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第34話 魔物討伐研修

 俺、アルフレッドにとって14回目の芽生えの季節が巡ってきた。そして無事に中等部へと進級することができた。


 中等部に進級した魔術科の生徒にとって、魔物討伐研修は魔物と遭遇する初めての機会である者も多い。


 ミレーナ魔道科長から話があった様に、俺は魔術科の生徒が4名しかいない4班に入ることになった。男子2名と女子2名だ。4班には友達のエド君がいて、俺のことを紹介してくれた。


「皆知ってると思うが、魔道科で特殊な武器を開発したアルフレッド君。剣の腕前も確かだ」

「魔術科の生徒の中に魔道科の生徒が混じるのは初めての事らしいけど、みんなに迷惑をかけないように頑張るので宜しく」

「食堂でよく見かけると思うが、俺の事はロブって呼んでくれ、宜しく!」


 背が高く元気があって、活発そうな好青年はロバート・テイラー君。ロブって呼んでいいらしい。


「宜しく、なのです」


 そしてその先にいる彼女は、アン・ブラウン、珍しい召喚魔法の使い手だ。でも何だか、彼女の方が召喚されたリスみたいだ。


「宜しく、今年から私は治癒魔法を特訓中よ」


 そしてもう一人は、マリー・ホワイト、水魔法と土魔法が得意な赤ら顔でソバカスのあるツインテールの女性だ。


「彼は魔法は使えないが、剣と魔道具である武器を持参している。小さいが威力のあるファイアボールを高速で発射する武器だ。彼のことは私からも宜しく頼む」


 グループ内で簡単な挨拶が終わった。魔術科と魔道科、あわせて40名足らずだから、1年も経てば顔と名前くらいは知っているのだ。


「アル君は僕の友人でね。彼が魔物討伐研修に参加するって聞いたときに、人数が少ない僕たちの班に配置されると期待していたけど、実際にそうなってとても心強いよ」


 この研修で探索をするのは、魔道学園の北西の森だ。ここらで出てくる魔物は、たいして強くはない。


(今の俺なら、剣でねじ伏せることができるレベルだと思うが、一応控えめに話をしておこう)


「エドワード君はそう言っているけれど、あまり期待しないでくれると助かるかな。出来ればみんなが研修を通してレベルアップして欲しいと思う。もちろん俺も全力をでサポートさせてもらうよ」


 この研修は魔物を倒して経験値を得ること。その経験値でレベルアップして、魔法の効果を高めていくことも1つの目的だ。俺は出来るだけサポートにまわりたい。


「そうだね、アル君の言う通りかもしれない。僕たちも全力を尽くそう」


◇◆◇


「魔道科のアルフレッド君は知らないかもしれないので、一応自己紹介しとくぞ。私は魔術科の魔術練習所を担当しているライアナ・フォークナーだ。今回の魔物討伐研修では君たちの担当教官になっている。皆も宜しくな」


 ライアナ先生はもちろん知っているさ。校門横の魔術練習所で魔術実習の教官をしていて、全ての魔法属性を極めた俺の憧れの先生だ。

 何と言っても、魔法を発する時の魔法陣が奇麗で無駄がない。とても効率の良い魔法陣だという事が、こっそりプログラム化した俺には解るのだ。


 討伐研修初日の朝、俺を含め研修を受ける人数20名の生徒が、魔道学園の裏門の外に集合し、それぞれの担当の教師から説明を受けた。


 魔道学園の北西側の森を、4泊5日かけて探索し、出くわした魔物を討伐するという研修なのだが、1つの班に1名の教師が担当で付いている。

 魔物討伐での連携や共同作業、チームワーク等の基本的な行動を学び、魔物を討伐した時の経験値も魔術の上達に活かすのが目的だ。


 魔道学園の生徒は、学園を卒業する頃には大人の仲間入りを果たし、特に魔術科の卒業生は大規模な魔物の討伐隊に組み込まれる可能性もある。もしかすると他国との戦争に駆り出される場合もあるかもしれない。


 仲間との連携に必要となる基本的な知識は、魔道学園在学中に覚えなければならない。その為、中等部と高等部には教育カリキュラムとして組み込まれているのだ。


 班ごとに各先生たちの説明が終わったところで、知的な風貌で背の高い女性が全員の前に立った。近くで見るのは数回目だが、彼女が魔術科長だ。


 「この魔物討伐研修の指揮を執る魔術科長のミレーナ・アルケインです。これより、1班から順に森に入っていきます。森のほぼ中央付近、まる1日歩いたところには中央広場があって、そこを生徒の皆さんや教師たちの拠点にします」


 まる1日歩くという事は、だいたい30km程度の距離だ。


「明日からは班ごとに4方向に分かれますが、今日は一緒に行動します。そして本日遭遇する魔物については、討伐と魔石の抽出は先生たちが行ないます。生徒の皆さんはそれを良く見て、今日のうちにやり方を学ぶようにしてください」


 エミーとミラ、そしてマーガレット王女は共に1班だ。この3人が俺に先に手を振りながら、先に森に入っていった。周囲の視線が俺に集まる。


 俺たちも、その後から大きなリュックを背負い森の中に入っていった。


◇◆◇


「このように、火魔法は魔物には有効だが、木々を燃やしてしまうことがあって一歩間違えば山火事になる恐れがある。だから火魔法は水魔法とペアで使い、必ず消火を確かめてから先に進むようにすること」


 森では火魔法と水魔法をペアで使うという説明が、まさに目から鱗だった。


「くすぶって煙が出ている状態は内部までは完全に消火しておらず、暫くするとまた燃え上がる場合があるから完全に消えた事を良く確認する事。いいな」


 このあたりで出現する魔物といえば、スライム類、ネズミ系、ウサギ系のFランク魔物がメインだ。先生たちはこれらの小型魔物を手際よく倒しながら必要な知識を生徒に教えてくれている。


 森を奥に進むこと4時間を経過した頃に、休憩時間に入った。

 それぞれが作ってきた昼食やパン類を食べて休憩をする。水は水魔法の得意な生徒が班に1人はいるので、カップに注いでもらう。


「みんなのカップをここにまとめて置いてくれないかな。一気に水を作っちゃうから」

 

 俺たちの班は、マリーが水を作ってくれている。

 5人分のカップを地面に置いて、両手を左右に配置して「ウォータ」を短縮で唱える。

 すると、両手の間に水の玉が形成されてゆき徐々に大きくなってくる。それが5つの玉に分かれたと思ったら、それらをゆっくりと器用にカップの中に滑り込ませた。


(おおー、すごいすごい)

 俺は無意識に拍手をしていた。


「こ、こんなの誰でもできるわ、簡単よォ!」


 彼女はそっぽを向きながら、水を入れたカップを俺に差し出してきた。


「ああ、ありがとう!」


 おれは両手で受け取ると、素直にお礼を言う。


「ど、どういたしまして!」


 彼女はそう言いながらも、まだそっぽを向いたままだ。


(これは、知識の中の『ツンデレ』ってやつなのか? いや、まだわからないな。俺を嫌いなのかもしれない。もう少し見守ってみよう)


「もうすぐ休憩を終わるぞ、皆準備をしなさい」


 魔道科のライアナ先生が、再出発のための合図を行う。それから俺たちは森の中央地点を目指して、更に4時間ほどを歩いた。


 中央地点で再度1班から4班までの生徒が集合し、魔術科のエリオン先生がこれからの行動内容と注意事項を説明してくれた。


 班ごとの魔物の狩り場は1班が西側、2班が南側、3班が東側、4班が北側だ。

 それぞれにその方向に移動して魔物の討伐を行い、昼食と夜の寝泊まりはこの中央広場に集まることとなっている。


 先生たちは何か問題があった場合に備え、中央広場で待機する。

 日程は、2日目から3日目に掛けて狩りをし、4日目にはまた学園に向けて移動するというスケジュールだ。


 一通りの説明を受けた俺たち4班は、中央広場の持ち場の北側寄りに2つのテントを設営した。


(さあ、明日からは俺たち生徒だけで行動し、魔物を討伐する予定だ。ワクワクしているのは俺だけだろうか?)

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