第94話 異郷の小人は文明人?
いつもお読みいただき有難うございます。ちょっとした合間に書いた余談ですが、、。
天明さんが蹴散らしたゴブリン?を見て、
私は少し疑問に思ったことを口にした。
「この道を行き交う存在は、高度に進化してるんですよね。
何で、今更こんな武器を使ってるんですか?」
ゴブリン?とか小人などモンスターなイメージが強かったため
今までは不思議に思わなかったことが一気に浮かび上がった。
天使なラファエルさん達は、高度な文明を持った異星人だった。
遥か昔に、宇宙船で地球に来たらしい。
そんな彼らは、この道を進むことが出来ない。
それに思えば、私の半身たる獲物も太刀だし、
アテナさんも特殊ではあるが、槍や盾で武装している。
ファンタジーならこれでいいのだが、
生憎、地球の文明ですら今は飛び道具の時代である。
車などの乗り物はこの道では動かないそうだが、
個人の武装となれば、話は変わってくるのではないか?
まあ日本だから、今まで銃などの火器類を思いつかなかった。
しかし、良く考えたらおかしいのだ。
地球文明を遥かに凌ぐ天使たちもだが、何で銃火器を使っていないのか?
蛇と相対した時もついさっきも、
ラファエルさん達は槍とかの近接武器を使っていた。
何ならスサノオさんも太刀だった。
そして、ビーム類を撃ってくるあの尖兵はこの道を追ってこれない。
一体何故なのか?
そんな疑問が噴出してきた。
するとアテナさんが、
「うん?
ああ、七果は気づいていなかったのか?」
そう言い、彼女はゴブリンと呼ばれた小人が放ってきた矢の一つを、
その手で拾った。
「これを見るとわかるぞ。」
うん?
その矢をアテナさんから受け取り、良く見ると、
「あれ?
これ、矢尻が鉄とかじゃない?」
観察してみるとその矢の先端にある矢尻は見たことのない材質だった。
驚いている私に天明さんが答える。
「七果さん、ここで遭遇する相手に銃なんて効きませんよぉ。
ここは物理法則すら異なる様々な世界を跨ぐ異空間なんです。
見た目は只の山道に見えてるでしょうが、
それは出身世界の心象風景が投影されているだけです。
地球科学が作った銃は原理的に火薬の燃焼が必要です。
ですが、ここではそれすら適応されません。」
「事実、その矢は地球に持っていけば、大騒ぎになる代物ですよ。
ゴブリンとか言われて、
この道では適当にあしらわれてしまっていますが、
彼らは地球や天使を超える超高度文明の主です。
彼らの相当な人数がこの道を行き交うことが出来るのですよぉ。
地球じゃ神と呼ばれたり、希代の英雄だったりしか通れないこの道を
彼らは集団で行き交っています。
凄いのですよぉ。」
「ただ、突出して強くないのでここでは雑魚扱いされていますが。」
その天明さんの言葉を引き継いで、アテナさんも、
「はあ、七果、その身体になって大抵のことは怖くないだろう?
なのに、その矢には危険を感じる、そうじゃないか?」
「つまり、その矢には七果を傷つけられる力があるということだ。
私達の得物が何故、剣などの前時代的な武装なのか?
こういう空間は少し進むだけで世界を跨いでしまうから、
身体から離れると様々な影響を受けて効果が変質してしまう。
私達の意思の力により武装の類は、
その変化を乗り越え相手に届くのだ。」
と言ってくる。
「分かり易く言うと、SFのワープしている空間がここなんですよぉ。
なので、飛び道具を放っても、
本来なら矢の類は他の空間とかに堕ちていってしまうのです。」
「私達はゴブリンの群れが弓や剣といった原始的な武器で、
獲物を狩っているように見えてしまいます。」
「ですが、地球の科学と照らし合わせると、
超光速航行中に複数の敵と交戦し、ミサイル的な何かを発射。
敵性体を撃墜している感じになります。
非常に高度な事象なんですよぉ、本当は!」
「そんな武装を彼らは標準的な装備として持っています。
ただ、この道の特性上、どんなに強力な武装であっても、
距離があればあるほど、この場の法則による変質は避けられません。
残念ですが、
その武器が故郷で恒星を破壊できるようなものだったとしても、
この道では、大した威力にはならないんです。
様々な法則が入り混じって、本来の効果が発揮されないんですよぉ。
なので、この道を行く人種族の武器は剣などの近接武器になります。」
「七果さんも幽霊に拳銃が効くとは思えないでしょう?」
ううむ、凄い例えが天明さんの口から飛び出てきた。
そこにアテナさんも同意する。
「あのゴブリンの武器はそんな中でも一定の効果を発揮する。
飛び道具でもな。
私達の武器は例外なくアーティファクトだぞ。
地球では神々が持つ武装なんだ。
そんな武装は量産自体が不可能に近い。
飛び道具のアーティファクトはあまりない状況なんだ。
それを奴らは量産している。
ただ、威力自体に難があるだけなんだ。」
そんな言葉に、あのゴブリンたちが、実はトップクラスの異星人。
その思いがけない可能性に、私は驚愕するしかなかった。




