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第17話 魔物討伐2

 農村部に着いたのは19時頃だった。日は沈んでいるがまだ明るい。魔物は夜目が効くらしく作物が襲われるのは真っ暗になってからだという。

 討伐隊の皆さんは武器や防具の整備をしているが、俺は納屋を借りて仮眠をとることにした。



「のう、アル坊よ、そろそろ起きるんじゃ」


 いつの間にか眠っていたようだ。外はすっかり暗くなって納屋の外は少し慌ただしくなっている。俺とガレットさんは納屋の屋根に梯子をかけて登り、そのまま待機した。


「そろそろ、持ち場に分かれて待機してくれ。魔物の群れが近くを移動中との連絡が入った。照明弾を合図に、あとは各々の判断で宜しく頼む」


 討伐隊の隊長に選ばれたレオンさんが言うと、各冒険者たちは一斉に行動を開始した。流石に上位ランクのパーティだけあって動きが早い。

 レオンさん率いる暁星集団のパーティランクはAランク。そしてほかの3つのパーティはBランクと、このルナの町では上位ランクのパーティばかりだ。


 農家の納屋の上で待機する俺からは、各パーティの場所がほぼ把握できた。そして森の方から近付いてくる魔物たちのうごめきも薄っすらと確認できる。


 その時、暁星集団のパーティから上空に光の玉が発せられた。リアナさんの光魔法だ。流石に“白昼のごとく”とまではいかないが、魔物たちの位置や数が容易に把握できるようになった。その数はおよそ50体。


 次の瞬間、待機していた各パーティから弓と魔道ライフルによるファイアボールの一斉射撃が開始された。


 見る見るうちに、魔物たちが断末魔の叫びをあげて葬られてゆく。後方で危険を感じた魔物たちは森の方へ逃げようとするが、こちらも側面に待機していた冒険者パーティらによって蹂躙されていった。


 逃げ場を失った魔物たちは狂気に満ちて再度前進してくる。

 しかし、手前に待機していた前衛の冒険者らによって行く手を塞がれ、あっという間にその行進は終焉を迎えるのだった。


「魔物にしてみれば、まったく手も足も出なかったって感じだの」

「こちらとしては楽勝だったって事ですか?」

「ああ、そりゃそうだ。先制攻撃としちゃ弓が先になる。しかし弓士の数は絶対的に少ないから次にファイアボールやサンダーボルトなんかの魔術師攻撃が行われるんじゃ。しかしそれは夜中でもって敵がたくさんいる場合は見た目が派手だかんの、すぐに四方八方に離散してしまうんだわ」


(数が多いと大変そうだ)


「しかし、アル坊の魔道ライフルは音もあんまり出ないしの、敵からすりゃいつの間にか横の仲間が倒れとるってなもんよ」


(なるほど。スナイパーライフルの様な物だと、もっと狩りが楽になるのかも)


 魔物の動きが無くなったところで前衛の人たちが屍を確認して移動し、まだ動いている魔物ににとどめを刺してまわる。当たり所によっては一発で息の根を止められない場合もあるのだ。


「さあ、そろそろ降りてみようかの」


 俺はガレットさんに連れられて、倒した魔物の方に足を運んだ。

 魔物の種類はゴブリンとオーク、それにボアの群れだった。


 ゴブリンとオークの死体はどうしようもないのでそのまま朝まで放置するが、ボアの肉は美味しくて需要があるため、早いところ血抜きをしなければならないらしい。

 ボアというのは地球のイノシシに似た魔物だ。大きさもそのくらいあるだろうか。農家の人も出てきて、大人3人がかりで柵に吊るしている。


 ひと段落ついたところで、レオンさんが俺たちの方に歩いてきた。


「まったく、凄いもん作ってくれたなぁ。こんだけたくさんの数が出てきたっつうのにケガ人が一人も出ちゃいねえ。それもあっという間に片付いてしまったってわけだ」

「普段はもっと苦労されているんですか?」

「そりゃそうよ。前衛の俺たちはヘトヘトになることが多いし、ケガを負う事もある。魔物が後衛に流れないように気を付けなきゃならないから大変なんだが、今回は半分の力しか出しちゃいねえ。ほんと助かったぜ」


 そこに後ろからガバッと抱きついてくる人がいた。


「アル君のおかげよー、みんな感謝してるわ~」

「リアナさん! ちょっ、後ろから何やってるんですか」


 リアナさんは魔術師でローブ姿だ。柔らかいものが背中に当たった感触で鼓動が速くなる。おれの防具は胸当てだから背中は空いてるのだ。


「ふふふ、ご褒美だよ」

「リアナ、何してんだオメー、アル坊が困ってんだろー」


 俺の名前は“アル坊”で決定のようだ。同じ暁星集団の創術士エリクさんがリアナさんの行動に呆れている。


「なになにー? エリクもして欲しいのー?」

「ヘッ いらねーよ。アル坊、ありがとな」


 助け舟だと思ったエリクさんは向こうに行ってしまった。リアナさんは子供を揶揄っている感じなんだろうけど、俺としては恥ずかしくもちょっとだけ嬉しかった。



 明るくなるまで、納屋や小屋でそれぞれに仮眠を取ったあと、討伐隊の隊長アレンさんと村長みたいな人とで魔物の配分を決めた。

 魔物の数は、ゴブリンが8体、オークが3体、レッドボアが36体だ。


 今回の場合は、魔石のすべてとボア33体が討伐隊に引き渡され、ボア3体とゴブリン、オークは村に引き渡される事になった。

 村としてはボアの肉が3体分あれば十分で、ゴブリンとオークは農家で処理をするとのこと。後で聞いた話だが、蛆が湧くのを防ぐためによく乾燥させてから細かく砕いて、堆肥と一緒に混ぜると立派な肥料になるのだという。


 全ての魔石を取り出した後、農家の奥さんたちの仕出しで朝食が振舞われた。勿論俺とガレットさんも一緒だ。


「この魔道ライフルを開発したのはあなたなんだってねぇ? すごいわねぇこれ!」


 暁星集団の弓士、リディアさんが話しかけてくる。髪は緑色のショートヘアーであるが大人の女性って感じのする人だ。


「今回の様に魔物の数が多い時は、私たちレンジャーが先に弓を射って出来るだけ数を減らさなきゃならないのね。でも倒せる数は限られているから大変なのよ」


 それはガレットさんからも聞いていた。


「それでね。私は弓の本数が尽きたら、この魔道ライフルを使うようにって言われていたんで両方持っていたんだけど、もう弓は最初の1本だけで、この魔道ライフルに変えちゃったわよ! 狙ったところに真っ直ぐ飛んでいって確実に命中するし、局所的なライトの魔法で狙ったものが良く見えるしで、とても扱いやすいわー」


 立って構えると女性には少し重いのだが、今回のように柵などに置いて構えると腕も疲れないし楽なのだと。


 33体のボアは、解体するのに人手がいるので農家から大八車を6台借りて冒険者ギルドまで運ぶことになった。大八車を貸してくれる農家の男性が引手を引いて、3人が後ろを押して運んでいる。


 ライフルには皮のベルトに使う材料でツーポイントスリングを取り付けているから、ライフルを持ちの8人は、皆同じように背中にライフルを背負っている。

 大八車を後ろから押すには両手が空かなければ押しにくいのだ。



 マルコさんの魔道具屋に帰り着いたのは鐘3つが打ち終わった後だった。


「お兄ちゃんお帰りー」「おかえりー」

「大丈夫だった? 危なくなかったぁ?」


 帰ったら、お転婆姉妹が心配そうに歩み寄ってくる。


「大丈夫だったよ、俺は屋根の上で見学しいてただけなんだから、何にも危ない事は無かったんだよ」

「「よかったー」」


(もっと体を鍛えて、こんな小さい子に心配されなくてもいいようにならなきゃね)

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