第83話 狭間での戦闘
列焼英さんの言葉で今までと打って変わって、
やる気になった私は、異郷へ渡る道の進み方を教えてもらった。
列焼英さん曰く、
「常に周りの雰囲気を探ることだな。
大きな力を持つ存在は、あの道の周辺をも変化させる。
力持つ存在だからこそ、その力で自身に優位な環境を作り出す。
まあ、この地に接する異郷の道に、
そこまでの存在が往来しているかは疑問だが。」
「ただ、あり得ない訳ではないからな。
特にこの近くなら、忠告したオーガに気を付けることだな。
あとは相手を見極めよ。
弱く見えようとソレが本当なのかは分からない。
少なくとも異郷を渡る道はそんなに甘くない。
皆、それなりに実力ある者たちだからな。」
修行に出るにあたって、そんな忠告を受けた。
「行くなら笛を貸せ。
我らが狩猟者用に使っていたものに変えてやろう。」
列焼英さんはそう言って、何か犬笛のようなものと交換してくれた。
「これがあれば、この場所にすぐに帰って来れよう。
この笛を吹きながら、現れる道を進めばすぐだ。」
”虱潰しの探索には向かぬが、今回は帰還できればいいのだから、
これがいいだろう”
そんな列焼英さんに見送ってもらった私は、
再び異郷へ渡る道に挑戦することにした。
うん、なんでこんなにやる気なのか?
実に色々ある。
私自身の強化も必須だが、正直このまま強くなったとしても、
限界はあるのだ。
例えば、強くなったら肌が鋼鉄のように硬くなるのか?
実は、アテナさんはその力で身体を強化している。
同じく私もそう言うことが出来るようになるかもしれない。
ただし、私達はモンスターではない。
手足をもぎ取られて、無事で済むわけがない。
そこへ行くとモンスターの仲間は回復したりするかもしれないのだ。
いや、本当にヒュドラやガルムはそんな感じで回復したし、
例の御使いの手先もダメージをものともしなかった。
私達3人の中で最も戦闘に長けた存在はアテナさんである。
だが、彼女とて蛇との戦闘では手が回らなかった。
さて、あの御使いの手札があの刺客や蛇だけだろうか?
そんなわけはない。
本気になったら、ぞろぞろと手先を出してきそうだ。
だが、私達の戦力はさほど変わらないだろう。
本気になったアテナさんは多分相当な強さだろうが、
それでも一瞬で敵を倒せるわけではないはずだ。
天明さんは術の使用で無防備になることが多い。
そんな中で私も実力を上げなければ。
そこで考えたのはロキのようにモンスターを仲間にすることだ。
個人的に竜とか仲間になったらとか思ってもいる。
私では、今すぐ実力を上げられない。
今までも邪馬台国の将相手にギリギリだった。
今度は東京の遺跡行きが決まりそうなのだ。
一応の成果を持っていかないと今度こそ詰む状況が来るかもしれない。
ならば、即戦力なモンスターの仲間は単純に相棒として心強い。
文書保管庫から出て、異郷への道を進む私。
慎重に気配を探りながらの歩みだった。
進むことしばらく、、
私はある異変に気付いた。
うん?
割と小さい気配がする。
慎重に気配を消しながら進む私。
何か2、3体の緑色の肌をした1メートルに満たない小人が、
弓を持って茂みをうろついていた。
何だアレは?
近くによってみると、何かの罠から得物を取り外していた。
何か2メートル以上ある鶏の化け物がかかっていたみたいだ。
えっ、あんなの狩ったのか?
あの小人が??
見ていると更に奥から複数の小人が出てきた。
全部で十数人いる小人達。
何かを仲間と話しているが、その言葉が分からない。
少し、相手の力量を見てみようと、
感覚を研ぎ澄ませる。
それがいけなかったのか、私の存在がバレてしまった。
そうか、剣筋とか読めるようになったあの力は私からも出ているのか。
今更思い出した私を小人達が取り囲むように動き出す。
どう見ても平和に話し合う雰囲気ではない。
はあ、この地では力を着ける為、色々なモノが戦っている。
まあ、主に野生な獣の進化体だそうだが、
この小人達も他の異郷に進出中なのかもしれない。
徒手空拳ではどうにもならないから、太刀を呼び出し、
戦闘が開始された。
短剣を振りかざし跳びかかってきた小人に太刀を振るう私。
しかし、太刀の斬撃は短剣で器用に受け止められた。
勢いを殺して後方に跳んだ小人に追撃しようとした私の懐に、
いつの間にか踏み込んできた小人2体が短剣を突き立てようとする。
くぅ、地を蹴り小人達の上空を一回転する私。
着地後、すぐに左へと飛びすさる。
先程、太刀を受けた小人が再び斬り込んできた。
くそ、動きが速く、
背が小さい分、戦いにくい!
ぞっとする気配を感じた私は、
後ろへ向けて 風撃乱打 を叩きこむ。
特に狙いをつけず、面を制圧するように風の打撃を解き放った。
そして、いざ振り返れば、7つほどの矢が吹き飛んでいた。
その様子に背筋に冷たい何かを感じたが、
それでも状況は変わらない。
再び緑色の肌をした小人が襲ってきたのだ。
今度は2体増え、5体がかりでの攻撃だ。
こちらの間合いに跳び込んでくる小人一人を太刀で弾き、
懐に入り込もうとする者に足払いで牽制する私。
更に左右からの攻撃を体勢を低くして何とか躱した瞬間、
残る小人から体当たりを受けてしまった。
小柄なのに、その力は随分強いようだ。
私は後方へと吹き飛ばされた。
くそ、受け身をとらず、太刀を横に構えると、
すぐに短剣による斬撃が襲ってきた。
心臓を狙い跳びかかってくる別の小人に仰向けになりながら、
蹴りを放つ。
さすがに躱せず、その小人は視界から消える。
力を振り絞り、短剣を受けている太刀を押し返すと、
ふっと力を抜いて小人は後方へと離れた。
再び立ち上がろうとした私の目に、
再び7つの矢が迫っているのが見えた。
咄嗟に緊急回避を行う私。
「 風舞跳躍 」
その身を宙に躍らせ、矢は躱せたが、
私はもう一杯いっぱいだった。
今までの戦闘とあまりに違う。
小人達はもう次の矢を番え、こちらに放とうと構えている。
甘かった、、
そう言えば、列焼英さんの言葉に私のいる現実では、
モンスターや異郷由来の者は実力を抑えられているとあった。
目の前の小人達でさえもこの実力だ。
絶望的な状況に、私の後悔は遅すぎた。
しかし、諦めることはできない!
あの時、そう蛇によって死した時、
私は一度だけのチャンスをあの少女に貰ったのだ。
”その身体、今度こそ大事にしなよ。”
何処で聞いたのか分からないが、そんな言葉が頭に響く。
矢は放たれた!
そして、私の口からある言葉が零れだす。
「その王を止める者はいなかった!
王は嵐と共に玉座の道を歩み続ける。
我が道に立ち塞がるものはいない。」
「我が威に下れ!
我は天に昇る道を行く。
いざ、征かん!
我が名は風司りし姫王なり!」
” 奥義 天嵐武闘 ”
凄まじい風が吹き荒れ、全ての矢は叩き落された。
私は無意識に宙を駆け、矢を放った小人達に肉薄した。
弓を捨てようとする動きが鈍く見える。
構えた弓ごと太刀で切り裂き、返す刀でもう一体を一刀両断。
残り10体。
短剣に持ち替えた小人に重い蹴りを叩き込む。
その身体を蹴り砕いた私はその脚を下ろす前に、
もう一方の脚でその横で藻掻く一体の頭に綺麗な蹴りを放つ。
後8体。
短剣に持ち替えた小人3体が攻撃を仕掛けてくる。
初めのように、一体が私に跳びかかるのを太刀で一閃。
それほど業物とは言えないだろう短剣ごと小人は真っ二つになった。
太刀を振りぬいた反動そのままに、
身体を素早く回転させた私は下方へと回し蹴り。
蹴りは私の胴狙いで迫っていた小人へと吸い込まれた。
横方向へと身体を軋ませながら、吹き飛ぶ小人。
更に私の動きに戸惑う小人へと袈裟斬りを放つ。
もう弓を構えていた8体はいない。
短剣を構えて、こちらに向かっていた小人に、
無造作に手を薙ぐ私。
その動きに合わせ、複数の風の斬撃が小人達を襲う。
1体が真面に斬撃を喰らい、2体が手足を斬り飛ばされた。
残り2体はこちらに向かうかどうか逡巡していたが、
流れる風に乗って素早く動いた私の太刀にとどめを刺された。
戦闘が終わり、謎の高揚感から解放された私は、荒い息を吐く。
「はあ、はあ、はあ、
何だ、今のは?」
疑問が胸をよぎるが、とにかく帰ろうと笛を鳴らす。
私にはまだここは早かった。




