11. 苦悩
「何、我輩も後続を育てねばと思っていましてな。情報収集から作戦立案、実行、陣頭指揮。彼女には全てこなせるようになっていただきたい」
木造の部屋はそれなりに広さを持ち、部屋の中に声が響いて聞こえた。部屋の壁には私たちの影がわずかな透き間風に揺らいでいた。
「かといってあまりよい方法ではありませんよ。こう言ったことの情報は早ければ早い程良いものですから」
「そうですな。しかし、本当は自ら行動して欲しかった。青いながらも腕も良く、覚えもよい、周囲も見れている。成長すれば良い騎士になれる、そう考えているのだが、難しいものであるな」
気のせいだろうか。唯でさえ大きい二人の影が普段のそれより大きく思える。
「・・・申し訳ありません。本来の任を疎かにするとは」
そうだ、本来の任、今回の目的は冬季の間の魔物に対する警戒と対応にある。ここ数日間、私はアレックス達とのことばかりにかまけていた。
「何構わんよ。今回に限ってはわざと言わなかった我輩に責がある。それに貴女がこちらを疎かになるように半ば仕向けたも同然であるからな」
ピエトロの顔はこちらを攻めるでもなく面白そうに歪んでいた。
「実績は知らぬとはいえ英雄と呼ばれたものとの手合わせだ。そちらに夢中にならぬとあれば戦いに少しでも華を視るものとしては失格であろう」
どうやら彼はそれほど私を詰めるつもりはないようだ。
ピエトロは少し机へと身を乗り出しながら、アレックスへと顔を向ける。
「では本題だが、今回討伐はマルティナ、アレッシオ、ダニロを中心として行っていただきたい」
アレックスの額にはそれまでよりも濃く影が張り付いた。
「私たちはどうするつもりですか」
「監督役くらいの気持ちで後ろから見守るのがよろしいかと。早速だ。マルティナ殿よ、この内容を元におおよその各人の行動を計画してきなさい。期日は明後日までとしようか」
彼は変わり者だ。身分に隔てなく才があると思った者を重用する。彼のもとでは誰もが駒だ。最大限まで生かして、活かして。結果をだす。分かりやすく言えば相手にできる最大限を何時も要求してくる。無茶はさせないが、全力でやれと粉をかけてくる。これもその一貫だろう。彼にこのような形で目をかけてもらえるのはありがたい。しかし同時に少し肩が重くなる。正直彼とここに来るのもあまり気が進まなかった。元の予定では彼ではなく、同期のアントニオが来る予定であった。それが突然命令がくだされ。アントニオは待機組の一人となった。確かにアレックスの勧誘、並びにアレッシオ君を連れていくにあたって、誰かそれ相応の立場の方は必要だっただろう。しかしながら、補佐官殿でも問題はなかったはずだ。
私は正直、彼が少し苦手であった。尊敬はしている。間違いなく、心から。しかし、それでも目をかけて下さっていることは分かっていても・・・苦手であることには変わりはなかった。




