第63話 岐阜、絶対防衛線その1 集結
コンビニのテレビでは、緊急速報がいまだ流れている。
私達は、とにかくアテナさんとの合流を目指し、
161号線へと向かうことにした。
既に状況は動いている。
ここに来る前に、小野寺所長が車の必要性を、
指摘していたが、今まさに移動手段としての車が必要だ。
あの軍勢はどうみても徒歩での行軍になるはずだ。
車があれば、追い付くこともできるはず。
しかし、追い付いて何が出来るだろう?
あれほどの大軍だ。
もはやあの威容の前に、私達が行ったところで勝ち目は薄い。
巨人100体とか無理だ!
鬼やら天狗やらの妖だって、1対1ならともかくあんな数だ。
その上、幽鬼な骸骨が強敵と戦っている中、
間断なく襲ってくるだろう。
そして、妖狐に4首ある巨大蛇だと。
どうしろというのだ!
はあ、はあ、はあ、もう皆疲れている。
直接戦闘した私はもちろん、天明さんの本領はその術にある。
体力勝負な武闘派などではないのだ。
小野寺所長は電動アシストな自転車だが、
天明さんは私と同じく走って着いて来ている。
「みんな、大丈夫ですか?」
走りながら声を掛けるが、自転車の所長ですら息を切らしている。
天明さんは、「大丈夫ですよぉ。」と、
いつもと同じように答えてくるが、足元は怪しい感じだ。
しばらく進むと、警官隊がいる場所を発見した。
どうやら、先に突入した京都方面からの機動隊のようだ。
その配置は明らかに今来た駅前に対し、布陣されている。
私達をみた警官の一人が、駆け寄ってくる。
「止まってください!
どちらから来られましたか?」
と詰問される。
無理もない駅前方面には、あの将がいた。
ここまでの道中、確かに破壊された後はあったが、
そのほとんどは大きな商業施設である。
それも中はほとんど荒らされていないようだった。
目立つよう派手に通りを中心に暴れて見せたのだろう。
建物の中に入れば、活動が見えなくなる。
人を襲っていないのも、情報の拡散を早めるためなのだろう。
ある程度、暴れて見せてその地域の情報を隔離する。
そうすれば、憶測を呼んで過剰な対応をするはずだ。
要するに、卑弥呼側にここへ割く兵力はそこまでなかったのだ。
警官の相手は小野寺所長が対処してくれた。
捕まると動けなくなると思ったのだが、
そこは、所長が責任者として残り、
パトカーで私達を湖西側の161号線まで送ってくれることになった。
私達の他に、向こう側に知り合いが来ている、
と話したのも効果的だったのだろう。
その際、小野寺所長は研究所に連絡を入れていたのだが、
「七果君に天明女史。
クランベリー君と合流したら、そのまま京都に戻ってくれたまえ。」
え?
例の本陣はどうするんだ?
そんな私の疑問に、
「そちらの方は研究所の方から人を派遣する。
君達の会社から人員が手配されていると聞いた。
それとクランベリー君宛てに送られてきたモノを実戦投入するそうだ。
だから、彼女の承認が必要になるそうだよ。」
今一つ腑に落ちない私だったが、天明さんは了承し、
パトカーで湖西側の規制線へ送られた。
すると、アテナさんが既に到着し待っていた。
「大丈夫か、七果、天明も。
小野寺殿はどうしたのだ。」
と声を掛けてくる彼女に、
「はあ、はあ、大丈夫ですよぉ。
七果さんは結構危ない目に合いましたけど、
何とか無事ですよぉ。
所長は警察の方への事情説明に残りましたぁ。」
天明さんが答え、私も大丈夫と腕を回す。
ここまで送ってくれた警察の人が、
アテナさんの車を規制線の中に入れてくれた。
通信が回復し、湖西方面に武装集団が現れたことが
知らされたのだ。
大津市は解放されつつあるし、
ここを襲った集団は、この街を抜けて行ったと思われている。
私達は、アテナさんの車に乗り、
パトカーの先導を受けて、京都へと帰り着いた。
もう空が明るくなり始めている。
しかし、まだ終わったわけではない。
私達は車で京都駅へと向かう。
話を聞いたアテナさんが、本社に連絡した際、
名古屋の支部が持つ配送センターに来るよう指示されたのだ。
京都駅で始発の新幹線の席を予約した私達。
今はまだ午前5時45分、あと30分くらい時間がある。
私達は、駅内のテレビを見ることにした。
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総理官邸、緊急対策本部。
その場所には防衛相の幹部と警察庁長官、そして公安委員会の数名が、
集められていた。
先程まで、各省の閣僚と緊急会議が行われていた。
総理
「実際、この武装グループは止められるのかな?」
テレビでは、朝早く、各社の報道ヘリが、件の武装集団を捉えていた。
その集団は、多くの怪物で構成されていた。
防衛相幹部の一人がその質問に答える。
「そうですな、
まさか、こんなファンタジー映画のようなことが、
実際に起きるとは想定していなかったのですが。」
そこで一旦区切り、先程の会議で配布された資料に目を向ける。
続き、
「現在、普通科連隊と機甲師団を招集していますが、
今戦闘の為、動かせる陸自の部隊は少ないですな。
戦車が十分な数、確保できればいいのですが、
我が国の戦車隊は道内と沖縄の離島防衛に回されています。」
「この兵に見える人型であれば、普通科連隊で何とかできるとは、
思いますが、
この巨人どもとグループの主力であろう怪物には
効果が薄いでしょう。
とにかく、敵の情報が必要です。
可能であれば、交渉して時間を稼ぎたいものですが、
どう見ても、主犯格の女以外は化け物ですから。」
総理
「公安は何も情報を掴んでいないのかな。」
公安委員長
「あの地域では最近不可解な出来事が頻発していますが、
我々はあくまで化け物を相手にしていませんから。
こういう事態は全く想定されてなかったのです。」
「UAPなど、我が国での扱いは都市伝説の類です。
常識的な対応だったのですが、それが今は悔やまれます。」
総理
「はあ、それで今私達に出来る事がコレですか。」
警察庁長官
「現在、岐阜市の手前、関ケ原方面に警官隊を配置予定です。
首都圏、愛知県警及び近隣地域から機動隊やSATも動員中です。
岐阜市に武装グループが入った場合、相当な被害が予想されます。」
防衛相幹部
「それはいけません。
市内では、巨人らに対抗できる手段が限られてしまいます。
岐阜市から名古屋へと侵攻されれば、
陸自の装備を万全に活用できなくなります。
特にこの武装グループの主力との戦いが不利になります。」
総理
「はあ、もうこれは敵だろう。
武装グループとか言っているが、
もはや侵略軍でしょう。」
「で、岐阜に入った辺りで、
空自による空爆を行うと。」
防衛相幹部
「避難誘導が済み次第ですが、
敵の、特に5メートル越えの巨人や数十メートルもある怪物は、
何としても、ここで仕留めなければ岐阜市防衛は無理です。
市内に入られれば、有効な手段が無くなります。」
「戦車隊が到着しても、ビル群がある市街地での戦闘では、
我が方の損害が激しいものとなります。」
「都市部で空爆したとしても、建物の被害が大きくなるだけです。
反対に敵勢力が身を隠す場所を与えることになりかねない。
我々の武装はあくまで対人用に開発されたものです。
こんな状況に対応できるものは少ないのです。」
「空自の誘導爆弾を有効に使うには、
岐阜に入るこの開けた地が最適。
ここを無傷で抜けられたら、
警察や陸自の部隊では対応できません。」
「総理、ご決断をお願いします。
もはや本土侵攻事態です。
映像を見ても、彼らは人ではありません。
自衛権関連の法律や憲法上の違反など皆無の事態です。」
総理
「はあ、昨日からどうしてこう色々起こるのか、、」
居並ぶ皆の顔に疲れが滲み出ていた。
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京都駅で新幹線に乗り込んだ私達。
テレビで見たニュースでは、
報道ヘリのカメラにより、卑弥呼の軍勢が映されていた。
滋賀県関ケ原エリアの避難勧告が追加され、
即時の避難が要請されていた。
新幹線の発車まで15分。
ホームを見ると見知った顔を見つけた。
右藤住職と例の事件で集められていた僧侶たちだ。
しかし、今回は前より僧侶の数は多く、
更に右藤住職より風格のある年配の僧侶だろう人が複数見受けられる。
この集団もこの新幹線に乗るようだ。
決戦に向け、名古屋の地を目指す人々が集結しだしている。
女王卑弥呼の軍団は、ゆっくりと滋賀の地を東へ進んでいた。




