今後やりたいことはある?」

「私はもっと経験値を積んで、魔術の腕前を上げたいかな」

「私は召喚をやりたい」


(召喚ってどうやったらできるんだろう?)


「エミーの経験値を積む方法は分かるけど、召喚ってどうしたら出来るようになるもんなの?」

「わからない。でも前にガイウス先生が言ってた。経験値と集中力そしてエネルギーのやり取り」


 どうしてもミラの説明では分かりにくいが、要は経験値は必要って事だな。

 あとは集中力。エネルギーの流れを感じる事に関してはミラは得意そうだから、先ずは二人とも経験値を積むのが先かな。


「二人の希望を聞いたら、まずは経験値を積むことが必要だと思う。それで、経験値を積むためにパーティを組んで経験値が稼げそうな依頼を受けるっていうのはどうかな?」

「アル君がそう思うなら、それでいいよ」

「私もそれでいい」

「じゃあ、パーティ名を決めないとな」


 魔物討伐時の経験値を分配するにはパーティ登録をする必要があり、パーティにはパーティ名が必須だ。魔道学園の修業旅行でパーティを組んだが、この時は“魔道学園1班”から“魔道学園4班”という素っ気ない名前だった。

 別にそのような名前でも可能ではあるが、他人に聞かれたときにかっこいいパーティ名であれば気分がいいものだ。

 ルナの町のリアナさんが所属するパーティは“暁星集団”だったかな。


「えーっと、エミーは何か考えているパーティ名ってある?」

「まだ考えてなかったけど、私たちの特徴が出せればいいかな」

「ミラは?」

「最強魔王討伐旅団」

「あー、却下」

「フフフ」


 冗談だったようだ。


「俺たち3人は、ルナの町出身だろう? そして、物心つく前から孤児院で一緒だったから気心も知れている。俺が言うのもなんだが、この先もずっと仲間でいたいと思ってるんだ。だから“月盟の絆”ってどうかな?」

「ルナの町だから“月”なんだね。うん、いいと思うよ」

「私もそれでいい」


 わりとあっさり決まって拍子抜けしたが、この名前でギルドに登録することにした。



「アメリアさん、俺たちこの3人でパーティを組みたいと思うんですが、お願いできますか?」

「はいはーい、パーティ登録ですね。ではこのパーティ登録申込書に必要事項を記入してください」


 渡された申込書も、簡単な記入のみだ。パーティ名、人数と構成員の名前、それにマスターの名前を記入するのみだった。パーティのランクはギルドの方で記入するようになっている。何か審査があるのかな?


「記入しました」

「それでは、3名の冒険者ギルドカードをこちらのプレートの上に置いてください」


 フィリルの町でも同じような事をしたが、少しプレートの形が違うようだ。

 俺たちは自分のカードを取り出して、プレートの上に置いた。


「それでは登録を開始しますねー」


 アメリアさんが操作をすると、3人がつながった感覚を覚える。


「はい、登録終わりでーす。月盟の絆さんのパーティランクは“Dランク”となりました」

「えっと、ランクはどうやって決まるんですか?」

「それはですねー、3人さんの現在の経験値とぉ、リーダーの方のランク、それから構成人数とか前衛職と後衛職の構成、魔術師のパーティ全体の適性などを総合的に魔道具が判断して決まるんですねぇー」


 魔道具によっていろいろな条件を加味して決まるのだそうだが、この中にランクを決めるためのプログラムが組み込んであるって感じか? けっこう複雑な魔法陣が中に入っていそうだ。


「分かりました、凄い魔道具ですね」

「そうですねー。私は良く分かりませんが、王国にはまだ6台しか無い貴重な魔道具ななんだそうですよ」

「分かりました、有難うございました。それで、早速依頼を受けてみたいのですが、パーティランクがDランクだから、依頼もDランクの依頼まで受けられるって事でいいですか?」

「はい、その通りです。依頼は“単独依頼”と“パーティ依頼”がありますので、パーティ依頼の場合はパーティランクで判断されますねぇー」


 パーティ依頼の場合はパーティランク以下の依頼が受託可能だということだ。


「掲示板に依頼カードが掲示されていますので、受ける場合は自分たちに合った依頼カードを外してこちらの受付までお持ちくださいねー」

「分かりました」



 早速俺たちは、掲示板の前まで移動する。


「何かいいものが有る?」

「うーん、魔物の討伐依頼と調査依頼、あとは護衛かな」


 この国は比較的治安がいいので盗賊はいないだろうが、魔物を対象にした護衛依頼が普通に有る。ちなみに護衛依頼のランクは経路によって違うようだ。


「先ずは、魔物の討伐依頼あたりはどうかな」

「そうだねー」


 魔物の討伐依頼は、地方に出没する魔物を討伐して欲しいという農村部からの依頼が多い。

 農村からの依頼は領主からの補助が受けられる場合が多く、報酬料があまり払えなくても被害が大きくなる前に依頼を出すことが可能になっている。


「これなんか、どうかな?」

「なになに、ワイルドボアの駆除。農作物を食い荒らすワイルドボアの数を出来るだけ減らして欲しい……」


 この国でもイノシシのような動物が畑に出てきて農作物を食い荒らすそうだ。


「ワイルドボアは凄いスピードで突進してくるらしいよ、数が多いと危険じゃない? 大丈夫?」

「最近、ストップの魔法を覚えたの。だから多分大丈夫だと思う」

「私もウインドブラストの短縮が可能になった。だから大丈夫」


 二人とも、ボアが突進してきてもそれらを止める手段を覚えたようだ。最悪は俺のMR魔法でストップ魔法が可能だからいいかな。


「じゃあ、これにしようか。報酬は1頭あたり大銀貨1枚。結構いいんじゃないかな」

「決まりだね」



 俺たちは依頼を受けて、ギルドで紹介された“冒険者の館トロフィア”という宿泊所を探した。宿はすぐに見つかったので早速中に入って部屋の空きがあるか確認する。


「二部屋ですね、どちらも二人部屋になるけどいいですか?」

「はい、大丈夫です」


 宿屋の娘さんだろうか、それとも奉公人だろうか。まだ10歳くらいの女の子がカウンターで受付をしている。


「1部屋の料金が1泊で銀貨2枚なのです。それから朝食と夕食付きだと一人につき大銅貨5枚が追加になります」

「では、3人の2部屋で1週間分、朝食夕食付きでお願いします」

「分かりました、えーと……部屋代が銀貨12枚と、食事代が大銅貨5枚が3人分で、6日分だから……」


「全部で銀貨33枚だね」

「アル君、もう計算しちゃったの?」

「アルの計算、いつも速い」

「ええっ、ええっと……」


(ごめん。娘さんがあたふたし始めたぞ)


「あら、お兄さんたちごめんなさいねぇ。お兄さんの計算で合ってるよメイ」

「あ、はいごめんなさい」


 奥の厨房らしきところからお母さんだろうか、少しふっくらとした女将さんが出てきた。


「まだ慣れていないもんでね、計算が遅くて申し訳ないさー」

「大丈夫よ、私も出来てなかったわ」

「私も」

「そっちのお兄さんは一瞬で計算したみたいだけど、頭いいんだねぇ」

「あ、いえいえ。このくらいは暗算でいけますから」

「へー、暗算ねぇ」


 俺は娘さんに大銀貨3枚と銀貨3枚を支払って、部屋に案内してもらった。


「おトイレは1階にあって、お湯も1階の水場に樽で用意しています。そこの桶に入れて各自部屋までお持ちください。夕食は18時から21時までで、朝食は6時から下の食堂でやってますです。それではごゆっくりどうぞ」


「ねえアル君、私たちはまだお金が無いんだけど、宿代払えるようになるまで貸してもらっていいかなぁ」

「お金は持ってるから大丈夫なんだけど、エミーたちは気にするだろうから依頼達成で収入があった時に分配とかを話し合おうか」

「うん、分かった」

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