第87話 霊的災害対応室
いつもお読みいただき、本当に有難うございます。今回で説明回、終了。
小野寺所長への報告を終え、疑問等をぶつけた日から1日置いて、
天明さんとアテナさん、私の3人は、東京の霊的災害対応室へと
向かうことになった。
随分、急な話ではある。
霊的災害対応室など今まで聞いたこともない部署からの呼び出しだ。
小野寺所長の説明では、この前ほどではないが、
それなりに起こる遺跡や妖による事件事故の解決を、
一手に担っているそうだ。
そんな政府機関が私達に何の用なのだろう。
まあ、ラファエルさんとの事もあるので、
東京行きは決まってはいた。
ちなみにオリンさん達は京都に残っている。
正直人間の世界について、もっと戸惑うのかと思っていたのだが、
予想に反して彼女たちは飲み込みが早かった。
少しそのことについて聞いてみたのだが、
彼女らのように異郷を渡る者は、色々な世界に滞在することがある。
地球でも土地によって風習が異なることがあるように、
世界が違えば常識も何もかもが違うのだ。
そんな中を行き来する彼女らは極めて順応性が高く、
考え方が柔らかい。
彼女らが特別なのかは分からないが、
その雰囲気は非常に温和で理性的だった。
なるほど、彼女らは獣ではなく、
人間より進化した高等な知的生命なのだ。
祖先が異なるだけであり、その本質はとても知性的である。
小野寺所長と意外にも意気投合しているし、
東京へ行っている間、任せておいて大丈夫だろう。
さて、いつもの新幹線で東京行きである。
今回は訪問時間も決められている。
朝10時には来て欲しいそうだ。
ラファエルさんとの約束もあるし、さっさと済ませよう。
霊的災害対応室は所謂霞が関の一角に居を構える組織だそうだ。
東京駅からタクシーで直行することにした私達。
うむ、費用はかさむが、行ったこともない場所に、
電車とか乗り継いで行くのは愚の骨頂だ。
今回は時間の制限もある。
正直、タクシーで霊的災害対応室の名を出しても、
運転手の人が分からなかった。
なので、官庁のある住所を言って、
ようやく行先を把握できた。
着いたのはお世辞にも大きいとは言えない、
4階くらいのオフィスビルだった。
研究所や本社のように横や奥に長いとかではなく、
本気でちょっと大きな書店くらいの大きさだ。
天明さんを先頭に私達はそのビルのエントランスに、
入って行く。
ちょっとした受付があり、用向きを伝える天明さん。
直接お呼びがかかっているのはアテナさんのほうだが、
見た目外国人の彼女よりも天明さんの方が交渉しやすいだろう。
3階の応接室に通された私達は、先に来ていたらしい三枝木さんと
会うことになった。
室内にはソファーが二つとテーブルが一つ、
あまり大きくはない。
恐らく、対面に座るだろうから、
上座を空けて私達は固まって座る。
大きくはないと言ったが、他に家具らしきものが無いので、
ソファーには全員座れる大きさがある。
しかし、こういう時って普通は会議室を使うよね。
まあ初めて来るからよく分からないが。
ううむ、何の用なのだろう?
やはりあの事件関連だろうか?
しばらく、三枝木さんとの会話が続くが、
すぐに部屋にノックの音が響いた。
応接室に来たのは、中肉中背、50代半ばと思われる男性だった。
この部署でのお偉いさんなのか、秘書官みたいな女性が資料を、
手に付き従っている。
立ち上がって出迎える私達だったが、
彼は座ってくれと私達に言い、
彼自身も私達とは対面にあるソファーに腰掛ける。
「ここまで呼びつけて、申し訳ないね。
それと岐阜市ではご苦労だった。
私達が手配した人員では足りなかったようだ。」
と前置きする彼。
「おおっと自己紹介がまだだったか。
私の名は関場 純也という。
一応、ここの責任者ということになる。」
「いらぬ詮索をされてもいけないので、
単刀直入に本題に入ろう。」
「今回呼び出したのは、顔見せだ。
そちらは三枝木君と言ったかね。
君の部署では、対妖用の装備を研究しているそうだね。
今、私達は手持ちの装備でやり繰りしているが、
それらはどちらかと言うと古代に開発されたものだ。
残念ながら再生産も複製もできない。
遺跡の調査などで少量が発掘されることもあるが、
圧倒的に数が足りないのが現状だ。
そんな中、君の研究はとても有意義だ。
私達としては、研究に対し補助金を出そうと思っている。
まあ、まずは現場の君と面談してから、
君の所属する企業と交渉する予定だ。」
「君の企業の思惑を計るためにも、現場の意見を聞いておきたくてね。
それと君達だね。」
と三枝木さんから目を外し、私達の方を向いた関場さん。
「右藤殿から詳しい話は聞いている。
三枝木君といい、君達の所属する企業は普通のものとは、
違うようだ。
ふむ、女性ばかりのようだが、古来妖異に対抗するのに、
性別は関係ない。
君達には、妖異対策要員としての登録をお願いする。
国家の安全に関することなので拒否権はない。」
「とはいえ、このまま話を進めても、拗れるだけだろう。
少し、この部署について説明しよう。」
「この部署は政府直轄の部署であり、
その名も霊的災害対応室と呼ばれている。」
「まあ気付いているかもしれないが、
本来の相手は妖や異邦人などの地球人と異なる起源を持つ、
存在だ。
君達は岐阜の現場で天使たちや仏門の力で呼び出された傀儡を
見ているだろう。
天使と呼んでいるが、彼らは古くから人間と協力関係にある
異星人だ。
故合って、地球から離脱できなくなった彼らは私達人類と共に、
この地を守っている。」
「霊的災害と呼んでいるが、
地球人類の魂や霊が起こしているものではない。
天使側の情報では、私達の進化レベルでは霊の姿と言っても、
光の球のようなものに過ぎないそうだ。
そんな私達では、霊的現象自体を起こす力がない。
もちろん、一部の能力者には力ある者もいるにはいる。
右藤殿たちや祭主殿であれば、妖どもの相手も出来るだろう。
だが、それはあくまで一部に過ぎない。
人を攫ったり、原因不明の災害を起こしたり、
そんな事件事故には、人ならぬ存在が関与していたりする。」
「突然の突風被害や地震に行方不明事件、動物たちの狂暴化、
地球温暖化などの理由を挙げ誤魔化してはいる。
しかし、本来はあり得ないことだ。
私達も無知ではない。
人類の歴史上、寒冷期も温暖期もあった。
化石燃料の使用などしてなくとも、
それらは起こっているのだ。
今何が違うのか?
私たちは協力者と共に真相を究明しようとしている。」
「そして、この間のような露出度の高い事件だ。
今までは、彼らの動きは極めて限定的だった。
それがここに来て、著しく活発に動き出している。
今確かに、何かが変わりつつあるのだ。」
「対応するために、この国を守るためには、
更なる協力者が必要だ。
私達は君らやその仲間と協力関係を築きたい。
もちろん、君達に対してそれなりの権限も与えよう。
まあ、我々の要請を基にした権限だが。」
「今、私達は国という枠組みを超えて、
あるプロジェクトを推進している。」
その関場さんの言葉を聞いて、秘書官らしき女性が、
目くばせをしている。
「いい。
私はプロジェクトの結果、恒久的な平和が実現したり、
今ある災害などが劇的に減るなどと言う言葉を鵜呑みにする、
夢想家ではない。」
「私が望むのは現状の維持であり、
決して人類社会を崩壊させないことだ。」
プロジェクト?
その言葉に天明さんが来たときのことを思い出した。
そう言えばあのプロジェクトどうなったのか?
もしかして、今話題になっているのがそうなのか?
天明さんを見ると、首を振る仕草をしてきた。
うん?違うのか?
「岐阜の件などと私達が進めているプロジェクトに関係があるのか、
それは分からない。
しかし、これだけの事件だ。
何か関係があると見るのが、当然だろう。
プロジェクトが進むに連れ、このような事件が頻発するのであれば、
即応できる人員を出来るだけ集めておきたい。
君達の正体等に詮索は入らない。
それは保証しよう。」
そんな言葉を続けてきた彼だが、反対に言えば、
協力しないなら調査が入るという脅しも入っている感じだ。
彼は隠し事をしない主義のようだが、それゆえに協力要請が、
強制であることを裏付けている。
黙っていた天明さんが質問を投げかける。
「わたしたちを登録して、どういう件に対処させようと?」
その質問に、
「基本的には、岐阜の事案のような大規模な事件での招集だ。
他の小さな案件ならこちらの人員でどうにかなると考えている。
あの規模の事件が多発するなど考えたくないが、
あり得ないことではない。
プロジェクトを推進し始めた頃から、
小さな案件も頻発するようになった。」
と答えた。
そこで私も質問する。
「プロジェクトとは何ですか?」
再び秘書官に目配せした彼は、
「それは答えられない。
ただ、天使たちと共同で行っているものだ。
彼らの事は知っているだろう。
彼らは決して悪事を行わないし、その性質は温和だ。
誠実な彼らとの計画だ。
人類に不利益はないといえる。」
その答えというには曖昧なものに、首を捻る私。
天使との付き合いなどそんなにないのだ、私は。
まあ、京都でも岐阜でもピンチの時に駆けつけてきた彼ら。
西洋では、天使と言えば神の御使いであるが、
例の召使いとは無関係なのだろうか?
はあ、しかし、これは選択権のない要請のようだ。
それにタロスの戦闘も目撃されている。
閃光による機材トラブルで録画できなかったとしても、
自衛隊の偵察ヘリもいた。
武装組織と認定されでもしたら、大企業といえど、
難しい立場に追い込まれるだろう。
岐阜みたいなことが起ころかどうかは疑問だが、
招集されるときはあのクラスの事態なのだ。
ううむ、厄介なことになった、、、




