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親を探す旅に出ただけなのになぜ世界を救うことに…?  作者: 黄昏の大陸
第3章 少年編 ~傭兵団の仕事~
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第12話 西の領都ヴェスト

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 感想を頂きました。有難う御座います。

深夜、門番や見張りの兵士以外は寝ている時間にソティアスが目を覚まし服を着替え始めていた。

 

 さてと……まずは、西から行くかな……


 ソティアスは内心で呟いてからイストリア国に四つある領都の一つ西の領都ヴェストに転移した。


 西の領都ヴェスト、元々はソティアス・フォルティスの義父のリキド・フォルティスが大将軍に任命された際に上級貴族の伯爵位の叙爵じょしゃくと共に統治を任された領地である。

 西の領地にはイサーラ村も含まれているがこの村は、国王であっても直接統治を行なってはならぬ何百年も前からの掟があるために王国で働く村の出身者の中から領主を選ばれてきた場所でもある。

 現在では理由を覚えている者がいないのが実情だが誰も手を出そうとする者がいないのも事実だ。

 イサーラ村出身者の能力が高い為に度々に直接統治を行なおうとする国王が現れるがその度に大打撃をうけ王都に逃げ帰り多額の金品財宝を送り戦争が無かった事にする国王もいた。

 その為に現在では支配ではなく王国内での役職に就けその中から領主に相応しい者を選ぶようになった。

 リキド・フォルティスが王都又は任務で領都に居られない時は、領主代理アル・アーシェルが治めていたがリキドが領城にいる時でも実務を取り仕切っていた。

 リキドとアルの関係は、リキドが子供時代にイサーラ村から王都イプハールに住み替えを行なってからの仲であり勉学では競い合い剣術はリキドに魔術はアルに軍配が上がっていたが良き友でありよきライバルでもあり竹馬の友という関係であった。

 アル・アーシェルは、現在領主代理では無く偽王グリフォス・レイノ・イストリアに任命されて正式に西の領地の領主に任命され領都ヴェストの領城に入っていた。

 つまり、リキド・フォルティスがイサーラ村にいる際にグリフォス・レイノ・イストリアの命を受けた軍隊が攻めた時に一度も戦う事無く降伏した人物なのだ。


「……ソティアス殿、誰に説明しているのですか?」

「いえ、傭兵団で調べた事の復習です」


 ソティアスが現在いる場所は、西の領地領都ヴェストにある領城の一室である領主アル・アーシェルの寝所であり、その部屋にあった窓から外の様子を確認しながら独り言のように呟いていたのだ。

 どうやって此処まで来たかと言うと簡単な話である。

 領城内にある謁見の間に転移したのだが領主アル・アーシェルの寝所がわからなくどうしようがと思っていた所へメイドの一人が謁見の間の清掃に来た所に出くわしたので説明すると……なんの疑いもせずに寝所まで案内してくれたのだ。


「僕が言うのもなんですが、もっと不審者に対する対応を教えた方がいいですよ?」

「不審者ですか? 違いますよ。全員貴方がリキドの息子だと知っているからここまで案内したんですよ?」

「だとしても今は戦争をしているのですから」

「はははは! 私は、リキドに比べると人望が無いのですよ」


 アル・アーシェルの話を聞くとソティアスは思いっきり同情してしまった。

 

 リキドとアルの関係は、リキドと周りの者が見ると竹馬の友に見えるのだが、アル本人にしてみればそこまでの関係ではなかったと話す。

 子供の頃は、魔術が得意の者より剣術の得意な者が男の子に人気があり女の子にもモテる……魔術師は何故が根暗に見えるからだ。

 魔術にばかりにのめり込んでいたアルだったが、男の子なので女の子に興味を抱くのは同然の節理であり好きになった女の子、初恋の事で悩むのも同然の事であった。

 悩んでいるアルが相談できるのはリキドしかいなかったので、悩みを打ち上げると、そんな事で悩んでいたのが、俺に任せておけ、と言ってくれたので、その時は流石に親友だと思ったようだが大きな間違いだった。

 その後、何日経っても結果報告が無いのでアルがリキドに結果を聞くと、彼女俺の事が好きなんだって! だから俺が付き合う事になった。と悪ぶれる事も無くいけしゃあしゃあと語っていたそうだ。

 

 あの人……そんな事していたのが……イルマ母様を助けた後で全部話す事にしよう……


 ソティアスが内心で呟いていたがアル・アーシェルの話は、まだ続いた。


 初恋の女の子だったが彼女がリキドを好きな事はリキドが悪い訳ではないので諦める事にして、二人が付き合っているのを遠目で眺めている日々が続いた。

 だがある日、二人が一緒に歩く日が無くなった事に気がついたアルがリキドに聞いてみた所、付き合い始めた最初の頃は良かったのだが慣れてくると、他の女の子と話をしないで、とか男の子とばかりあそばないで、とか五月蝿いので別れたそうだ。

 アルの初恋の女の子は泣きながら走って行ったそうだ。

 その後の彼女は、リキドに対して抜け駆けを行なったと見なされて誰一人友達が出来ないまま学校を卒業しそのまま王都から姿を消したそうだ。

 初恋の女の子は駄目だったがその後もアルには好きな女の子が出来た。

 だが、内気だったアルには自分から女の子に声をかけることが出来ずリキドにも相談する事が無かったのだが、告白が出来なかったアルの好きになった女の子はどう言う訳だがリキドが付き合う事が多かった。

 いや、多かったというよりは、アルが好きになった女の子全員をリキドが奪っているようだった。

 学生時代……いや、成人してからも現在の妻と出会うまでは、女の子と付き合った事が無かった。


 リキドとアル、剣術と魔術の違いはあったが共に優秀な成績で学校を卒業しそのまま王宮で働く事となった。

 他国と戦争が無かった為にリキドが出世する為には盗賊退治や危険な魔物の討伐くらいしかなかったがその二つも冒険者がいれば問題が無かったのでそれほど出世に係わる仕事を受ける事が無かった。

 しかし、ある日にラピス・レイノ・イストリア王女の護衛隊長に任命されイサーラ村の出身だった為に出世の道を歩き始めた。

 アルはと言えば、王宮で働き始めた時には既に強大な魔力と魔術の知識が深かったので、次期筆頭宮廷魔術師の席を約束されていた。

 以前にソティアスが戦った現在偽王のグリフォス・レイノ・イストリアの腹心の部下となっているオネスト・コルカールの前の筆頭宮廷魔術師候補だった。

 アルの……いや、魔術師にとって最高の出世の一つとされている筆頭宮廷魔術師になる事を邪魔した人物がソティアスの義父であるリキド・フォルティスだった。

 筆頭宮廷魔術師オスター・グリフが年の為に引退を考え始めた時期にリキド・フォルティスが大将軍に任命され西の領地に赴く際に補佐役を連れて行く事が許された時に名前を挙げたのがアル・アーシェルだった。

 筆頭宮廷魔術師オスター・グリフが反対したが国王であったハイマート・レイノ・イストリアが任命してしまった。

 一度、領地経営に携わった者は、宮廷魔術師に戻る事が出来ない為にアル・アーシェルの夢でもあった筆頭宮廷魔術師の道が閉ざされた瞬間だった。

 筆頭宮廷魔術師オスター・グリフを引退させたくなかった国王とアルを補佐にしたかったリキドの利害の一致の為に強行されたと噂になった事もある。

 この為に筆頭宮廷魔術師オスター・グリフは、引退が出来なくなった。

 リキドとしては純粋にアルと一緒に働きたかっただけなのだが、結果的にはアルの夢を潰したことには気がついていない。

 アルも最初は、夢が叶わなくなった事に落ち込んだが新しい夢でも探そうとリキドと一緒に西の領地に赴く事にした。

 だが実際に領地に赴くとリキドは、一年の半分以上を王宮にさらに半分をイサーラ村の家族の元に行く為に領地にいるのは、一年のうちで二~三月しかいなかった。

 領地経営には殆んど参加していないので、領地に居ても全てをアル・アーシェルに任せて自分は、領城で働く者と話をしたり領都の民の悩みなどを聞いていたりしていた。

 時間があればアル本人がやりたかった事をリキドがやってしまうのでリキドに人望が集まりアルに比べて人望が高くなってしまうのだ。

 それだけなら別に問題が無いのだが領都の民の悩みを聞いたリキドが向かうのはアルのいる領城の実務室だ。

 領都の民の主な悩みは、税金が高いとか食料が足りない、結婚したいのに結婚が出来ない、近場に盗賊がいる危険な魔物がいるとかの話で、領地経営にまったく参加していないリキドにしてみればアルの領地経営の手腕を疑っていたりもしていた。

 リキドが悩みを聞くのは領都の民のみでありアルにとっての領地経営は、当たり前の話だが領都だけでは無く西の領地にある全ての村町街はもちろん街道、平野、森、荒地等人の住んでいない場所などの安全も確保しなければならないのだ。

 村町街に責任者を置いているがそれを取り仕切っているのもアル・アーシェルであり商人や旅人が安全に移動できるようにするのもアル・アーシェルで、行動を起こすのは別の人なのだが全てに指示を出し予算を組むのをアル・アーシェル一人で行っているのだ。

 そんな事を知らないリキドはアルにもう少し税金を減らせとか盗賊や魔物を退治しろと言うばかりで自分では何もしないから諦めたアルは、一度組んだ予算を始めからやり直し新しく予算を組直す作業をリキドが領地にいる限りやり直し寝る暇が殆んどない状態が続くのだ。

 リキドの考え方は、領都が良くなれば周り全てが良くなる、と本気で思っている。

 リキドに言われて予算を組み直し政策に取り掛かり領民の悩みが解消されると全てリキドの指示の元で良くなったとされてリキドの名声が上がり領民の不満は全て領主代理であるアル・アーシェルが請け負う事になっている。

 アル・アーシェルは、自分の役割が分かっているので不満が無いと言えば嘘になるが周りに愚痴を零した事は一度も無かった。

 リキドでさえアルがいなければ西の領地はとうの昔に破綻していた事を知らなかったが……いやリキドだけでは無く誰一人として分かっていなかったアルの報われない苦労を縁の下の力持ちを分かってくれる素晴らしい女性マイカが現れた。


 マイカは、西の領都ヴェストにある孤児院育ちであったが独学で勉強し西の領地で一年に一度の役人試験に一位通過を果たしアル・アーシェルの下で働く事になった人物である。

 アルの下で働く様になったマイカは、アルの才能に魅力に惹かれていきアルの方も自分の事を気になっていることが分かったのだが一向に声を掛けてくれないので自分から声をかけようが迷っていた。


 リキドの所為でもあるのだが、女性とまともに接した事が無かったのでどう接していいのが分からずにいたアルに意を決したマイカの方から交際を申し込んた。

 そして、付き合い始めてから順調に愛を育みとんとん拍子に結婚が決まったがプロボーズもマイカの方からだった為にアルは最初っから尻にひかれていたが幸せな毎日であった。

 リキドは、アルの妻になったマイカにも声を掛けまくったが全然相手にされなかった。

 初めて女性の事でリキドに 一矢を報いる事ができたので内心で喜んだ。

 暫くしてマイカが妊娠し無事に女児を産みマイと名付けられた。


 数年後、グリフォス・レイノ・イストリアの反乱に対し抵抗をしていたのだが領主であるリキド・フォルティス大将軍がイサーラ村から全然戻って来ないので、指揮経験の無い領主代理アル・アーシェルが領軍の指揮を執ることになった。

 しかし、裏方の仕事ばかりをしてきたアルの指揮を認める者がいなく命令系統がバラバラだったところに偽王グリフォス・レイノ・イストリアの命を受けた王軍、盗賊、魔物の連合軍が現れた。

 アルも最初は徹底抗戦の構えをとったのだが将軍数人が兵士を連れて逃げ出してしまったのだ。

 

 後から知ったのだが、真っ先に逃亡した将軍と兵士がイサーラ村の交戦の最中に落とし穴に落ちて死んだ者達だった。


 死んで良かったんじゃない?


 アルの話がさらに続いた。


 逃げ出した兵士もいたが残った兵士もいたので、アルは、残った兵士と共に街門を閉め籠城ろうじょうの構えを取ったのだが敵の内通者によって戦う者達の妻子を人質に取られた……当然だがアルの妻子が真っ先に狙われてしまった。

 妻子を人質に取られてしまった者達の士気が下がり戦う事ができなくなったので一戦もせずに投降したと言う事だった。


「…………」


 今の話を纏めるとアル・アーシェルでは無くリキド・フォルティス、か? これは、絶対にイルマ母様に報告しなければならないな!


 ソティアスが内心で決意している眼前でアル・アーシェルが声を出し大泣きしていた。

 それを見たソティアスが優しくアル・アーシェルの肩を二度三度と叩き声をかけた。


「アル・アーシェルさん、泣かないでください。貴方の妻子は勿論、人質に取られている人も僕が助けますから安心してください」


 その言葉に泣いていたアルは、涙を浮かべながらもソティアスの顔を見て震えながらも言葉を発した。


「一度約束を破った私達に力をお貸しくださるのですか?」

「はい、今の話は嘘とは思えませんでした。あえて悪い人をあげるなら僕の義父のリキド・フォルティス大将軍でしょうね! 全てをアルさんに任せて何もしてこなかったんですから」

「しかし、人質が取られているとはいえグランツ様を裏切ったんですよ? 戦争が終わったら親族共に処刑されますよきっと……」

「グランツ殿なら大丈夫ですよ! そう言う人ではありませんから……万が一にも処刑されそうになったら僕の報酬で助命をしてあげます。もちろん人質を取られている人全員です」


 ソティアスの言葉が終わるとアル・アーシェルの寝所の部屋の前で聞き耳を立てていた全員が扉を開けて入って来たと思ったら座り込み両手を床に付けてお礼を言ってきた。


 ここに居る人は……アル・アーシェルさんを信頼して居る様だね。人望あるじゃない。


 内心で呟いていたが流石にこの光景を予想していなかったソティアスが困惑していたそこにアル・アーシェルが口を開いた。


「王都からの命令で、朝にイサーラ村に向けて軍を派遣する事になっています。派遣しなければ人質の命が……」

「……なるほど……軍の派遣をしたくないけどしなければ人質が殺されるし、そうなれば我々を敵対してしまう、と……両方を敵対しないで戦争を終わらせる方法は……! これしかないかな?」


 ソティアスは暫く考えて名案が浮かび全員に話した。


「名案が浮かびました。戦争が終わるまで領都にいる皆さんを窮屈な思いをさせるかもしれませんがこれなら大丈夫です」

「……その方法とは?」

 アルの言葉に頷いてから内容を話した。単純な話を……


「軍を派遣したいけど派遣できない様にすればいいんです。僕が魔術で領都を天魔術で封印します」

「封印? そんな事ができるんですか?」

「出来ます。封印と言っても領都に出入りが出来なくなるだけですから、少しの間我慢していてください」

「わかりました。よろしくお願いします」

「封印した後、直接北の領地に行きますのでここには、戦争が終わった後にきますので、皆さんは普通の生活を送っていてください」

「はい」

 

 全員に見送られて転移しようとしたが……思った事をアル・アーシェルに話してから転移した。

 残されたアル・アーシェルは、大粒の涙を流したがその場にいた全員、見て見ぬ振りをした。


「アル・アーシェルさん、子供の頃からよく我慢してきましたね! 義父リキド・フォルティスに代わり息子である僕が謝らせて頂きます。本当に申し訳ありませんでした。……これだけでは足りないでしょうから貴方ではできない事を代わりに僕がやらせて頂きます。長年の鬱憤を拳に込めましてぶん殴ります。では、失礼させて頂きます」


 転移したソティアスの姿は領都ヴェストの壁の外にあった。


 天魔術の”封印”を唱えると領都ヴェストの周りを光のカーテンが下りてきて何者をも通さない光の壁となった。


 領都ヴェストの全てを光の壁が覆ったのを確認したソティアスは、北の領地に転移した。

 


 

 最後までお読み頂き有難うございます。

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