第8話 第2回研修2日目 現地調査その1
ピピピピピー
なんだ、ここは?
意識が浮上し、目が覚めてくるに従って、現状を思い出し始めた。
そう言えば、昨日、というか今日未明か?
研修という名の現地調査に来て
深夜遅く、開いていたビジネスホテルに泊まったのだったな。
非常に運が良かった、、
カーナビよりスマホのほうが、やはり便利だな。
クランベリーさんのカーナビは、なぜかワールドワイドだった。
どういう訳か、道のないところをアシストしてきたりしたからな。
そこに道はない!と何度も指摘したものだ。
その度に苦笑いするクランベリーさんと、
面白そうに、こちらの反応を観察する天明さんが印象的だったが。
ふん、暗い中、
崖から落ちそうになるのを止めた私を何故に笑うのか!
そうやって道なき道を踏み越えて、
当該市に辿り着いた私達は、
ビジネスホテルで3室を3日分予約。
フロントでコンビニの位置を聞き出して、
カップラーメンを買って食べたのだった。
さて、今日はどうなるのか?
しかし、変な時間にカップ麺食べたからな、
胃もたれしてる、朝食はいらないか。
さて、歯を磨き、顔を洗った私は、相応に身嗜みを整える。
うむ、ぶっちゃけるが、同行者が映える見た目だと、
普通のおっさんである私が、非常に目立つのだ!
なんでなんだ。
私は今からクマの元に連れていかれる被害者なのだが!
気持ちを入れ替えて、現実的に考えよう。
今日はクマの出る山道に行くことになるはずだ。
一応、地元の市役所にでも行くべきか?
いや、無理か、今の時期、
クマのために遭難者を出したりしたら
問題になるし、あくまで私達はその場所にいかないといけない。
止められても行くことに変わりはないのだから、
迷惑は掛けられんな!
「2人に相談するか。」
と思わず呟く私だったが、
どんどんどんっ というノックの音にまたもや悩まされる。
頭痛がするが、仕方ない。
「おはようございます、天明さん」
とドアを開けると、
「おはようございます、七福さん」
「おはようございます、七福殿」
二人の感じの違う美人さんが、朝の挨拶を返してきた。
二人とも身嗜みはしっかり整えている。
うん?なぜか天明さんのほうは、
リクルートスーツに皺が入っているようだが。
「あっクランベリーさんも、おはようございます。」
余計な突っ込みはせず、もう一人の同行者にも挨拶を返す。
「皆さん、用意はいいようですかぁ
今日はまず、昼食を用意していきましょう!
少し遠出になりますので。」
「うむ、そうだな、今日は車を使わずに行こうかと思う。
どうも駐車場が、調査地域近くにはないようなのでな。」
と続ける二人。
はあっ、今日は大変そうだな。
ーーーーー
樹々が生い茂り、その中に続く割と整備された山道。
ホテルのフロントで少し話を聞いたら、クマ被害のせいか、
登山客用のクマ避けの鈴とか
クマ撃退スプレーとかの説明をしてくれた。
ただ、最近はあまり効果がないようだ。
そもそも、最近のクマは人に恐れを抱かない。
撃退用のスプレーは、
本当に至近距離でないと効果はほぼない。
そんな間合いで適切な行動を執れる人なら、
まず山には行かないそうだ。
思ったより、危険なようだが、ここが特殊なだけだろうか?
一応、ホテルには、
クマ除けグッズが売られていたので買っておく。
3人分で足りるのか?
スマホの案内ナビのおかげで、
山道には、それほどかからず辿り着いた。
もちろん、コンビニで昼食替わりの菓子パンを買ってある。
何か大盛弁当を買って、領収書を貰っている女性も見たが、
まだ懲りないのか?
そして、クランベリーさんはなぜかデザートばかり買っていた。
山道の急斜面を登る私達。
そう言えば、山道を登る前に、
例のヘッドバンドを着けるように指示してきた天明さん。
あの㊙機器は、こんなところで役に立つのか?
穏やかな山道と息が切れてくるおっさんな体力。
天明さんとクランベリーさんはまだまだ大丈夫なようだ。
かなり登ってきたはずだが。
現在は山の中腹辺り。
クマが出るとかいうのは、
山道の半ば、この手前の山から
尾根伝いに登って行った隣のところだそうだ。
さて、もうひと踏ん張りか、、
はあっ 重い溜息とともに進む私。
しばらくすると休憩場所なのか、
少し見通しの良いところに出ることができた。
「はあぁぁぁー、疲れたぁぁぁ」
再び溜息をこぼす私に
「ふふっ、七福さんは少し身体を鍛えたほうがいいですねぇ」
と天明さんが、揶揄う様に笑顔で声を掛けてくる。
「いや、ここで少し休もう。
今回目指す現場はこの少し先だからな。」
天明さんとは、反対の意見を述べるクランベリーさん。
二人が何かを話しているようだが、
私は疲れて何も耳から入ってこなかった。
頭を落とし、しばらく放心していた私だが、
天明さんが肩を叩いてきたので、顔を上げた。
「わたしたちが、現場の方を少し見てきます。
すぐ帰ってきますので、七福さんは休んでいてください。
ああっこれ飲み物です、どうぞ!」
「それでは、七福殿。
行ってくる。」
そう言って、二人は山道の先へと登っていく。
うーん、チェックインも遅かったし、あまり眠れなかったしな。
その上、早朝から山登り。
登山には、遅い時間だそうだが、私には随分早い時間だった。
しかし、あの二人は本当に元気だな。
感心しながら、息を入れる私。
天明さんから貰った飲料を開けて、飲みこもうとして
ぶはあああああー!
なんじゃこれは!
物凄い味に思わず、口から吐きだした。
ぐぐぐぐぐっ
唸りながら、気を取り戻した私は、貰った飲料のラベルを確認する。
「プロテイン2万% これで貴方もスーパーヒーロー!!!」
なんてものを渡すんだ!
というか、どこで買った!
こんなの売れるのか!?
驚きで口から泡が出ている私の耳に、何か囁き声が入る。
、、、、ニンゲン、、、ニンゲンカ、、、
コンナトコロニ、、、マタキタノカ、、、
うん?
なんだこれは。
「どうなされた?
お若いの
この辺はあぶないぞ。」
囁きに耳を澄ましていると、誰かが話しかけてきた。
顔を向けると、そこには昔のお坊さんのような人がいた。
結構年配の方だろうか?
どこか現実離れしているような印象を受ける。
登山客であろうお爺さんは
「この山は入り組んで居るし、
少し気性の荒いものも住んで居る。
今日のところは帰った方がええで。」
そんな馬鹿な、この山道は迷わないように整備されている。
道を逸れるなら、この急傾斜を登るか、崖から飛び降りるかだ。
どちらも実行すれば、ただでは済まない。
そんな考えを巡らせ、お爺さんに疑問を投げかけようとしたが
そこには誰もいなかった。
、、、キタ、、、キタ、、、
、、アブナイゾ、、、、、アブナイゾ、、、
そんな囁き声に気を取られた私は、背後に強烈な気配を感じた。
「七福殿!!!」
後ろを振り返るとともに、
ぶぉおおおっという雄叫びが上がる。
大きなクマが両腕を振りかぶっていた、
「なっ___」
次の瞬間、私に向けて振り下ろされたクマの両腕を
割って入ったなにかが、受け止めた!
そこには鮮やかな金髪が光り輝き、
全身にオーラを纏ったような姿の女性がいた。
クランベリーさん!!!




