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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第5章 信じるは絆、太陽が昇る時
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第62話 大征伐

午前3時。


邪馬台国の将、狗礼谷比古を倒した私達だったが、

どうやら、ここの襲撃は時間稼ぎだったらしい。


早くアテナさんと合流し、

本陣にあると思われる核を破壊しなければ。


このままでは、毒蛇の封印が解かれてしまう。


幸い、大津の街に電力等が戻ってきた。

結界の類が解消されたらしい。


これなら、アテナさんと連絡が取れるかもしれない。


私は早速、スマホでアテナさんに電話する。


すると、


「七果か!」


とアテナさんの声が、スマホから流れる。


「そうです、アテナさん。

 大津はやはり囮でした。

 早く女王の本陣に行かないと!」


と答える私に、


「それどころではないぞ!

 七果、天明もいるな。」


と、アテナさんが確認してくる。


おかしい。

アテナさんの声が必要以上に焦っている気がする。

元々、大津は囮かも、と話は出ていたはずなのに。


「皆、よく聞いてくれ。

 卑弥呼の本陣と思われる場所を偵察してきた。

 今私は滋賀に入って、大橋なる場所を越えた。

 国道161号をそちらに向かって走っている。」


「本陣だが、数千規模の幽鬼や大鬼、天狗などの妖に加え、

 巨人などが女王の元に集結している。

 またヒュドラらしき多頭の蛇が1体、その軍勢の中央に混じっている。」


「遠くからしか見れなかったが、数十メートルの大きさを持つ怪物だ。

 おかしいぞ。

 あの物々しさ、まるで戦に出る様子だった。

 とにかく、後20分程でそちらに着く。

 急いで、そこから抜け出してくれ。」


そういうアテナさんは、こちらのスマホに、

偵察で撮影したであろう動画を添付したメールを送信してきた。


急いで確認すると、かなり遠距離だが、たいまつが焚かれ、

多くの骸骨の兵士や鬼などの妖の姿があった。

今までも遭遇してきた化生たちだが、今回はその規模が違った。


山の裾野にあると思われる本陣だったが、

そこに夥しい数の化生が集まっている。


そこかしこに、たいまつが焚かれており、

その光により照らし出された大きな巨躯を持つ巨人が、

数十体ほど見える。


さらに巨大なのが、本陣中央部にいる頭が4つある大蛇だ。

体長50メートルあるかという大きさ。


小野寺所長が、「ううむ、これは読めなかったな。」と呟く。


そう正しく、これは戦支度のようだった。


私達の読みでは、今日の夜、儀式を行い幾らかの日を掛けて、

東京にある遺跡から毒蛇が復活すると思われていた。


しかし、これはどうだろう?

どう見ても、今からどこかを攻め落としに行くみたいな雰囲気だ。


天明さんも珍しく顔を顰めている。


とにかく、161号線方面へと抜けなければ、

今はまだ警察の規制線が張られているはずだ。


アテナさんと合流するには、

再び規制線の外に出なければならない


ここでの事件は終了したが、警察はそんなことは知らない。

恐らく今日明日いっぱいはここの封鎖は解かれないだろう。


移動し始めた私達は、あるコンビニの前で立ち止まる。


駅前を少し北に進んだところにあり、

そこには数人の人がまだいた。


良かった、まだここは駅からそこまで離れていない。


この場所に人がいるなら、

あの狐の言葉通り、人的被害はなさそうだ。


急がなければ!

その思いが、先へ進めと急かすが、

ふと、コンビニの中の様子が気にかかった。


中に隠れていたであろう人達が、

電気の復旧した店内の一角に集まっている。


皆同様に同じ方向を見ている。


なんだ?

私は少し気になり、コンビニのドアを潜った。


中の人達が注目しているほうを見ると、

店内にあるテレビでニュースを放送しているようだった。


緊急速報だったので、多分この大津市の事だろうと思ったのだが。


ニュースキャスター

「繰り返します。

 先程、政府から緊急避難勧告が発せられました。

 避難地域は、滋賀県東部、木ノ本、高月から

 福井県嶺南地域、敦賀市、美浜町、岐阜県西部、、」


「最新情報によりますと、

 昨日から今日深夜にかけて滋賀県大津市を襲った、

 武装集団からの犯行声明が届いております。」


「現在も、まだ滋賀県大津市は警察により封鎖中ですが、

 その最中、犯行を実行したと思われる組織から

 声明が複数のテレビ局に届きました。」


「それでは、その映像を。」


テレビに、

白を基調とした厳かな装束に包む20代くらいの女性が映った。


「妾は、邪馬台諸王国の卑弥呼。

 かつて、この地で巫女の座にあった者じゃ。」


「今は忘れられたであろう我らじゃが、

 まだ妾には、この地で為さなければならぬことがある。

 妾は、この地での復権など望んでおらぬし、

 我らの前に立ち塞がらないのであれば、危害を加えぬと約束しよう。」


「妾の望みはただ一つ。

 我が妹を取り返すこと。」


「かつて、我らを襲った病魔を放った者どもよ!

 我らは、貴様らを討伐するため、

 そして、我が愛する妹を救い出すため、

 再び立ち上がった。」


女性は一瞬寂しそうな、悲しそうな表情を浮かべたが、

次の瞬間、決意に満ちた声を発する。


「此度は負けぬ!

 我らは持てる全てを持って、汝らを討伐する!

 今だ、この国に巣くうておるのは分かっている。

 異郷より来たりし悪魔どもめ!

 今度こそ、奪われた妹の御霊を返してもらうぞ!」


「皆のもの、妾は卑弥呼。

 今は忘れられし国の女王じゃ。

 これより、我が悲願のため、無念に死んでいった我が民の為、

 そして、愛しき我が妹の為、今宵、我らは死兵となる!」


「火を掲げよ!

 妾に続け!

 この地に忘れられし者たちよ。

 今、この一瞬に妾達のすべてを捧げよう!

 八百万の神々よ!

 受け取れ、そして我らに勝利を!」


「これより、東征を開始する!!」


「「「 全軍、進撃開始 !!!」」」


古代の太鼓や笛の音が、その場に響き、

鬼や天狗と言った妖の雄叫び、

そして、骸骨の兵士の声なき怨嗟が木霊する。


整然と並ぶ妖の軍勢が、山側から琵琶湖への道を下り始めた。


最後に百体以上の巨人の列と

その数倍はある巨大な4つの頭を持つ大蛇が映された。 


映像が切り替えられ、


ニュースキャスター

「以上が犯行組織からの声明です。

 なお、画像の真偽についてですが、

 数時間前からいくつかの情報がネット内で流れており、

 今現在多数の目撃情報が寄せられています。」


「また、昨日の深夜起こった

 滋賀県大津市での武装グループ襲撃事件との関連も噂されており、

 政府は、近隣住民の一時避難を勧告しました。」


「情報が錯綜しております。

 住民の方々は、慌てず当該地域から離れてください。

 なお、武装組織は滋賀湖西、マキノから東寄りの地域にいる

 と思われます。

 画像と目撃情報から、この地域から東へと進んでいると思われ、

 現在、この集団の正確な位置を調査中です。」


「皆さま、どうかこの集団を見かけても近寄らないでください。

 武装組織の規模は不明ですが、

 数千単位の構成員がいる可能性があります。

 集団との遭遇が想定される地域としましては、、、」


私達は呆然とそのニュースを見守るしかなかった。


その日、再び大きな運命の扉が開かれた。


一体、未来へと続くこの道は、

私達をどこへ連れて行こうとしているのだろうか?

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