第75話 帰郷
1週間後、名古屋へ行く予定になったのだが、
その前に、私は故郷に顔見せに行くことになった。
あれから2日後の夜、
実家の母からメールが入ったのだ。
私の両親は、SNSなどを使っていない。
ただ、スマホだけは一応持っている。
よく考えてみれば、元の家である安アパートのあった場所は、
例の御使いが放った刺客によって少なからず破壊された。
テレビの報道番組でも取り上げられていたが、
今回の事件をきっかけに、不審な事件として再び注目されている。
我が両親は、まだテレビ世代だった。
ちなみに私もネットニュースは見るが、テレビも見る。
皆、テレビを侮ってはいけない。
最近の人はテレビを見ないそうだが、
確かに一部はマンネリ化している節はある。
しかし、このAIが普及するご時世である。
どんなニュースであろうと信頼性という部分で、
テレビの番組は価値あるものだ。
何せ、彼らは自分の報道に対して、責任を取る用意がある。
そして、何気なく見ている番組にも、工夫がみられる。
ネットは自分が興味のないことに対して、余りに脆弱だ。
そう自分が知らないことについては、検索のしようがない。
その点、テレビは新たな気づきを得ることもできる。
大半は興味の出ないことかもしれないが、
一部、本当に重要な出会いをもたらすことがあるのだ。
話が脱線してしまった。
母からは電話が何回かあったが、
今の私は、この姿である。
正直、私は結婚もしていないのだから、
女性が私のスマホに出ることはありえないだろう。
正直どうしたらいいのか分からなかった私は、
同僚二人に相談してみた。
「行ってみればいいじゃないですかぁ。
七果さんというか七福さんのご両親ですよね。
大丈夫ですよぉ。」
軽い返事を返してくる天明さん。
アテナさんも、
「ふむ、色々あったからな。
ご両親も心配しているのだろう。
帰って、一度顔を見せれば安心してもらえるだろう。
私の父も定期的に顔を見せに来るよう連絡が来るぞ。
親というものは、何処も変わらないものだな。」
そんなことを言い出した。
うん、皆どうかしているのでは?
今のこの姿、どこに昔の面影があるだろう。
40過ぎのおっさんが、今は十代半ばの少女の姿である。
確かに今、怪物騒ぎが世間では巻き起こっている。
しかし、それはそれである。
そして、両親は信心深いとかではない。
むしろ、無神論者である。
幽霊などいないし、宇宙人もいない。
そしてSFやファンタジーが嫌いだった。
そのことを二人に伝えるが、
「ああ、そんなことですかぁ。
一応、知っていると思いますけど、
昔からそういう事はあったんですよぉ。
男性が女性になったとかは聞いたことないですけど、
年齢自体を誤魔化している存在とか身元の改ざんとかありますよぉ。」
「今は分かってもらえると思いますけど、
この星には地球人しかいないわけではないんです。
寿命のない人なんかは、それなりに対策があります。
政府にも何人も関係者はいますし、
そもそも今の科学を支えているのも、そういう存在なんですよぉ。」
「一口に科学といっても、異郷由来の技術は沢山あるんです。
顕微鏡も発達していない時代に、原子を発見して爆弾に応用したとか。
異郷から来た人が漏らしたヒント。
直接研究に関わってなくても、ヒントになる出来事を起こしたとか
地球が出来て40億年以上になりますけど、
それでも存在する放射性元素とか。
あれって何万年ほどで安定したただの物質になるはずですよね。
でも現在何故か見つかっている。
それなりの量が。
いつウランとか出来たんでしょうね?
ちなみに地球の人たちは、核兵器は破壊力の割に、
お安いと思っているようですけど。
あれってウランという物質を作り出すのに高度な技術がいるんですよぉ。
実はとてもお高い兵器なんですよぉ。」
「というわけで、この星にはいろんな人が混在しています。
まあ、お分かりのように、例の御使いさん達もそこに手を入れています。
七果さんと元の七福さんは、地球の人達にとっては同一人物に見えます。
認識的にそこに齟齬が出ないようになっているんです。
警察の方が、明らかに違う写真、性別、年齢のマイナンバーカードに、
不審を抱かなかったでしょう?」
「まあ行ってみればわかりますよぉ。」
と言う天明さんの説明を聞いて、一度帰郷することにした私。
ちなみに同僚二人も同行するそうだ。
私の故郷は福井県である。
まあ、ここでは割愛するが、私もそれなりに田舎の街で生まれ育った。
そして、今、アテナさんの運転する車で実家へと戻ってきた私。
チャイムを鳴らすと、「はあい」と言う返事が聞こえてくる。
母の声だ。
私はかなり緊張している。
声が震えないか心配だ。
ガチャと扉が開かれる。
「あら、源治。
おかえりなさい。
まったく連絡もないし、心配してたのに!」
そんないつもの調子の母だったが、
不意に言葉を止め、私の顔をじっと見つめる。
そして、何故かその目から涙がこぼれた。
「あれ、おかしいわね。
なんだか、とてもほっとした。」
止めどなく涙を流す母。
「母さん、ただいま。」
私はそれだけを言って、口をすぼめた。
それから、天明さんとアテナさんを紹介した。
家には父もいたが、普段無口なはずの父が今日は饒舌だった。
実家の客間に通された同僚二人は、
なんだか楽しそうに両親と話していた。
私はその光景を見ながら、何か実家が近くて遠く感じていた。
それでも、そんな両親を見たらその感傷は吹き飛んだ。
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さて、色々あった帰郷だが、翌日には京都に帰ることになっている。
というか、私達は研究所に勤めているのである。
それが漫画本を研究することであっても。
ちなみに、
私はアテナさんと身に着いた力の使い方について学んでいるのだが。
で、やはりここでもグルメ旅が始まった。
付き添ってくれた同僚二人には感謝している。
今回は積極的に歓迎しよう。
福井といえば、カニ、かつ丼と蕎麦である。
まあ、カニは時期がもう過ぎている。
また今度の機会になるだろう。
蕎麦はかなり有名だが、結構店が限られる。
かつ丼も全国に誇れる味である。
あと、皆知らないだろうから紹介すると
実はもう2つほどあまり知られていないものがある。
まあ知っている人は知っているだろうが。
小さな鯛と福井で検索すれば、出てくるだろう。
これが非常に美味しい。
県内屈指の美味なのだが、それ故に高級品だ。
あとは水、和菓子 福井で検索する甘味も素晴らしいのだ。
ちなみに
ようかんのほうではないやつは県内でしか流通していないようだ。
美味いが日持ちしないので。
天明さんは昼食にかつ丼を大盛で食べたうえに、
お土産として鯛?の方を買っていた。
しかし、その夜、お土産のはずなのに、実家でワサビに醤油で、
彼女達は食べてしまった
ついでに和菓子のほうも無くなった。
結局、1日滞在するだけのはずが、2日遅れで京都へ戻る私達。
来るときは緊張や不安もあったが、
帰ってきて良かったと思う私だった。




