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親を探す旅に出ただけなのになぜ世界を救うことに…?  作者: 黄昏の大陸
第3章 少年編 ~傭兵団の仕事~
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第6話 イサーラ村の現状

 閲覧して頂いている方、ブックマーク登録して頂いている方有難う御座います。

 玄関から外に出で夕食の時間に集まる話になり一度解散する事になった。

 リキド大将軍、リュセ大将軍、オスター筆頭宮廷魔術師の三人は、そのまま残りフレトゥムは、酒場にいくと消えていった。

 ソティアスも村の中を確認してくると歩き始めるとその後ろをラピス、ミール、エスト、ルチルの四人が続いて歩き始めた。

 「……どうしたんですか? みなさん」

 ソティアスが聞くと四人の女の子達がそれぞれ答えた。

 「私は、ソティを案内しようかと」

 「私は、ラピスの近衛隊長だから」

 「私は、副隊長だから」

 「私は、ソティの護衛を」

 「……する事が無く暇なんですね?」

 「「「「そんな事無い!」」」」

 四人の声が重なりお互いに顔を合わせて笑い合っていた。

 「ソティ君は、村の何を確認するの?」

 「村の周りの壁の確認と攻められそうな場所の確認をします」

 一度村から出ると壁を左手にまわり始めた。

 真剣に確認しているソティアスの後ろを付いてくる女の子四人が話をしていた。


 「ルチルさんは、5年ソティと一緒に居て……どういった生活をしていたんですか?」

 「呼び捨てで構いません王女殿下」

 「なら私の事もラピスで構いません」

 「ラピスですね! わかりました。……2年近くかなり荒れていました。眼が見えないだけでなく毒の所為で、魔力も体力も回復しないし治る見込みもなかったし……1人で歩く事もままならなかったので、私が兄が常に傍に居ましたから心を休ませる暇が無かったんだと思います。体も心も壊れかけていました」

 「……何故ずっと一緒に?」

 「何処に居ても盗賊や暗殺者に狙われていたから……ソティが1人で撃退できるようになるまで傍から離れる事が出来ませんでした」

 「暗殺って誰から?」

 「半分は、傭兵団のとばっちりで、残りの半分は、ソティに死んでもらいたい者達からの暗殺です」

 「……二人が居なかったらソティは……」

 「それはわかりません。ソティがイサーラ村で、兄を殺していたら死んでいたかもしれませんし。戻ってきた兄から話を聞かなかったら、助けてくれたソティにお礼を言いに行こうと言わなければ、その場合も死んでいたかもしれませんが全ては、ソティの命が助かるように繋がっていたんだと思います。まだ生きているって事は、ソティの運命が終わっていなかっただけです」

 「運命ですか! ソティと恋関係はないの?」

 ラピスの口からいきなり恋の話になってルチルは驚いたが苦笑してから

 「クスッ! 恋ですか? 確かに最初は、かっこいいと男の子だと思いましたが……この5年間は、介護をしていたので、かっこ悪い所もいっぱい見てきたので、兄妹みたいな関係だと思います」

 「……ルチル……あまりその辺りの話をしないで下さい……」

 「「「「クスクス」」」」

 ソティアスが困っている顔を見て女の子4人は口に手を当て笑っていた。

 一周したので、村の中に入った。

 

 「村の周りを歩きましたけど気が付きました?」

 「「「?」」」

 ラピス、ミール、エストの三人は気が付かなかったがルチルは、気が付いたようで答えた。

 「壁の周り……難民が多すぎると思う」

 「そう! 何故難民を村の中に入れない?」

 「それは、食糧が足りなくなるから」

 「許される事ではないですが、奴隷商人に売ったお金があるのだから食料をまとめて買う余裕はあったと思います。北と東の領地を奪われる前なら」

 「そうかもしれないけど」

 「さらに言うとラピスの父親と兄姉は、負けると思っていなかったのが負けでも自分らだけは助かると思っていると思うんだよね……つまり、勝っても負けでも自分の懐にお金を集めておくつもりなんだと思う」

 「! そんなまさか!?」

 「じゃなければ、奴隷商人から受け取ったお金の行き先に説明がつかない。普通なら軍備を整えたり壁を治したりするものだと思います。俺なら! ……」

 「俺なら?」

 「いえ、僕なら壁の向こうの人達を中に入れて、食事の代わりに壁と住居の修繕させたり戦える者は、訓練させて兵にします。一定以上の活躍すれば、戦いを終わった後に領地を与えます」

 「……」

 「そうしないって事は、そう言う事です。腐っているのが偽王から送り込まれた者のいいなりなのがです」

 「ソティ! 凄い!」

 「ソティ君色々考えているのね!」

 ソティは、頭を抑えながら

 「これくらい少し考えれば、誰にでもわかります」

 「「「ごめんなさい」」」

 そのやり取りを聞いていたルチルが笑いながら会話に割り込んた。

 「クスクス! ソティそんな事言わないの! その辺は、特別に勉強していない人には難しいと思うわよ」

 「! 言いすぎた様ですね! すみません……」

 「まったく気にしていなかった私達が悪いと思うから……」

 「ここから北のモンテイスベル大陸でも大規模な戦争が起きているみたいです。戦争をしたくない人達、戦争に負けた人達が他の大陸へ逃れているようです」

 「ソティ君は、そんな事何故知っているの?」

 「直接は知らないです。傭兵団で集めた情報です」

 「どれくらいの規模の戦争なの?」

 「情報では、始まったばかりみたいです」

 「そうなんだ! でも他の大陸の話だよね?」

 「今は! です。……とりあえずここの内戦を終わらせる事が重要です」

 「!? そうね……これからどうするの? まだかなり時間があるけど」

 「……ルチル! 紛れている傭兵団に仕事だ。北と東西にいる全ての難民達を南門に集めて食事を頼むと……後は、怪我や病気の重軽度で分けてくれ」

 「了解! 邪魔が入ったら?」

 「賄賂でも渡して追い払え」

 ルチルは、その場を離れて酒場にいるフレトゥムと傭兵団に今の話をする為に向かった。

 「私達は?」

 「もう少し村の中を確認します」

 村の中の気になる所を確認し最後に公園に向かう事にした。

 「次に行く公園で最後です」

 「……ソティ今の公園は、草木一本生えないから誰もいないわよ……死の公園って言われてるから」

 「死の公園? まあ僕がやったんですけど……でも探知で公園の真ん中に6人と少し離れた場所に10人ほど確認できるのが気になりますので」

 「6人? 10人?」

 「ええ! 5人で1人を囲っているような感じ……虐めかな?」

 「早く行きましょう!」

 ラピスが先頭になり公園の中に入ると5人の15才前後の男女の真ん中で頭を抑えて蹲っている1人の獣人族の女の子を棒で殴ったり蹴ったりしていたがラピスは、その光景を見て立ち止まってしまった。

 「ソティ! あの連中はいけません」

 「どうして?」

 「……あれは、公爵家、侯爵家のご子息達です。向こうにいるのはその家の執事と護衛です」

 「へえー! 珍しいですね、こんな小さな村に大貴族が揃っているは、……でも僕には、関係ありません」

 そう言い終わるとソティアスは、”ウィンド”を唱えて5人の男女を吹っ飛ばした。

 「! ソティなんで事を!」

 「大丈夫ですよ! 殺傷能力のない風で吹っ飛ばしただけですから」

 「そういう問題ではありません! ……ほら、護衛が来た!」

 10人の執事や護衛達が慌てで走って来た。

 「貴様らー何のつもりだぁー」

 「……いやー凄い風でしたね! 人があんなに吹っ飛ぶなんで」

 「誤魔化してんじゃねぇー」

 「此方は、公爵様、侯爵様のご子息だぞ!」

 「ならこっちは、ラピス王女殿下様だぞ!」

 ラピスの顔を見て一瞬怯んだが気を取り直して

 「それがどうした! 俺達は、主人と陛下の命令しか聞かない王女殿下と言えとも陛下には逆らえまい」

 「……」

 「……俺の主は陛下じゃないから関係ない!」

 護衛の5人は、剣を抜きソティアスに向けた。

 「謝罪するなら今のうちだぞ……」

 「謝罪したらどうなるんでしょ?」

 「謝罪すれば、楽に首を刎ねてやる! 謝罪がないなら拷問の上首を刎ねお前の親族も皆殺しだ!」

 「お前が決める権限があるのか?」

 「俺にはないが主にはある」

 「謝罪は……ない」

 言った瞬間にソティアスに向かって襲い掛かって来た。

 ソティアスの手には、いつの間にが刀が握られており護衛達の剣を避けながら全て首を狙った。

 「ソティ君、なにも殺さなくっても……」

 「ミール姉様……1人も殺してないですよ」

 「えっ!?」

 ソティアスの刀を見ると鞘を付けたままだった。

 ご子息達と執事達は、一瞬で、護衛達がやられたのを見て驚いでいたがその中の1人の執事が代表として話をしてきた。

 「ラピス王女殿下! 此れは一体どういうつもりですか!?」

 「私は……」

 「王女殿下は、関係ないですよ!」

 ソティアスが、怒気を含んでそう言うと執事は、怯んだ。

 「俺は、シルバー・ペルソーナ、あなたは?」

 「……私は、オスマール伯爵家の執事ケトムと申します」

 ソティアスは、話の主導権を握りさらに話を進めた。

 「何故この子を5人で暴行を?」

 「この獣人は、オスマール伯爵家の奴隷です」

 「奴隷なら何をやってもいいと思っているんですか? 奴隷にも人権があるんですよ!」

 「難民の奴隷に人権は無い!」

 「ならば聞きますが、難民を無理やり奴隷にしていい法はあると思いますか?」

 「奴隷にしてはいけない法も無いですよ」

 「たしかに、難民でも奴隷にする場合は、本人又は、親族が認めない限り奴隷にしてはいけない事になっているはずです」

 「……その辺の事は……私には、わかりかねます」

 「此方で調べましょうか? 調べた結果によって闇奴隷商人にこの子を売った人、買った伯爵家の当主も罪に問われることになりますがよろしいですね? この法は、国、大陸は関係なく世界の法の一つなのは知っていますよね? 王侯貴族だろうが関係なく首を刎ねられることになります」

 「其処まで言ううのであれば、調べれはよろしいでしょう……」

 「その反応からすれば、その奴隷商人は、この国にはもう居ない様ですね」

 「……」

 「安心してはいけませんよ! 売った国と勝った国が一緒なら少し調べればわかると思いますし……なんならその奴隷商人を探して連れてきましょうか?」

 「探すなんで無理でしょう?」

 「無理だと思います? 出来ますよ! 私の傭兵団は情報収集に関しては敵はいません」

 「冗談もそこまで行くと笑えませんよ」

 「言い忘れていましたが……闇奴隷商人の数人は常に監視しているんですよ」

 「なっ!? ……嘘ですよね? そんな事出来る訳がない!」

 「嘘だと思いますか? なんなら此処に連れて着ましょうか? 俺は転移魔術が使えるから一瞬で連れて来れますよ? その中にいた場合は……分かりますよね?」

 2人のやり取りを全員が固唾をのんで眺めていた。

 「闇商人から買った奴隷であった場合ですがそこのご子息はもちろん一緒になって殴り蹴りしていた友達とそれを見ていて止めようとしていなかった護衛と執事のあなた方も首を刎ねられますのでお覚悟を」

 「「「「「えっ!?」」」」」

 ソティアスの言葉に公爵、侯爵の子息、護衛。執事の15人の顔から血の気が引き青白くなってきた。

 「……か、仮に……そうだったとして……誰が俺達を罰するんだ!?」

 「知らない人が多いみたいですね! ギルトです。主に処罰するのは、冒険者ギルトです」

 「ギルトが何故?」

 「ギルトって……なぜギルトが」

 「ギルトは、国王であっても関与できない事は知っていますか?」

 「……ああ」

 「この世界は、神聖帝国による統一国家なんですよ! 神聖帝国による全ての大陸の管理が難しいので、それぞれの国に王を置いているだけなんですよ忘れている人が多いですけど……しかし全てを国と国王にまかせると危険なのでギルトを置き管理しています。つまりギルト上層部は、神聖帝国の役人なんです。そう言えば、役人に賄賂を贈ろうとして処刑された国王もいたみたいです」

 「「「「「……」」」」」

 「賄賂を贈ろうとしましたが……この子どうしますか?」

 「お、お任せします……」

 「ならば、その子を置いてさっさといって下さい」

 「「「「「はい!」」」」」

 ソティアスが睨むと走って離れていった。

 離れていったのを確認してからソティアスは、獣人族の女の子に近づくと頭を抑えて震えていた。

 「ソティ、怯えているよ!」

 「あんな酷い目に遭わされているんですから人が怖いのでしょう」

 女の子の傍まで来ると震えが酷くなったがソティアスが優しく手を握り「もう大丈夫」と声を掛けると震えは止まったが泣きだしてしまった。

 「ソティ! その子の怪我の具合はどうなの?」

 「数本骨が折れていて内出血も酷いがこれは、治癒で治りますが傷が化膿しています。何日も前から暴力を受けて手当てをされていなかったのでしょう。これも治りますが数日高熱が出ると思います」

 「命に別条が無くて良かったね!」

 ラピスが話している最中にソティアスは女の子の目の前で手を左右に振っていても反応していない事に気が付いた。

 「問題は……おそらくこの子、眼が見えていません」

 「……でも、ソティ君が自分の眼を治した魔術で治るんでしょう?」

 ミールが言った言葉にソティアスは、首を振った。

 「……僕のとは、状況が違います。僕は、攻撃を受けて失明しましたがこの子は、直接目に損傷はありません……原因は、栄養不足、出血多量によるショック等の体内の問題ですので、僕の使える魔術では治らないです。治るが治らないがは運です」

 「そんな!」

 「……家に戻りましょう」

 そう言ってから家に転移した。

 

 家に転移したソティアスは、女の子をベッドに寝かせてから”上級治癒ヴェールフヒール”を唱えた。唱えると女の子は暖かさの為が眠りに落ちてしまった。

 「! ソティ君、”上級治癒ヴェールフヒール”を使えるの?」

 「ええ、眼を治す為に聖魔術ばかり覚えてきましたから」

 ソティアスとミールが話している横で、ラピスがソティアスを睨んでいた。

 「どうしたの? ラピス!」

 「……ソティって、簡単に女の子をお姫様抱っこをするよね?」

 「怪我人を運ぶんだから仕方がないでしょ!」

 「私は、ソティにお姫様抱っこしてもらった事無い!」

 「何言ってるの? 一緒にいた時は、6,7才だったし、5年ぶりに会ってやる場面なんでなかったでしょ!」

 ラピスの頬が膨らんでしまったのを見てミールに耳打ちをして聞いてみた。

 「ミール姉様! どうしてラピスは怒っているんですか?」

 「……ソティ君……他の女の子ばかりお姫様抱っこしているから怒っているのよ! ラピスもして貰いたいのよ!」

 「……怪我もしていないのに?」

 「……一回でいいからしてあげなさい」

 ミールの言葉にしぶしぶ頷きラピスの前まで来るといきなりお姫様抱っこをした。

 「……ソティ!」

 顔を真っ赤にして嬉しそうにしているラピスを見てエストが羨ましそうに見ていたので、ラピスを下ろしエストをお姫様抱っこをした。

 「……」

 エストは、声にならないくらい驚いた。

 「ソティ君! エストまでしないでいいのよ!」

 「えっ!」

 4人が騒いだ所為で、寝ていた獣人族の女の子が起きてしまった。

 「んー!」

 「あっ! ごめん五月蝿かったかい?」

 「ううん……楽しそうな声が聞えたから……」

 「まず、自己紹介をするね……僕は、ソティアス、君の名前は?」

 「私は、イシス……です」

 「イシス! ……イシス? ……」

 ソティアスは、イシスの名前を聞いて心の底から懐かしい気持ちになり目から涙が流れてきた。

 その光景を見たミールがソティアスに声を掛けた。

 「どうしたの? ソティ君、涙を流して……」

 「えっ!? ……分かりま……せん! なぜが……イシスの名前を聞いたら……懐かしいような……悲しいような……気持ちが……溢れて……きて……自然に涙が……聞いた事の無い……名前なのに……どうしてなのが……わかりません……」

 「ソティ君! ソティ君……大丈夫、大丈夫だから……泣かないで、大丈夫だから」

 ソティが本気で泣き始めたので、ミールはソティアスに抱き付いた。ソティアスは、ミールの胸の中で暫く泣き続けた。その光景を見ていたラピスとエストがうろうろ慌てでどうしていいが分からずに見ているだけだった。

 

 「……落ち着いた?」

 「はい……すいません……ミール姉様……」


 「……私……ソティがあんなに泣くの初めて見た。母さんの時は、悲しんでいたけど泣いてはいなかったから」

 「そうなんですか!」

 「二人ともそれ以上言わないの!」

 「「はい!」」

 ミールの迫力ある声に驚き反射的に返事をしていた。


 落ち着きを取り戻したソティアスにミールが声を掛けた。

 「ソティ君、もう大丈夫?」

 「はい」

 「何があったの? ソティ君が泣くなんで、赤ちゃんの時だって泣いた事無いのに……」

 「……僕にもわかりません、イシスと聞いた途端に心の底から懐かしいさ寂しさが込み上げてきて、気が付いたら涙が止まらなくなってしまって……すいませんミール姉様」 

 「いいのよ! わたしは、ソティ君のお姉ちゃんなんだから」

 「はい……」

 ソティアスは照れていたがミールの後ろにいるラピスがいい所をミールに持っていかれたのを落ち込んでいたのをエストが慰めていた。

 「ラピス仕方がないわよ! ああいう場面では、ミール姉さんには勝てないわよ!」

 「う、うん……」

 

 ソティアスは、深呼吸してからイシスと名乗った女の子に向き合った。

 「ごめんね、訳分らなくしてしまって」

 「いいえ、私が悪いのでしょうか?」

 「いや……悪いのは、僕だよ……君の名前を聞いて泣いてしまったんだから……だからイシスが気にする事じゃないからね」

 「……はい」

 「……イシス、君に質問したいけど大丈夫?」

 「はい」

 「モンテイスベル大陸から逃げてきたんだよね? 両親と一緒に?」

 「お父さんとお母さんと一緒にモンテイスベル大陸の狼人族の村から村の人達と逃げてきました……」

 「両親と村の人達はこの村に居るのかい?」

 「……お父さんと村の大人達は、、私を……狼人族の子供達を奴隷狩りから守る為に戦って……」

 「……殺されたのかい?」

 イシスは、首を振った。

 「わからないです……私は、戦っている最中に捕まってしまった……」

 イシスが話し終わる直前で部屋にルチルが飛び込んできた。

 「ソティ! ここに居たのね!」

 「どうしたの? 難民たちの移動は終わった?」

 「東と西の移動はもう少しで終わるけど……北に居る人達が移動しないの」

 「何故?」

 「重傷者が多く今移動させると命に係わるから……移動する事は出来ない、と」

 「! 北って、狼人族か?」 

 「よくわかったわね!?」

 「僕がいく、ルチル一緒に……」

 「了解」

 「姉様達は、イシスをお願いします。イシスは、大人しく寝ていてください!」

 「「「はい」」」

 「はい」

 ソティアスは、ルチルを連れて、村の北の門へ転移した。

 ソティアスのすっきりしたような顔を見てルチルが何があったのが気になり聞いた。

 「ソティなにがあった? 私が知っているソティの中で一番すっきりした顔をしているよ」

 「うん、まあ……いろいろあって……頭の中がすっきりした」

 「そう……後でラピスさん達に聞いてみよっと!」

 「…………重傷人はどこ?」

 「あっちの大きめのテントの中に……かなり酷いよ! 生きているのが不思議なくらいに……」

 ルチルがそう言いながら顔を暗くし俯いてしまった。

 「そんなに酷いのか?」

 「うん、此処まで酷いの……初めてみた」

 「急ごう!」

 

 テントの前に狼人族の若者二人が立っていたがルチルの顔を見て話し掛けてきた。

 「ルチルさん……何度来ても移動はできません」

 「怪我が治れは、移動できるでしょう! 治癒魔術を使える者を連れてきたわ」

 「! ありがとうございます……しかし、”治癒ヒール”や”中級治癒ハイヒール”で治るような物ではないのです」

 「”上級治癒ヴェールフヒール”を使える者を連れて来たのよ! 早く中に入れなさい」

 「!? えっ!? ”上級治癒ヴェールフヒール”を? あ、いえ! お、お願いします」

 ソティアスがテントの中に入ると今までに嗅いだことのない腐臭の匂いが襲ってきた。

 「……ここまで、酷いとは思わなかった……この状態で生きているんですか?」

 「は、はい……みんな、連れでいかれた子供達の事だけを思い……気持ちだけで生きています。意識は、ありません。治癒を……お願いします」

 「……わかった」

 ソティアスは、やっとの思いで返事をすると目の前で横になっている男から治していくことにした。

 「”上級治癒ヴェールフヒール”」を唱えると周囲の人が驚くほど目に見えて良くなっていった。暫くすると重傷だった人が完全に治った。それを見ていた人達から大歓声が起き……その大歓声に驚いた人達がテントに集まってきた。

 「な、何があった?」

 「……治ったんです。重傷だった人が治ったんです」

 「!?」

 周囲は大歓声に包まれていたがソティアスは、冷静に

 「お静かに! 治ったのは人だけですよ! 喜ぶなら全員治ってからにして下さい!」

 「「「「「! すいません」」」」」

 そう言ってから次々と治していき……寝かされていた10人の男達が全員治り、治るのを見届けていた人達から、まだ大歓声が起きた。

 「「「「「ありがとうございます! ありがとうございます」」」」」

 「……まだ、寝ているから静かにした方がいいのでは?」

 忠告したが遅かった。

 「「「「「うーん!?」」」」」

 「ここは!?」

 「「「「「おおおおおおぉぉぉおおおおぉおお」」」」」

 「「「「「わあああぁああぁああああぁあああ」」」」」

 「お前達は、意識が無く重傷だったが此方の人が治して下さったのだ!」

 「そうだ! 何度お礼を言っても足りないくらいだ!」

 「……わかりましたから……此方の話を聞いてください」

 ソティアスの言葉に頷き話を聞く事にした。

 「まず、この中にイシスと言う女の子を両親は居ますか?」

 聞くと最初に治した男と傍にいた女の人が「「自分達の娘です!」」と名乗り出た。

 「そうですが良かった。イシスは、私が保護しています」

 「「! ほんとうですか?」」

 「ええ、でも事情があって今すぐ合わせる事が出来ませんが安心して下さい……早くて明日には合わせる事が出来るとおもいます」

 「イシスは、大丈夫なんですか? 元気ですか?」

 「……かなり酷い仕打ちを受けていましたが僕が治しましたから今は、食事をして睡眠をとっている最中です」

 「ありがとうございます。親子共に命を救って頂き有難うございます」

 お礼を言われる度にソティアスは、複雑な気分になった。

 「……喜ぶのはいいですが……お礼を言われる事では無いです」

 「!? 何故?」

 「元々、あなた方に酷い事をしたのは、この国の人達です。感謝ではなく恨まれていでもおかしくはないですよ!」

 「……確かにこの国の人達に酷い事されましたが……助けてくれたのもこの国の人です」

 「……ありがとうございます…………申し訳ありませんが此処から本題に入らせて頂いてもよろしいですか?」

 「!? はい!」

 「聞いている方もいらっしゃると思いますが壁を回って南門まで移動をお願いします」

 「我々にここから出で行けと?」

 「誤解の無いようにお願いします。出でいけ、ではなく……移動して下さいです」

 「……理由を聞いでもよろしいですか?」

 「今は言えません! ここでは、僕を僕の仲間がやろうとしている事を信じて下さいとしか言えません」

 「……わかりました。命の恩人であるあなたの事を信じます。……みんなー移動しよう」

 「「「「「おおー」」」」」

 「ありがとう……ございます」

 狼人族全員が荷物は手に持てるだけにして南門に向って歩き始めた。

 

 「ルチル、焚き出しと護衛をおねがいね!」

 「わかったわ」

 ルチルは、返事をしてから狼人族の後ろを追い掛けていった。

 ソティアスは、残っている人が居ないのを確認してから転移で家に飛んだ。


 家に戻るとラピスがイシスにご飯を食べさせている最中だった。

 「! ソティ君、おかえり」

 「ただいま」

 「どうなったの?」

 「無事に移動したよ!……かなり酷かったよ……簡単に殺す事が出来たはずなのに苦しめる為に”上級治癒ヴェールフヒール”でしか治せないようにしていました……運よく全員治す事が出来ました」

 イシスが不安な顔でソティアスの話を聞いていたのが分り安心させる為に話し掛けた。

 「イシス安心していいよ! お父さんもお母さんも無事だから……明日には、会えると思うから」

 「! ありがとうございます。ありがとうございます」

 「うん、お礼は、それくらいにして、ご飯を食べて寝なさい。体力までは魔術でも回復できないからね!」

 「はい!」


 ソティアスは、ミールに小さな声で、イシスの眼の事をきいた。

 「イシスの眼はどうでしたか?」

 ミールは、首を振った。

 「やっぱり駄目ですが……回復すればいいですけど……」

 「……」

 ご飯を食べ終わったイシスが眠りについたので起こさないように静かに部屋を出で1階に移動した。

 メリスも1階に降りてきたので、5人で話をしているとグランツから夕食への招待状が届いた。


 招待状が届いたので出かける準備を始めた。

 準備を終わらせて下に降りてもメリスしかいなかったので、メリスと話を始め1時間程してやっと3人がドレスで降りてきた。

 パーティーではなく食事会なので、3人共派手なドレスではなく普通ワンピースタイプのドレス姿だった。

 「どお? ソティ?」

 「似合っていますよ! ラピス、ミール姉様、エスト……」

 「「「!」」」

 「? どうかしましたか?」

 「いえ、ソティが素直に褒めるとは思わなかったので、びっくりしました」

 「失礼ですね! 僕だって褒める時は褒めますよ」

 「「「くすくす」」」

 「クスッ! ごめんなさい」

 「いきますよ!」 

 「「「はーい」」」

 「メリス、2階で寝ているイシスの事頼みますね!」

 「はい、お任せ下さい」

 

 4人は、転移で元族長邸の門の前に移動し門番に招待状を見せた。

 最後までお読み頂き有難う御座います。

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