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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第6章 翼持つ舟からの招待状
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第79話 出張

名古屋市で開かれたお祭りは、滞りなく終了した。


あれから数日、天明さんは東京のラファエルさんに、

改めて連絡を取り、会合の予定とかを聞き出していた。


それによれば、今から2週間後の予定で、

相手は日本の地に住まう古い一族だと言う話だったそうだ。


なぜ、その相手と会わなければならないのか?

それは教えてもらえなかったそうだ。


あと、アテナさんと三枝木さんのほうは詳細が分かっていない。


あるとすれば、タロスの件だろうけど、

アテナさんの言ではあれの動くやつはもうほぼ残っていないらしい。


ついでに、生産とかもできなくなっているようだ。


昔は活躍していたのだが、争いが無くなって久しい彼女らの一族では、

あの手の兵器技術は継承されなくなったそうだ。


まあ、あの兵器はもともと彼女らが出張ることなく、

異郷から来た荒っぽい連中を追い返すためのものだったようだ。


彼女らの一族も暇ではないし、

いちいち、そんなのが暴れる度に出動していては他が回らない。


昔はかなりの頻度でそういう異郷由来の野生生物が暴れていたらしい。

そこで出来たのがあのタロスというロボというかゴーレムなのだ。


決してどんな存在にも通用するという訳ではなかったが、

格段に楽にはなったそうだ。


というわけだが、この星から異郷の地へと進出した彼女らは、

割と平和な地を見つけ出した。


理想郷とは言えないものの争い自体が必要ないほどに、

快適な地であった。


そこで同胞を迎えに来た彼女らの前に立ち塞がったのが、

例の御使い達だったらしい。


まあ、そういうことで、

もし日本政府がタロスの同型を望んでも提供できるモノがない。


三枝木さん達のランドナックルも、まだ開発段階の中盤である。


まあ銃器の類を取り付ければ戦力になるかもだが、

それなら従来の戦車とかでいいのだ。


必要なのは、今回出た怪物に対しての戦力だろうから、

そこで期待に応えるほどの性能はまだ発揮できていない。


天明さんとアテナさんは、各々に交渉を重ねている。


ラファエルさん達は今、東京だ。

しかし、例の遺跡に行くならアテナさんに同行してもらいたい。


あの蛇のこともある。

遺跡に行くなら万全を期したい。


またアテナさんのほうは、三枝木さんと共に霊的災害対応室に、

目的を聞き出そうと奮闘中だ。


相手は直接の目的を明かしてこないらしい。

中々に手強い相手のようだ。


しかし、なぜ会社を通して連絡しないのだろう?


それを聞いたら、タロスの件をもみ消した事を、

ちらつかせているらしく、

個人的な責任を真綿で締め付けるように、言及してくるそうだ。


タロスはアテナさんの私物扱いだったらしく、

企業が研究開発してはいるが、日本での実働は予定されていなかった。


彼女の御父上が、心配して借りだしたものだったのだ。


まあ、自衛隊以外があんな戦闘兵器を持っているのは、

国防上、まずい事はまずい。


実に厄介なところを突いてくる。


まあ、それでも交渉の余地はあるらしい。

そうでないなら、わざわざ呼び出しなどしないだろう。


政府の一機関なのだから、警察などを送ってくればいいだけだ。


というわけで、天明さんとアテナさんはそれぞれに忙しい。


そんな中、私は小野寺所長に呼び出されていた。


所長室にやってきた私は、インターホンで来たことを伝えた。


中に入るよう言われ、扉を開けると、

所長室には、複数の文献が所狭しと置かれていた。


「ふむ、七果君。

 今日は天明女史もクランベリー君も忙しいらしいね。」


中にいた小野寺所長が私を見て、口を開く。


「ええ、二人は今、それぞれの相手と交渉中です。

 近い内に東京行きになるかもしれません。」


と答える私。


「そうかね、大事ないのかね?」


そう聞いてくる所長の言葉に、


「多分大丈夫だとは思うのですが、、

 この間の件が関係していまして。」


歯切れの悪い答えを返すしかない私。


「ううむ、まあそこまで心配しないでもいいと思うがね。

 天明女史もクランベリー君も聡明な女性だ。

 上手い落としどころに納めるだろう。」


「ところで、七果君は空いているということでいいのだろうか?」


所長が聞いてきたので、私は今のところ業務は入っていないことを、

告げる。


うむ、上司に仕事してないよ!と申告しているようなものだが、

この研究所でまだ役割のない私はそう答えるしかない。


「うむ、それは良かった!

 七果君は、加賀崎くんと面識があっただろう?」


と予想に反して明るい声で聞いてくる所長。


加賀崎??

うんっと、どこかで聞いたような?


「ふむ、覚えはあるようだね。

 加賀崎くんは、例の蛇の遺跡調査に行ってもらっている、

 研究チームのリーダーだよ。」


ああ、そう言えばエンキタンの文書保管庫にいた女性か!


「思い出したようだね。

 実は、彼女から連絡があってね。

 こっちでも色々あったが、

 向こうでも新たな発見があったようなのだよ。」


「ただ、あの場所は列焼英という管理者がいるからね。

 文献の持ち出し等はできないそうなんだ。

 なので、今現地ではこちらに保管されている資料を必要としている。」


「しかしね、こちらの資料も研究上、重要資料なのだよ。

 特にこの間のような出来事もあったからね。

 もはや、過去の文献と言えども、

 どんな危険をはらんでいるか分からない。

 なので、古代文献等のデータを機密扱いにしているのだよ。」


「おいそれとデータを送信という訳にも行かなくなってね。

 七果君には、データの入ったノートPCを、

 彼女たちのところに届けてもらいたいのだ。」


「近くまで電車で行けば、

 研究チームの誰かが迎えに行くと言っているからね。

 心配いらないよ。」


そんな小野寺所長からの指令を受けて、私は準備を整えた。


指定された研究ラボでノートPCを受け取り、

鞄に詰めて研究所を後にする私。


うむ、何故ノートPCなのか?

SSDかUSBメモリで十分では?


それは私も思ったが、このPC、どこにも外部接続できる端子がない。


ディスクはおろか、

ダウンロードなどに必要な外部接続用の端子がないのだ。


外から繋げられるのは電源コードのみである。


つまり、このPCからは何もデータを盗っていけないと言うことだ。


まあ画面はあるから、動画か写真でデータを盗れないことはないが。


それには、私からこのノートPCを奪う必要があるし、

そんなことしてまで、このPCを奪う価値があるとは思えない。


研究所を出た私は、地下鉄の駅へと歩き出す。

しかし、途中で中学生くらいの男の子に話しかけられた。


「やあ、また会ったね。」


そう話しかけてくる少年に見覚えはない。


ニコリと笑った少年だったが、

その姿は、色々な人物に重なっていく。


女性だったり、男性だったり。

若かったり、老人だったり。


そう、その存在には確かに会ったことがある。


「思い出したかな?

 この間は危なかったね。」


と話しかけてくる彼。


今は天明さんもアテナさんもいない。

警戒の度合いを一気に上げる私。


「まあ、そんなに警戒しなくていいよ。

 今日はお目付け役もいるしね。」


彼は隣を指さす。


あれ?

誰もいないと思っていたのに、

そこには銀髪を結ったスーツ姿の綺麗な女性がいる。


「自己紹介がまだだったよね。

 僕はロキ。

 名はこれだけだよ。

 こっちは、、」


と言って女性を紹介しようとするが、


「私は、スクルド・ジークフリードです。

 故合って、この者を監視しています。」


「私がいる限り、勝手なことはさせませんので、

 ご安心ください。」


と少し高い声で女性、ジークフ、

いや、どう見てもジークフリードと言う感じじゃないな。


スクルドさんでいいか。


「うん、挨拶も終えたし、僕たちはもう知り合いだね。」


とロキが語るが、


「私はお前と友人になる気はない。

 それと貴女が七果さんでよろしいか?」


そう答えるスクルドさん。


むう、何かキツイ女性のようだな。


「そうですけど、何かご用でしょうか?」


と答える私に、


「ほら、君がそういう態度だから彼女も警戒しちゃったじゃないか?」


「そろそろ、そのキツイ口調も直した方がいいんじゃない?」


と揶揄う様にスクルドさんを焚きつけるロキ。


「はあ、黙ってろ!このクソガキ。

 貴様のせいで、どれだけ振り回されているか。

 望むなら、今すぐ冥界に送ってやるぞ!」


怒っているな、これは。


「ええと、今急いでいるのですが、行っていいですか?」


関わらない方がいいと判断した私はそう言って立ち去ろうとするが、


「ああ、待ってください!

 実は、私達は加賀崎研究員から貴女たちの迎えを頼まれたのです。」


え、なんで?


「僕たちも書庫に行ったんだけど、取り込み中だったんだよ。」


とロキが言うと


「はあ、私達が辿り着いたとき、

 ちょっとトラブルに会ってたみたいで。」


「私達が着く前に何か妙なものが見つかったようなのです。

 それが元でちょっと説明し難い事態になってるのです。

 そこで緊急で迎えの代理を頼まれたのです。

 こっちのロキが貴女方を知っていたので。

 それで貴女お一人ですか、ほかに同行者は?」


スクルドさんもそう続ける。


同行者はいませんと伝えると


「ちょっと僕らも難儀しているんだ。

 まあ、危ないことはないよ。

 何か出ても、こちらの戦乙女殿がいるからね1」


ロキが揶揄い半分で再び口を挟む。


「調子の良いクソガキだな!

 ううん、失礼。

 七果さん、私とロキは旧知の間なのですが少し意見に相違があって。

 そう昔、色々と。」


さて、とスクルドさんは私を停車中のSUVに案内する。


「私が、貴女を責任もって送り届けるので安心してください。

 その代わり、現地で少し協力していただきたいのです。」


”私達の探し物も見つかるかもしれないんです。”


そんな言葉を掛けてくる彼ら。

一体何が起こったのか?


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