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第60話 ルノザールの冒険者ギルド

 一夜が明けた。

 今日は二人を冒険者ギルドに連れて行き、冒険者登録をする日だ。


 彼女たちも、領主様への報告と相談ができたし、冒険者らしく宿屋に泊まりたいと領主館を出てきた。

 メイドのアンナさんは「ええー、もっといてくださいー」と引き留めたのだが、「最初が重要」とミラも譲らず、エリーも「いつでも会えるわよ」と宥めて出てきたのだ。


「先ずは冒険者ギルドに行って、冒険者登録をやらないとね」

「うんうん」


 そして、ノリノリの二人を連れて冒険者ギルドに向かった。


 ルノザールの冒険者ギルドは街の南側にあった。ここの冒険者ギルドに入るのは実は初めてだ。

 フィリルの冒険者ギルドは3階建てだったが、ここはルナの町と同様に2階建てになっている。


 中に入ると、いくつかの視線を受ける。受付を探すと、左奥にあるカウンターが受付のようだ。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」


 皆はもう興味を失って、こちらを見ている人はいない。


「はい、本ギルドは初めてですか?」

「はい、初めてです」

「三名のご登録ですねー。あ……私は受付担当のアメリアと申します。宜しくお願いしますね」


 そうか、同年齢に見えるだろうから、俺も含めた登録だと思われたようだ。


「俺は登録済みだから、後ろの二人をお願いします」


 俺は自分のギルドカードを差し出した。


「はい、承知しました。アルフレッドさん、ランクはEですね、一旦カードはお返ししておきます。では、登録希望のお二人は、先ずこの用紙に必要事項をお書きください」


 俺がギルドカードを手にしたときには、ヴァルターさんが作ってくれたから、登録用紙なんて書いてない。

 記入用紙を覗いてみると、名前と性別と年齢、それに出身地と魔術師かどうかを書くだけの簡単なものだ。


(魔法の適性は、書かなくてもいいのかな?)


「書きましたー」


 簡単だから早い。


「それでは、お二人ともこのプレートに両手を当ててください。ギルドカードの元になる素のカードをここに置くと、魔術師のお二人は経験値と一緒に適正魔法も登録されますのでね」


 なるほど、申請用紙に書かなくても経験値を自動的に検知して記録するのか。


(ん? こんな事してないが、俺が魔力持ちじゃないのでヴァルターさん端折ったな?)


「では、エミリーさんからいきましょうか」


 エミリーが両手を置くと、魔力検査の時のようにプレートが光り出した。魔力検査では白く光っていたが、これは何色も色が混じっている。


「わあ、凄いです。エミリーさんの適性は水魔法、雷魔法、風魔法、土魔法の四つで、冒険者ランクはEランクです」

「えっ? 私、風魔法は出来ないです。……それに、冒険者ランクはFからじゃないんですか?」


 そうそう、最初はFランクのはずだ。


「えーっとですね、まず、このプレートに表示されるのはあくまでも適性を示していて、今現在魔法が使えるかどうかは関係ありません。多分近い将来、風魔法も習得できるようになられると思いますよ。そして冒険者ランクですが、魔道学園を卒業された魔術師さんはその時点でEランクの実力の方が多いんですよ」


 エミリーは魔道学園での研修のおかげかな? と呟いている。その通りだろう。

 それにしてもEランクとは……どうやってランクを判断しているのだろうか?


「こちらがエミリーさんの冒険者ギルドカードになります」

「やったー、アル君と同じEランクだよ。えへへ」

「次はミラベルさん、プレートに手を当ててください」


 ミラが手を当てると、エミーと同じように数色の光が灯る。


「すごいです! ミラベルさんは、火魔法、雷魔法、水魔法、風魔法、召喚魔法です! 冒険者ランクはエミリーさんと同じくEランクですね」

「召喚……」


 ミラの目がキラキラとしているように感じる。


「では、こちらがミラベルさんの冒険者ギルドカードとなります」


 二人とも、もらったギルドカードを大切そうに握りしめた。



「それから、冒険者ギルドカードは無くさないように気を付けてくださいね。もし無くしても再発行は出来ますが、その場合1ガリルの発行手数料を頂くことになります」


 商業ギルドのカードでも同じように言われたのを思い出した。しかし、ミラもEランク……どうやったらランクが分かるというのだろうか? 俺はそこに興味が湧いた。


「あの、すみません。冒険者ランクはどのようにして判断しているのでしょうか?」

「ああ、それはですね、このプレートは魔道具になってまして、その人の経験値をもとに冒険者ランクを判定するんです」

「俺はFランクからEランクに昇格した時には、昇格試験を受けて体術試験と学術試験に合格しなければならなかったんですが……」


 俺は昇格試験を受けたが、エミーたちは受けなくてもよいのが疑問なのだ。


「ごめんなさい、アルフレッドさんは魔術師ではありませんよね。ですので昇格試験が必須なのですが、魔道学園を卒業された魔術師の方はプレートがそれを検知するので試験も免除になるんですよ」


 魔道学園の魔術科では、討伐研修や修業旅行で魔物を倒す経験が与えられたり、座学では冒険者ギルドの学術試験以上の知識を学ぶ。それで昇格試験が免除になるのだという。なるほどね、納得だ。


「あとですね、アルフレッドさんはE級昇格のための体術試験というのを受けられたと思います。その後は経験値によってランクが決まっていきますので、魔術師の方ともさほど不公平はないと思いますよ?」


 今、重要なワードが出てきたのだが。経験値でランクが決まるって……?


「えっと……ランクを上げるには、ランク毎の昇格試験を受ける必要があるんでしょう?」

「昇格試験は、Eランクの体術試験と学術試験だけですよ?」

「えっ?」


(昇格試験はEランクだけ? では、どうしたら昇格できるんだろう?)


 俺が首をひねっていると。


「もしかしてアルフレッドさん、ギルドカードの更新をされていないのですか?」

「更新ですか? Eランクに昇格してからは何もやってないですね」


 Eランクに昇格した直後にスタンピードに遭遇し、王宮に召喚されたり魔道学園に入学したりで、そんな事は全く考えていなかった。


「Eランクに昇格してから、魔物の討伐などで経験値が入ったことはありませんか?」

「それはもう……たくさんに」


 スタンピードでの魔物討伐や、セージトータス等々……。


「では、今ここでカードの更新ができますので、やられてみてください」


 カードの更新は別に昇格条件に達していなくても、何度やってもいいらしい。


「では、アルフレッドさんのギルドカードをここにセットして、お二人と同じように両手をここに当ててください」


 俺は再度冒険者ギルドカードを取り出して、言われた通りにした。


「えっ?……ちょ、ちょっと待ってください!」


 思わず声が出たのか、慌ててアメリアさんは手で口を押えた。


「ど、どうしたんですか?」

「Bランクです。私、Eから一気にBランクに昇格した人を初めて見ました。一気に3ランクも……」


 アメリアさんが驚いた声を出したものだから、ギルド内の職員や冒険者たちが、何事だ? とこちらを向いている。

 どうやら、やらかしてしまったようだ。


(スタンピードの時の経験値が効いている? 倒した数が半端ないし)


「アル君、本当はBランクだったの?」

「おかしいと思ってた」

「一緒のランクになったと思ったのにー」

「ズルい」


 二人とも不服を漏らしているが、一番驚いているのは俺だ。一気にBランクって……。

 それにしても、ギルドカードの更新の事は誰にも教えてもらっていない。どうしてだ?


 本来なら、ルナの町の冒険者ギルドで教えてもらうべきだったのだろう。あの時は、リリアンさんもヴァルターさんも、スタンピードや迷宮の後処理で忙しすぎて寝てなかったからな。


(もっと早くに、俺が自分で気づけよって話だよね)


 何はともあれ、今日から3人でパーティを組んで、ギルドの依頼を受ける準備が整った。

 俺は、無意識に拳を握っていた。これからの期待と不安を、全てこの手に受けとめるかのように。

60話までお読みくださり、ありがとうございます。

皆様のおかげで、ここまで話を進めることが出来ました。

次話も読んでみようと思われたら、ぜひ「いいね」、「ブックマーク」をお願いいたします。


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