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獣は慙愧に吠える  作者: 蛇丸


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10/11

10. 課題(1)

 一週間が経過した。あれからアレックスの指示通り持てる全てを使い挑んだ。祝福の力、剣技、体術、それこそ砂まで使った。しかし、その全てを往なし、まともに剣を当てることは出来なかった。

 他の二人はと言うと。

「っ…父さん、流石に痛いのだけど。ダニロも今日は限界だよ」

「見たいだね。二人とも体の使い方は良くなってきた。後は魔力の使い方だね」

「…あ、ありがとございま…した」

片方は息絶え絶え、もう一方は体力よりも打撲の方が問題だろう。

「マルティナさんは今日もまだ続けますか」

「…はい」

この数日わかったことがある。まずは単純な経験の差。前線を離れたからといってその差は変わらない。確実に彼はこちらの意図を読んで対応してくる。それから分かることとして彼は人との戦いに非常に慣れている。獣騎士は基本的には人の相手をすることはない。あったとすると戦争、決闘、そして同じ獣騎士または元獣騎士の討伐だろう。ここ数十年近隣で大きな戦争は記録になかった。決闘等は滅多になく、また多くの場合祝福は用いない戦いとなる。となれば恐らくは…。総計だと考えたい。

次に彼は素の身体能力のみでこちらを指導している。魔力も祝福も使わずこちらを往なしている。魔力で強化したこちらの筋力に素で追い付き対応してくる。瞬間的に上回る筋力を出力しても技でもって流される。

「真剣でやってみませんか。もちろん傷つけないようにします」

「・・・わかりました。であればそちらも本来の戦い方でお願いします。こちらも全力でやりにくいので」

「わかりました。では少々お待ちください。持ってきますので」


しばらくして彼は短槍と長剣を携えてやってきた。対してこちらは小盾と一般的に支給されている濶剣。圧倒的に間合いの差がある。となればこちらの利点である小回りを生かすべきであろう。立ち合いが始まると同時に懐へ入り、

槍が轟音とともに空を切る。そして、そのままこちらへと払らわれ、姿勢を崩してしまう。何とか盾で防ぐことができたが、剣の柄による追撃がくる。そのまま盾の上から殴り倒される。

「っ、風よ!」

土を巻き上げ、視界を遮りつつ体制を立て直す。再度うちに入るため低く構えなおし砂ぼこりの先を注視する。やはりというべきだろうか。こちらが立て直すよりも早くこちらに向けて槍が投擲される。槍はそのまま盾へと命中し、半身を弾き飛ばされ体正面が開く形になる。そこへ光が走る。私ののど元には刃が何時引かれてもおかしくない体制で挟み込まれる。

「ここまでですね。・・・どういった考えで参加されているかはあえては聞きませんが、今後も続けますか」

「・・・可能であれば」



「三人とも少し話がある」

訓練中にまとめて扱われることが増えたような気がする。私自身騎士となり1年目ということもあり確かに大した力量はなかったとはいえ、如何ともし難い気持ちになる。しかし、二人の成長ぶりを見るに私が胡坐をかくほどの余裕もないのは明白ではあるだろう。

ダニロはとにかくがむしゃらだった。魔力を用いた肉体の強化の瞬発力の攻撃で無理やり相手の隙を作ることを得意としているようだ。実際その強化度合いのようなものは私たちの中で最も大きく見える。技らしい技はないが、手合わせするわかるがと恐ろしいものがある。手練れのような冷静な技が飛んでくるのではなくただ単純な力強い攻撃が四方どこからか絶え間なく飛んでくる。気を抜けば叩きつけられることになるだろう。

対してアレッシオは努めて冷静に攻め立ててくる。父親譲りの身体能力でこちらを攻めつつ、立ち位置などでこちらの動きを制限してくる。一番彼が教えに忠実な立ち回りをしているだろう。息をつける分こちらのほうが対処しやすく思えるが、実際には息をつこうとしたとたんに一手入れてくるので非常にやりにくく、底意地の悪さのようなものを感じる時がある。

「マルティナ殿は聞いておられることかと思うが、近隣で魔物が確認された」

聞いていない。

「先日ピエトロ殿とお話をし、私たちのみで対処を行うこととなった。結局獣騎士が戦わねばならないのは人ではない。魔物だ。だからこうやって少しずつ弱い魔物から始めていくのがいい」

何一つ聞いていなかった。

「確認されたのは如何なる魔物でしょうか」

「おや、ピエトロ殿から聞いておられなかったのですか。虫、蝗が大型化したものです。幸い集団化はしておらず、点在している状態です。ピエトロ殿の意図も把握しきれていませんので少しお話ししましょう」

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