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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第6章 翼持つ舟からの招待状
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第92話 朝霧の大決戦

会談を行っていた古の神社を取り囲むように、

降臨した召使いの尖兵達。


その姿は光を纏い、しかし神々の御使いというには異形である。


その数は僅かに5体。


5メートルと巨人クラスの巨躯だが、

その身体が不可視であり、どの程度の力があるのか読めない。


しかし、その姿から発せられる圧は、

タイタンを名乗った巨人の戦士たちよりも小さい。


外を見張っていたラファエルさんが、


「侮るな、今まで会った巨人達とは実力が違うぞ!

 ラファエル行け!

 この場は、俺が食い止める。」


と私達に言い放つ。


「姉上、天使殿と先に行ってください。

 私もこの場に残ります。」


スサノオさんも迎撃に参加するようだ。


そして、私も覚悟を決めた。


「私も残ります!」


そんな言葉が自然に口から出る。


「ふう、七果が何時になく積極的だな。

 そうだな、世話になったラファエル殿を置いていくほど、

 私も鈍っていないぞ。

 あの召使いの兵だというなら、いつかの借りを返させてもらうぞ。」


「ううん、面倒くさそうですぅ。

 大したことなさそうなのに、異様に光ってますし。

 はあ、早く片付けてデザートを買いに行きましょう!」


アテナさんと天明さんも残って迎撃に参加するようだ。


”反乱勢力の戦力を解析”

”敵勢力の掃討戦に支障なし”

”任務遂行を厳命”

”行動開始”


一連のメッセージが頭の中に届いた。


天照を名乗る女性と姉妹?、そしてスーツ姿のラファエルさんが、

神社の奥へと入って行く。


この神社はそれほど広くはないが、なぜか、奥を見通せない。


そして、尖兵を迎え撃つため、各々が武装を抜き放つ。


この神社は本格的な山の中にあるわけではないが、

少し小高い場所に建っている。


神社の後ろは高い山になっており、

尖兵たちは石段部分を中心に扇形の陣形をとっている。


中央の尖兵は石段を進むだろうが、

周りの尖兵は木々の生い茂る急勾配を登ることになるだろう。


中央をスサノオさんが、右側2体をアテナさんと私、そして天明さん。

左側2体を残ったラファエルさんが受け持つ。


中央の尖兵は予想通り石段を登ってくるが、

他の尖兵は宙を浮遊して坂を進み始めた。


くそ、飛べるのか!

戦い方を考えていた私だったがこれは少し荷が重いかもと考えを改める。


私も天明さんも飛べるわけではない。


あの異郷の道で一度だけ飛行が可能になったが、

どうしたらあの技が使えるのか分からない。


そんな中、アテナさんが神秘的な衣装を纏い、宙を征く。

その手には稲妻を絡ませた槍を持ち、大きな盾を構える。


そして、ラファエルさんであろう天使が舞い上がるのを視界に捉えた。


それぞれの戦闘が始まった。


以前とは違い、3対の大きな翼を羽ばたかせ、

槍を構えて突撃するラファエルさん。


その姿はまさに神の御使いであり、

その威光は大天使と呼ばれるにふさわしい。


アテナさんは槍を振るい、その穂先からは稲妻が発せられている。


空で先に始まった戦いを観察する私と天明さん。


尖兵達はその手に持つ杖を振るい、迎撃している。


ただ、空中戦ということもあって、その反撃はアテナさん達に届かない。


アテナさんの槍をその身に受け、稲妻に襲われる尖兵だが、

どうやらその攻撃は効いていないらしい。


どういうことだ?

そんな疑問を持った私は、左翼側で戦うラファエルさんに目を向ける。

彼の側は同時に2体を相手にしている。


うん?

ラファエルさんは大きな槍を構え、

尖兵の中心にある光球を狙って突撃している。


その攻撃を明らかに警戒しているらしい尖兵は杖を盾に使って防御する。


また、もう一体がラファエルさんを牽制するためか、

杖を振るっている。


どうやら、あの光球が弱点ということでいいようだ。


「中央の光球です!」


と確信を得た私はアテナさんに知らせる。


そうこうしている内に、

石段を上がってきた尖兵とスサノオさんの戦闘が始まった。


凄まじい剣技が放たれるが、尖兵のほうは一貫して光球を防御している。

そのローブや装具にも攻撃が当たっているが、何故か破壊されていない。


そして、私の元にも宙を浮いて尖兵が到達した。


飛べない私は足の装具を攻撃する。


その身長が5メートルもある巨人、

弱点と思われる光球を攻撃しようとすると、

どうしても懐深くまで接近しないといけない。


その為にも、相手の武器である杖を弾き隙を作りたい。


幾度かの斬撃を放つが、尖兵は手に持つ杖で全て受け止める。


戦況は膠着状態だ。


うん、おかしい。

以前、私達を始末しようと送ってきた刺客はこのような者ではなかった。

攻撃的で隙が少なく、傷を受けても再生すら行った。


今目の前にいるこの巨人があの召使いの主力なら、

あまりにも手ごたえが無い。


確かにアテナさんは本来の武具を使っている感じだし、

私の方も短い間に戦闘に慣れてきている。


しかし、それでも違和感がぬぐえない。


そうしていると、神社奥の方で何かの力が解き放たれた。


戦闘中だが、相手は守勢である。

目を向ける余裕はある。


すると、全長数十メートルはある大きな翼持つ鳥が宙に浮かび上がってきた。

その翼の数は何と6対もある。


巨大な頭が3つあり、その胴体には大きな舟の姿がある。

SF的ではない木造らしき古代の舟。


あれは鳥なのか、舟なのか?

異星人の宇宙船というにはファンタジックであり、

神様が乗っていると言われればそうかと納得するデザインである。


その不可思議で、神秘的な姿に一瞬目を奪われていた私の頭に、

再び声が響いた。


”目標を確認”

”掃討戦に移行”

”全ての存在を抹消せよ”

”覚醒”


その言葉を聞いた瞬間、凄まじい圧を近くから感じた。

舟に目を囚われていた私は目の前にいる尖兵を見る。


尖兵の雰囲気は一変しており、

纏うローブの後ろには光を纏う大きな白い翼が広がった。


手に持つ杖から何らかの振動が発せられ、

辺りに強烈な圧を振りまかれている。


この場で戦う皆はその圧により、動きが阻害され始めた。


私は牽制に風鈴二閃を放とうとするが、

尖兵の放つ圧によるものか、術自体が発動しない。


「七果さん、引いて下さい!」


天明さんが珍しく大声で呼びかけてくる。


その声に私は彼女のほうへ大きく跳躍した。


その直後、激しく明滅しながら通り抜けていく閃光。


敷き詰められた古びた石畳が衝撃で破壊され石片が飛び散る。


何だこれは!


空で戦うアテナさんも閃光を盾で受け止め、

攻防の勢いは反転していた。


それぞれの戦いで一番厳しいのは、やはりラファエルさんだった。


ーーーーー


くそ、まだこいつら、こんな技を維持してやがる!


かつて、ラファエル達、天使の力を打ち破ったのが、

この尖兵の能力だった。


天使たちは人種として霊的に進化した存在だ。

その身は不老にまで届いている。


その上で科学と霊的現象の融合を果たした技術を持っていた。


その技術はまさに無限に等しいエネルギーを齎し、

物理的な世界で恒星間移動などというものを可能にした。


しかし、その技術の集大成とも言うべき彼らの船を堕としたのが、

この尖兵の大軍なのだ。


今だ弱点が発見できていないこの未知の能力。

あらゆる霊的エネルギーを分解、霧散させる場を構築するため、

天使たちの能力を著しく減じられた。


そして、その場の中でも尖兵の放つ閃光は威力を減じない。


何らかの秘密があるはずだが、

彼ら天使たちもこの尖兵と会うのは、船を堕とされた時以来だった。


ラファエルはその身を支える翼を羽ばたかせ、複雑な回避行動をとる。

彼を襲う閃光は2筋、間断なくその光がまき散らされる。


このままでは!!


歯噛みする彼の前をすり抜け、

相手にしていた尖兵の一体が空中に浮かぶ神秘的な舟に向かう。


ち、進ませるわけには、


しかし、その尖兵を止めようとした彼を再び襲う閃光。


くそ!!


ーーーーー


私が幾度目かの斬撃を放って後退する中、

ラファエルさん側から一体の尖兵が舟に向かって進んできた。


舟は少しずつ上昇し始めている。

しかし、浮遊する尖兵も少しずつ距離を詰めている。


尖兵の浮遊して進む速度は人が歩く程度だった。


故にラファエルさんは神社の前に出て空中で迎撃していたのだが、

この閃光による攻撃で防戦一方に追い込まれてしまった。


閃光の威力は見た目ほどではない。


と言っても直撃すれば、

ライフルで撃たれるくらいの被害を喰らうだろう。


そして、問題なのが尖兵の発する圧なのだ。


術の類を霧散させ、

この身を守っているだろう霊的防御を低下させる力。


今までも致命打を避けてきた私だったが、

今回のコレは真面に攻撃を喰らうのはまずいらしい。


いや、閃光を避けているが時々飛び散る破片とかを喰らう。


今までも吹っ飛ばされる経験をしたが、

今の私は元の身体と同じくらい脆くなっている可能性がある。


何せ、ちょっとした破片なのにかなり痛いのだ。


威力的には、異郷の道に出た小人の突進の方がよほどあるだろう。

なのにだ。


天明さんもかなり後退を強いられていた。


今、前線を支えているのは、

アテナさんと猛烈な攻撃を放ち続けるスサノオさんだった。


だが、そうもいっていられない状況だ。


舟を遂に捉えた尖兵が大きくその翼を広げた。

光が収束を開始している。


今、断続的に放たれている閃光と威力が違うようだ。


しかし、位置が悪い。

空中で更に私の反対側からの侵攻。


そして、私のところは目の前の尖兵で手一杯だ。

太刀の攻撃もこちらに目を向けさせるだけの効果しかないのだ。


そして、十分に蓄えられたであろうエネルギーは空を上昇する舟に向け、

解き放たれた。


尖兵からこれまでとは異なる眩い閃光が照射された。


舟目掛けて殺到する閃光は、

しかし、空間を割って現れた天照を名乗る女性によって食い止められた。


「わたしを舐めないで欲しいな!

 これでも太陽神を名乗っているんだよ。」


その言葉は伊達ではなく、

まだ途切れない閃光は空中にできた波紋のような壁に遮られている。


速度を上げて空を行く舟、3つある鳥の口から大きな鳴き声があがる。


その声と同時に、それまでより上昇速度は上がった。

遂に舟を襲っていた閃光が途切れる。



ーーーーー



「ふん、私達も引くとしよう。」


間断なく襲い来る他の尖兵達。


その中で中央正面を守っていたスサノオは、

舟が危機を脱したのを見て、本気を出すことにした。


今までは注意を自分に引き付けるため、少し加減していた。

この地で管理権限を持つ彼の力も伊達ではない。


太刀を最上段に構える彼。


「貴様らは私達の能力へ干渉できるようだが、

 果たしてどこまで通用するかな?」


ハアァ_ア_ァ___


気合を込め、急速に構えた太刀にエネルギーが収束していく。


「誠なる力を見せてやろう、奥義!!」


その言葉と共に、太刀から周囲に轟音が放たれる。


” 風鳴り_震え ”


周囲の轟音が再び太刀へと収束し、その瞬間、音が消える。


その剣閃は誰にも見切れず、

おそらく上段から振り下ろされたであろう太刀だったが、

確認した時にはもう片手で軽く振られている姿だけだった。


そして、それを受けたであろう尖兵は棒立ちであり、

その身はゆっくりと崩壊していく。


スサノオは大きな声を上げ、

新たなる同胞に神社奥への撤退を呼びかけた。


ーーーーー


天明さんと私は、後退を強いられていたが、

中央でスサノオさんが尖兵を撃破すると放たれていた圧が弱まった。


そこに、スサノオさんからの撤退指示が届く。


私は天明さんとアテナさんを見て、

神社奥へと引くことにした。


アテナさんは、撤退する前に一際強力な稲妻を尖兵に向けた。


その一撃を受けた尖兵は立て続けに放っていた閃光を途切らせた。


天明さんが前を走る。

私はその後ろを走りながら、追ってくるであろう尖兵を確認する。


空中から戻ってきたアテナさんが、私が足止めしていた尖兵共々、

纏めて攻撃を捌いている。


そして、しばらくするとアテナさんは盾を構え、

二体に対し盾から何かの光が放たれる。


光を受けた二体は完全に動きを止め、その身体は砂のように崩れていった。


アテナさんが俊足を見せて、私達の後方へと迫る。


しかし、おかしいな。

この神社なんでこんなに広いんだ?


ラファエルさんが空を飛びながらこちらへと向かっており、

スサノオさんは殿を務めている。


見れば、10体以上の尖兵が宙に現れ、

この神社に向かってきている。


スサノオさんがどうやったのか、

舟を攻撃した尖兵を境内から弾き飛ばした。


そして、風のように私達の方へ向かってくる。


「先へ!

 この場所は異郷への道だ。

 あの者たちもここを追ってはこれぬ。」


なるほど、道理で広いはずだ。

突然出現して発見されたのも異郷への道にあったからか。


そう言えば、ロキ達はこの場所に都を築いたって言ってたっけ。


すると、このまま岐阜なりの入口に辿り着けばいいのか。

はあ、今回も何とかなったみたいだ。



いつもお読みいただき、本当に有難うございます。今回で第6章終了です。

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