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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第6章 翼持つ舟からの招待状
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第81話 異郷へと渡る道 後編

迷い込んだ?研究員の人達を捜して、

霧の立ち込める山道を進む私達。


正直、何処へ向かっているのか分からない現状では、

二重遭難になりかねない。


一応、列焼英さんは、こういう道にも詳しいらしく、

私達に笛のようなものを渡してきた。


エンキタンに伝わる迷い防止用の笛だそうだ。


列焼英さん達エンキタンはその昔、こういう道を通って、

この世界に辿り着いたそうだ。


その際に使っていた探索道具は今だ健在。


この笛を吹けば、列焼英さんには何処に私達がいるのか、

伝わるらしい。


ちなみに、ロキやスクルドさんにも、

この道の進み方について聞いてみた。


「はあ、僕らが使っていたのはこういう道を、ショートカットして直接、

 目的地に行けるアーティファクトなんだ。

 まあヘイムダムが一生懸命頑張ってくれたおかげで、

 10分も歩けば、目的地に辿り着けるわけ。」


とロキは答え、スクルドさんは、


「はあ、私達の都アースガルドは、

 幾つもの異郷を束ねたオーディン様が住まう場所。

 各異郷からの往来も多く、そのため道も整備されていました。」


と言ってくる。


彼らは何か凄い文明の出身のようだ。


どうやら、私が頭に思い浮かべている感じの道路ではなく、

ワープゲートで人を瞬間移動させたりするSF世界なのかもしれない。


徒歩により一瞬で各惑星を行き来する感じでいいのかな?

宇宙船はもはや古いってか!


はあ、とにかく気を付けて道を進んではいるが、

今、下っているのか?上っているのか?定かではない。


山道に見えるが、実のところ、不思議すぎる空間だ。


もはや、私には帰る道が分からなくなっているし、

ロキ達に聞いても、こういう道は使われなくなって久しいらしく、

どう進んでいいのか分からないらしい。


もう小一時間は経つが、研究員の人達は見つからない。


どうしたら?


一旦笛を吹いて、迎えに来てもらおうかと思っていた矢先、

私達の前に一羽のカラスが鳴き声を上げ、現れた。


ぐるぐると私達の上を旋回しながら、鳴き声をあげるカラス。


こんなところに普通のカラスがいるわけがない。

どうやら、何かの手がかりになりそうだ。


私達がそのカラスに注目すると、

カラスは空を舞いながら、右の方向へと飛び始めた。


私達がその方向を向くと、そちら側に新たな道が現れた。


ううむ、この道の仕組みが全く理解できない。


とにかく、カラスに着いて行くことにしよう。


しばらく進むと、少し開けた場所に辿り着いた。


そこは、幾つもの道が交差する場所のようだ。


そして、男性と思われる誰かがそこにいた。


人と言うにはその身体は大きく、顔は特徴のある天狗の様な鼻がある。

赤ら顔のその人物は、こちらを見て手招きしてきた。


警戒しながら、彼に近づく私達。


「何用じゃ、旅人よ。」


ちょっとしわがれた男性の声が私達に向けられる。


「すみません、この辺りで人を見かけませんでしたか?

 私達の仲間が行方知れずでして。」


そう答える私は、掻い摘んで事情を説明した。


すると、


「ほう、なるほど。

 それなら、こちらで保護しておるぞ。」


ほれ、と言って手を振った彼の足元に、

研究員と思われる数人が横たわっていた。


「ああ、助かりました。

 有難うございます。」


とお礼を言う私。


スクルドさんがそれを見て、質問する。


「貴方はこの辺りに詳しいのですか?」


すると、


「うむ、そうじゃな。

 それなりに知っておるぞ。」


と答えてきた。


「それじゃ、この辺に塔みたいな建物なかった?」


今度はロキがそう聞き始める。


「なんじゃ、お前さん達もあそこに行きたいのか?

 最近は人通りが多いんじゃが、

 あそこへ行くのはお勧めせんぞ。」


その男性はそう答える。


その言葉に今度はスクルドさんが反応して、


「誰か通ったのですか?

 塔の先は私達の都なのですが?」


と聞き返す。


男性は赤ら顔を渋くさせ、大きな鼻を指でさする。


「はあ、お前さん達、あの都の関係者か?

 わざわざ、道になっているのを塔に作り替えて、

 すぐ新しい技に変えたらしいのう。」


「それからは塔の保全も何もせんし、

 あの中は今、化生の巣窟じゃぞ。」


「ちょっと前に出会った髭の大男と優男やら、

 別嬪さん方にも聞かれたのじゃが、

 あそこを通れるとは思えんぞ。」


そんな男性の言葉に、


「それ、変なハンマーとか持ってた?」


「もしかして、私のような銀髪の女性でしたか?」


とロキとスクルドさんは同時に聞きだそうとする。


「そうじゃな、別嬪さんはあんたの姉妹か何かか?」


「あと確かに大層な槌を持っていたな。

 あれは持ちにくくないのかのう。」


との答えをもらった。


「トールたちかなあ?」


「女性は姉妹の誰かでしょうか。」


そう二人は心当たりを探っているが、


「じゃが、あれでは通れんのう。

 今あそこは異郷の大妖が複数住んで居る。」


「そもそも、異郷を渡る道に建物を造らないのは、

 そういう輩が住み着かんようにしているからなんじゃ。

 それを見栄を張って建てた挙句、管理も疎かにするとはのう。」


と、男性は苦言を呈してくる。


「はあ、戦争に備えて、城と都を建て替えたんだけどね。

 片目おやじは金をケチったから、ドワーフに愛想つかされて。

 挙句の果てに、変なのに襲われて、

 結局戦争前に全員都を追われちゃったよ。」


「私がしっかり門番をしていれば、こんなことには、、」


二人から対照的な発言が漏れる。


それから、ロキとスクルドさんは、


「その塔へはここから行けますか?」


「僕らを案内してくれる?」


と男性に聞いている。


どうやら、彼らは先に行った仲間を追うらしい。


「それじゃ、また何処かで会ったらよろしく。」


「申し訳ない、私達は塔の方に行ってみます。」


と言い、男性に案内を頼む。


「そうじゃな、このカラスに着いて行けばいいぞ。」


二人は早速、男性が放ったカラスを追っていく。


不思議なものでカラスの行き先に道が現れていく。


「それで、お前さんはどうするんじゃ。」


そう私に聞いてくる男性。


「えっと、この人たちを連れて帰りたいのですが。」


ううん、同行者がいなくなり、

研究員の3人と私が残っている。


だが、今だ3人の方が目を覚まさない。


「そうじゃな、この地では人間は目を覚まさんじゃろうな。

 ここはそもそも異郷へ行ける者が通る場所じゃからな。

 それなりに力を持たないと先へも進めんのじゃ。

 どれ、嬢ちゃん一人では運べんじゃろ。

 儂が付いて行ってやろう。」


そう言うと男性は足元に寝転ぶ研究員3人を担ぎ上げた。

台の大人3人だが、彼の巨躯だと小さな子供を抱えているようだ。


「さて、行くぞ。

 今も待っているあの者らの元でいいんじゃよな。」


ゆっくりと歩き出した彼に着いて行く私。


しばらく歩くと、

列焼英さんと加賀崎さんが話し込んでいるのが見えてきた。


「うん?

 おお、渡し守の翁殿ではないか?」


「七果さん、見つかったんですか?」


二人はこちらを見て、

そして男性の腕に担がれた研究員さん達の姿を確認したようだ。


とりあえず、列焼英さんが研究員の2人を現実世界へと運び出す。


私も残った一人を担ぎ、加賀崎さんと向こうへと帰ろうとする。


最後に私は、送ってくれた男性に、


「今回は本当に助かりました。

 有難うございました。」


とお礼を言う。


「ふふ、ああ、笑っては失礼じゃったな。

 稀に奇遇な出会いもあるもんじゃ。」


「儂の名は猿田彦じゃ。

 あの者らに関わるなら、また会うこともあるじゃろう。」


そんな言葉に私は自己紹介もまだだったことに気づく。


「ええっと私は七果です。」


「そうじゃな、努々、姿形に拘らんことじゃ。

 本質は見た目ではないからのう。

 どんな立派なものも、本質が大事なのじゃ。

 さすれば、多き良き縁を結べるじゃろう。

 真に拘るな、誠を見よ。」


「それじゃあな、七果嬢ちゃん」


そう言って、猿田彦さんは大きな身体を揺らしながら去っていった。

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