第77話 式典
昨日は三枝木さん達共々、ビジネスホテルに泊まった私達。
今日は、前代未聞のテロ事件の阻止に協力したとして、
有志連合共々、表彰される予定だ。
予定としては、午前中に警察や市からの表彰がある。
これは、平和を祈る式典の中で行われる予定だ。
私達は三枝木さん達のチームとして、
この式典に参加する。
うん、何で自衛隊とか出動しているのに、
国で表彰しないのかって?
それには色々な事情がある。
まず、政府は今回の事を公には認めていないのだ。
今の政府の見解は、関係省庁による事実確認中となっている。
それにはどうしようもない理由がある。
自衛隊まで出撃した今回の事件だが、
卑弥呼の軍勢自体が、例の多頭蛇に巨人達、
ついでに骸骨兵士達なのである。
最終的に自衛隊をも退けられて、
一般市民により排除されると言う事態になった。
政府として、色々な法律に照らしても、
卑弥呼の軍勢は、科学的に認められない。
正直、これを認めてしまうと、
霊的現象を法律に組み込む羽目に陥る。
そうなると、
欧州で起こった魔女狩りの悲劇が繰り返されてしまうだろう。
霊的現象などという普通では確認できない事情を法律化すると、
それに基づいて裁判とか起こされるかもしれない。
正直、要らぬ冤罪が蔓延するだろう。
そして、卑弥呼の軍勢は違う視点でみると、
テロ組織というより怪獣軍団と呼べるのだ。
今回、日本を襲ったのはテロ組織なのか、怪獣の群れなのか?
一応、犯行声明があったが、そんなのは棚上げされている。
政府としてテロ組織以上に怪獣軍団大侵攻は絶対に認められない。
そんなのを認めたら、今後の安全保障とか手に負えないことになる。
なので、今回の式典には、政府関係者は参加していない。
事実確認中なので、後日正式に適切な対応をすると発表している。
あくまで今回は、有志の協力者や避難者に向け、
自治体が主催した復興事業の一環なのだ。
さて、私達はいつもの服装、天明さんと私はリクルートスーツ、
アテナさんは見た目には男装にも見えるスーツ姿だ。
いつもと同じだと思うだろうが、
私以外は、実は意外と私服の時もある。
私は、日中出かけると高確率で補導されてしまうのだが、
天明さんとアテナさんは間違いなく大人の女性なのだ。
まあ会社にいることも多いので、
天明さんのリクルートスーツ姿は見慣れたものだが。
一方、アテナさんはそれなりに私服のバリエーションが多い。
この間は、漢字が大きくプリントされたロングTシャツと
ちょっとダボついたパンツのコーデとか着ていた。
彼女はセンスが良く、何処で買ったのか、
普通に見るような漢字Tシャツではなく、
Tシャツ全体に何かの幾何学模様かと思うような、全体に
大きく斜めな達筆一文字が入ったデザイン性の高いものを着ていた。
どこかのモデルさんみたいだが、
服について質問すると、欧州ではオーダーメイドしてくれる店があり、
彼女の私服はそこで購入しているそうだ。
一方、天明さんは普通に店売りらしいが、
基本的にはディスプレイされているものを一括購入しているらしい。
うむ、ずぼらか!
と思うかもだが、彼女の場合、その一見して特徴のない部分が、
魅力ではある。
前も話したが、彼女は特徴のはっきりした美女ではない。
しかし、相反しているかもだが美人ではあるのだ。
要するに、それゆえ何を着ても似合うのだ。
ファッションモデルになれば、服との相性など考えなくとも、
一応に映えるので、一流になれる逸材になるだろう。
長々と服について語ってきたが、一応理由はある。
実は式典の後、祭りがあるのだ。
昨日誘われた件である。
うん、突然の事だったから花火が上がったりはしない。
ただ、どうみても今回は怪物相手だったので、
神様に一応祈っておこうと言うことだ。
そして、私にも関係することがある。
祭りと言えば、浴衣なのだそうだ。
うん、言っていることが理解できない私がいる。
だが、今回は伝統を重んじる祭りにするそうなのだ。
そして、祭りの参加者全員に用意はできなかった。
だって、参加者には避難した人だって入っている。
貸し衣装だと言っても、祭りの参加者は多い。
開催地も名古屋なのだ。
できれば、合わせてほしいそうだが、
そうも言ってはいられない。
そこで有志連合だけでも、浴衣で参加してほしいらしい。
一応神事になるそうで、有志の人は皆招待されている。
人数自体、警官とか含めないためそれほどいるわけではない。
警察官の方たちは今夜の警備に駆り出されているそうだ。
名古屋は大都市だし、私達の浴衣は貸し衣装で何とでもなる。
そんなこんなで、式典は始まった。
場所は名古屋市にある立派な公園だ。
岐阜と愛知の各自治体から表彰が、有志連合に参加した人に贈られた。
100人近い有志の協力者。
今回の件で、会社から重機を搔き集めて参加した人もいる。
重機のほとんどが、その後の戦闘で大破してしまっている。
仕事に必須な重機だが、これについては政府が対処してくれた。
緊急事態宣言下においての必須の損失だったということで、
重機を失った企業や持ち主について補償が入ったのだ。
事件を認めるのは遅くなりそうだが、
あのまま事態が進行していれば、経済損失は計り知れないものに、
なっただろう。
そこは迅速に前倒しで判断して、政府対応がされたのだ。
各知事や市長によるお言葉と各業界の有識者による挨拶。
警察庁からの感謝等、長い長い式典はお昼を少し過ぎた頃、閉幕した。
私達は、名古屋市で用意してくれた会場で、
少し遅い昼食を食べることになった。
その後は、ちょっとした懇親会が行われた。
まあ式典でも驚いたが、有志連合の参加者には女性も多かった。
うん、まあ今の時代、あまり重機を動かす操縦手の成り手がいない。
そんなところに、何故か女性の進出が増加しているのだそうだ。
まあ考えてみれば不思議ではない。
男女問わず、変わらない魅力があるのだろう。
昔、あまり女性が入っていなかったのは、
そういう風潮があったのだろう。
しかし、今は何処も人手不足だし、もう時代も進み続けている。
皆、何に憧れてもそれは個人の自由なのだ。
法律に触れない限りは。
さて、時間は午後3時を過ぎた。
参加者用に準備された更衣室へ行くとしよう。
ううむ、女性用浴衣など着たことないのだが。
てっきり、レンタルの浴衣が並んでいるのかと思ったら、
岐阜の伝統的染め物から生まれた浴衣が用意されていた。
こういうのって高いのでは?
そう思っていたら係の人から理由を聞けた。
今回の祭りには例のローカルテレビ局からの取材が入るそうだ。
民間としては最後まで現場を実況し続けたので、
映像を購入するスポンサーに恵まれたそうだ。
全国区の大手からスポンサーが現れ、
その関係で岐阜の特産をアピールする機会が得られた。
そんな中、この祭りの放映権ももぎ取ったテレビの人が、
有志の人に直接取材するという企画を立てたみたいだ。
そんな係の人は岐阜市から頼まれた着付け専門の人だった。
天明さんと私が白を基調とした涼し気な浴衣で、
アテナさんが藍を基調とした浴衣だ。
天明さんは、元より白が良く似合い、
もはやパーソナルカラーとなっている。
落ち着いた和風女性に見える彼女だが、
その性格は結構のんびりしていて、見ていて長閑だ。
アテナさんは見た目金髪碧眼の華やかな美女であるが、
落ち着いた藍色の浴衣がその姿に妙に似合う感じだ。
彼女の方は普段の言動通り、その見た目と違い、
さっぱり、きっぱりの漢らしい性格である。
彼女達に共通するのは、凛としていて、
いつでも堂々としていることだ。
うん。
彼女達はある意味、個性的な持論を持っている。
そこに裏表はないのだ。
いよいよ、着付けも終わり、
お祭りの始りだ。
ちなみに着付けは、例の係の人に手伝ってもらった。
私やアテナさんだけでなく、天明さんも!




