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第41話 変わった魔法の発現に挑戦

 魔法のスクロールが上手くいったことで、俺は新たな課題に挑戦してみた。

 MR装置の改良だ。


 具体的に言うと、MR装置に各種の魔法発動の魔法陣をプログラム化して内部に登録し、これを演算装置に実行させる。

 そうするこ事よって、魔法と同様の事が出来るのではないかと考えた。勿論、俺には魔力が無いのだから、魔石によって魔力を供給する仕掛けを作らなければならない。


 魔法のプログラムの実行は、音声認識で実行開始させる。ファイアボールならば、「ファイアボール」と発声して起動するので、短縮詠唱と全く同じとなる。


 魔法発生の準備と制御はMR装置に任せ、動力源となる魔石は魔術師の杖に仕込ませることにした。

 見栄えはアウトかも知れないが、使い切った魔石の交換は魔道ガンと同じマガジン交換式とする。


 MR装置と魔術師の杖間では通信を行い相互に連携して、魔法を(魔法らしきものを)発動できると思うのだ。


 俺は、裏門の守衛室にルメリウムの樹液を探しに行くという名目で森に入る事を許可してもらった。

 そして、学園に音が聞こえない場所まで離れた。そうしないとMR装置による秘密の魔法練習が、誰かに見つかってしまう。


 そして、ここまで離れたら大丈夫だろうと思われる広場を見つけた。




「ふぅーーー」


 実験の前に深呼吸をする。


「魔法短縮詠唱モード、オン」


 魔法発動プログラムの実行命令だ。


「いくぞっ ……ファイアボール!」


 魔道ロッドの直ぐ上に、バレーボール大の火球が発生し、ロッドの動きに合わせて火球がゆらゆらと前方へ飛んで行った。


「よっしゃーー!」


 思わず叫んでしまった。

 イメージした魔術師のそれとほぼ同じ火球が出現したのだから、……とにかく嬉しい!


 その日、俺は調子に乗って、様々な魔法の発現を試みて楽しんだ。ウオータで火を消さなければ大事になるような、肝が冷えた場面もあったりする。

 また、ファイアボールの移動スピードは、ロッドを両手で持って勢いをつけるとスピードが速くなる事も分かってきた。


「やべ、もう魔石がない」


 研究室からすべての魔石を持ち出していた俺は、もう魔力の残った魔石のストックが無くなってしまった事にやっと気付いた。


「参ったなこれは」


(魔石代って結構高いんだよね)


 地球の知識から思うに、魔石は地球の電池に性質が似ている。

 電池には充電して繰り返し使える『2次電池』という物があるが、魔石って2次電池と同じように充電できないのだろうか? 素朴な疑問が湧いてきた。


(ダメ元で、電気で魔力をチャージしてみようか)


「電気をどうやって確保するかだな」


 サンダーボルトの魔法は静電気を蓄積して一気に放電させる魔法だが、瞬間的に電流を流すだけなので電力はさほど必要ない。

 しかし、チャージに要する電流は大きく、長い時間かかるのでけっこう沢山の電力が必要になると思うのだ。


「ここはやっぱり、太陽光発電かな」


 俺は、太陽光発電に必要な半導体を手に入れるために、セレニア川にシリコンを多く含んだ石を探しに行くことにした。


 王都エルテルスの東側には、セレニア川という大きな川が流れている。北のナポリア山脈からの支流を集めて、王都のそばを通り、南はエイヴォンの港まで流れているのだ。


「今度の休みに、エミーたちを誘って石を探しに行こうかな」


◇◆◇


「そういう訳で、今度の休みの日に白い石を探しに行きたいんだ。一緒に探してくれないかな」

「セレニア川に白い石を探しに行くの? 何だか面白そう! メグとラズさんも誘っていいかなぁ」

「多い方が助かるし、いいと思うぞ。俺の方もエド君を誘ってみるよ」


 俺は昼休みの時間、食堂にいたエミーとミラをつかまえて、石集めの相談を持ち掛けた。


「6人で探せば結構な量が集まるかも。川までは5キタール程あるから、魔道台車とかも用意しないとね」


 この世界でも、荷物を運ぶ際に使われる台車がある。


「魔道台車ってなに?」

「この前、台車の車輪に魔道モーターを取り付けてみたんだよ。これが結構楽ちんでね」

「へー、アル君って何でも便利にしちゃうんだね」

「やってみたら出来たって感じかな」

「今更だけど、それってすごい事だよ?」

「ハハハ、じゃあ、次の日曜日。10時に表門に集合ね」



 石集めの当日に、俺は魔道台車に使う魔石が無かった事に気が付いた。

 急ぎ雑貨屋に買いに行く羽目になった為、集合時間に少々遅れてしまうのだった。


「ごめんごめん、これに使う魔石が切れてたという事に今朝気付いてさ。買いに行ってたら遅れてしまって……」

「アル君、いつもだったら時間守るのに、来てなかったから心配になったわよ」

「アルは、時々そんなとこ抜ける」

「いいんですのよ、そんなに長く待っていたわけではありませんから」


 女性陣は三者三様の物言いだ。ラズさんは黙っているけど、どう思っているのかな?


「ところでエド、何持ってきたの?」

「釣り竿だよ、川に行くんでしょ?」

「そうだけど……、今日は石集めだよ?」

「時間は沢山あるから、魚釣りもできるさ。セレニア川には魚が沢山いるって話だからね、僕がみんなに釣りのやり方を教えてあげるよ」


(釣る気満々だな、この自信はどこから来るんだろう。そういえばこいつは海の近くの出身だから釣りは慣れているのかも?)


 女性陣は、みんなそれぞれにバスケットを持っている。昼の弁当をエミーたちにお願いしておいたので多分、昼食が入っているのだろう。

 ラズさんのは特に大きいが、何が入っているのか楽しみだ。


 1時間ほど歩くと、セレニア川の河原に着いた。うん、いろんな石が混在している普通の河原だ。俺はその中から白っぽい石を探してみんなに見せる。


「こういう白っぽい石を皆には集めて欲しいんだ。中が透き通っているような石でもいい」


 酸化ケイ素を多く含んだ石が、シリコン抽出には適している。水晶だったらもっと純度が高が、この世界にはあるのだろうか?


「分かったー、あった! こんなのだよね」

「そうそう、それでいいよ。集めたのはこの木箱に入れて欲しい」

「アルさん、これでもいいのかしら?」


 おお、水晶があるじゃん。


「すごい、これ水晶ですね! これだとバッチリですよ」


 何だか王女様が嬉しそうだ。


「わ、私も水晶っていうのを探す!」

「エミー、水晶じゃなくてもいいから。普通に白っぽいのでいいから」


(あ、エミーが口をとんがらせている。これは何か不満がある顔だ。そんなに水晶が欲しかったのかな?)


「アルがメグだけ褒めるから」


 エミーの不満の原因をミラがこっそり教えてくれる。昔からミラにはだいぶ助けられてると思う。


「エミー、今日は俺が集めたいシリコンってやつが多く含まれる石を探しているんだ。水晶は純度が高いけど、エミーが見つけた白い石にもたくさん含まれている。こっちの方が沢山あるから効率がいいよ」

「……うん」


(これでもダメか)


「この白い石でも、加工すれば水晶みたいに透明になる。クリスタルガラスっていうんだけど今度それでエミーにペンダントを作ってあげるよ」

「ペンダント? 絶対だからね!」

「うん、約束する」


(お、機嫌が直ったかな)


 そして1時間も経たないうちに、多くの石を集めることができた。これだけあれば、太陽光発電に使う分のシリコン結晶を精製することが可能だろう。

 流石に台車を河原までは持ってこられなかったから、台車まで俺とエドで運ぶしかない。

 そう思ってエドに声を掛けようとしたら、王都の方からお昼を知らせる鐘の音が聞こえてきた。


「もう石は十分集まったから、そろそろ昼飯にしようか」

「さんせーい!」

「あそこの土手に平らなところがあるから、あそこで昼食っていうのはどうかな? エドは一緒に木箱をあそこまで運ぼうか」

「分かった、任せてくれ」

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