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第20話 ルナ迷宮2

「じゃあ、防御力アップかけるよ」

「あ、ちょ……」

「プロテクト! えっ?」


 ミレーヌさんが防御力アップの魔法を掛けてくれるが、俺はMR装置の録画スタートをまだしていなかった。


「いえ、魔法陣を見たかったなって」

「アル君はねぇ、魔法陣も2~3度見ただけで完璧に覚えちゃうのよ」


「えーと、じゃあもう一回やるね。重ね掛けしても効果は一緒だけど、よーく見ておいてね」

「防御力アップは簡易詠唱なんですね」

「うん、そうなの。味方の生死にかかわるときもあるからさぁ、咄嗟に掛けなきゃならない場合があって、だいぶ練習したんだよね、……てか、魔法陣覚えちゃうの? なんで?」


 急ぐ必要のある魔法は簡易詠唱で発動するよう、かなり練習するんだという。ヒールもその1つなのだと。孤児院のシスターであるミリアさんは詠唱をしてたと思うけど、冒険者の場合は緊急にヒールしなければならない局面も多々あるだろ。


(あと、何でって聞かれても、MR装置で解析するためですよって言えないよ)


「魔法陣って一瞬光るじゃないですか、目の奥に残像が残るっていうか……その、記憶されるっていうか……」


(困ったぞ、説明になってない)


「ふーん……アル君の目って、不思議な目」


(ミレーヌさんが、ジト目だ)


「気になるけど、これ以上問いつめてもしょうがないか、行くよ。 ……プロテクト!」


 こちらに掌を向けて魔法を打ってくるので全てが確認できる。これだと1回でOKだ。


「も一回やる?」

「あー、大丈夫の様です」

「……」


 ミレーヌさんのジト目がレベルアップした。


「わ、私のアル君だからね、しかたないよ。 ……先に進んでみようか」


(腕組んで言われても、あんまりフォローにはなってないような)


 これまでは入り口の近くだったから魔物はいなかったのだが、奥に進んでいくとウサギの様な魔物があちこちに出るようになった。この階層の魔物は攻撃しなければ襲ってこないのだ。そう書いてあった。


「あれはラビディンね。このあたりの魔物は攻撃しなければ襲ってこないけど、狩ってみる? あ、あと近くにもう一匹いるとそいつが襲ってくるし、飛び跳ねるから要注意ね。」


 剣にしようか、どうしようかと迷ったが、魔物への攻撃は初めてなので専用ライフルで狙ってみることにした。


「専用ライフルでやってみますね」


 スタンディングスタイルでライフルを構え、10mほど先のうさちゃんを狙う。ちょっとかわいそうだけど魔物だと割り切って狙い撃った。が、これは酷い。嫌な音をたててラビディンがあたりに飛び散った…… 出力が強すぎるのだ。


「あちゃー、これじゃあ魔石も飛び散っちゃってるわ」


(ほかの二人も引いているようだ。いや、驚いているのか?)


「火力が強すぎるみたいです。時間があれば調整はできるけど、この階は剣で行きます」


 俺はライフルを背中に戻して、鞘から両手剣を抜いた。



「じゃあ、私たちもサポートするね」


 この辺りは広くなっているので両手剣を振り回しても大丈夫そうだ。俺は近くの岩の上にちょこんと、むこう向きで座っているラビディンに狙いを澄まして、一気に居合抜きの要領で剣を振りぬいた。


 俺が見据えた(・・・・)ラビディンの頭部は、一瞬で胴体と分離した。しかし……


 次の瞬間には、岩蔭からもう一匹のラビディンが飛び出し、俺に向かって襲い掛かってきた。


「うぉっ!」


 一匹だけだと思っていたが、もう一匹が岩蔭にいたのだ。咄嗟の事だったから俺も対処が出来ず、左肘のあたりをガブっと噛まれてしまった。


「ウインドカッター」


 ミレーヌさんが、ウインドカッターの魔法で素早くラビディンを仕留めてくれた。


「大丈夫? 噛まれちゃったね」


 ラビディンの前歯は大きいので、噛みキズが深い。傷口からにじみ出る血が手首の方まで流れてきた。しかし、傷を負った直後は傷の割にあまり痛みを感じないのが不思議だ。


「動物系の魔物に噛まれたところは、後でだんだんと痛くなってくるよー。止血もしないとだから、治療するわねー、腕めくってー」

「ああ、すみません」

「ヒール!」


 傷口にかざした手から、緑色と青色の魔法陣が出て回転している。ああ、この暖かい感じ、エミーが手を当ててくれた時と同じだ。傷口が奇麗に塞がり痛みもなくなったところで、魔法陣も消えた。魔法陣の録画もばっちりだ。


「どう、痛みも無くなったでしょー?」

「ありがとうございます、ノエルさん ちょっと油断してしまいました」

「いいのよー」


 ノエルさんはニコニコしている。


 しかし、何だろう。1匹目を倒した時に感じたあの違和感は。胸の辺りが少しだけ厚くなった感じがするのだ。無意識に胸の辺りを触っていたのが分かったのか、リアナさんがこう教えてくれた。


「アル君分かった? 魔物を倒した時に感じる、胸が熱くなる感じ。それはね、アル君に経験値が入っているっていうあかしだよ」


「えっ、でも最初にライフルで撃った時には感じませんでしたよ?」

「あー、多分そん時もあったはず、最初の討伐だったし無残に飛び散ったのが衝撃的だったから、分からなかったのかもね」


(確かに、あの時は緊張していたし、あちゃーって思ったから感じる余裕もなかったな)


「魔物を倒していくと、その魔物の強さに応じて経験値っていうものが体の中に入ってくるの。経験値が一定以上になると、体全体が急に軽くなる感じがする時が来るよ。その時レベルが上がったって、私たちはそう言ってるんだ」


(地球の記憶でいうところの、ゲームの中の経験値の様なものなのかな?)


「レベルが上がると、体の動きも良くなるし、魔法の効果もアップするのよー」

「レベルっていうと、皆さんのレベルってどの位なんですか?」


(レベルを見る方法が有るのかな? そう思って聞いてみた)


「分かんないわねー、これまでに何回くらいそうなったかって覚えていないし、戦闘中に起こる場合も多いわ。その時はそれどころじゃないから気付かない場合もあるしね。まあ、大体どの位あったかっていうと、私は30回くらいかなぁ」

「私は20回くらいねー」

「私は20回もないと思う」


 リアナさんがダントツで多いようだ。その分レベルが高いって事だろう。


「リアナさんだけレベルが高いんですね」


「私はさぁ、Aランクパーティの暁星集団で活動してるでしょ? 入団したての頃はEランク冒険者で弱かったんだけど、みんなも良くカバーしてくれて結構迷宮の下の方で活動してたのね。ギルドでパーティ登録をするとみんなの経験値が均等に振り分けられるようで、最初のころは一気にレベルが上がっちゃったてわけ」


(リアナさんの言っていることはよく理解できる。日本の知識で言うところの“パワーレベリング”というやつだな)


 それからは気を抜くことなく、ラビディンをほふってゆく。20匹くらいを狩ったときにフッと足が軽くなる感じがしたのが分かった。


「皆さん、いま足が軽くなる感じがしたんですが、レベルアップでしょうか?」

「それだよ、それ。 もうそろそろじゃないかって思ってたよ」


 ミレーヌさんがそのとおりだと言っている。


「じゃあ、この先のアースラットのエリアに行こうか。アル君も大丈夫そうだし」


 アースラットというのは、ネズミを大きくした様な魔物だ。でも大きい…… カピバラか? いや動きはもうちょっと素早く目つきも悪い。


「ここからは、近寄るだけでも向こうから襲ってくるから要注意ね」

「了解です」


(ここも無理なく魔物に対応できた。楽勝かも)

なんとか20話まで投稿することが出来ました。

ここまで読んでいただいた方には感謝です!

次話も読んでみようかなと思われましたら、

公告したの☆☆☆☆☆から評価をいただけると大変うれしいです。

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