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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第4章 陽の光が地に堕ちる刻
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第58話 対策

私達は、岐阜の遺跡から研究所に帰ってきた。


着いたのが、遅い時間だったが、

小野寺所長はまだ所内に残っていた。


彼に加賀崎さんのチームが、無事であることを伝えると、

彼はほっとしたようだ。


ただ、あそこの遺跡が事の詳細を伝えるための文書保管庫だったと、

知ると他の地域で見つかった遺跡の危険性を指摘してきた。


そうなのだ。

加賀崎さんのチームがいたのは、

エンキタンが後世に毒蛇の悲劇を伝えるため作った場所だった。



そして、列焼英さんの言うことを信じるなら、

毒蛇を引き裂き封印した場所が8つあるということだ


つまり、同時期に発見された他の遺跡は、

高確率で引き裂かれた毒蛇の一部が封印されているかもしれないのだ。


というか、多分そうなのだろう。


まだ発見された全ての遺跡に調査チームが、

派遣されているわけではないそうだが、

この研究所のように早い段階で調査を始めた大学とかあるらしい。


発見当初からその年代が古いことから、

日本の古代史を塗り替える遺跡として、

その界隈から注目の目で見られていたらしい。


既に先んじて調査に乗り出したチームもあり、

現在連絡が取れていないチームは、この研究所の他に二つ。


今は調査自体を控えるように連絡が回っているが、

行方知れずの2つのチームを見つける必要がある。


小野寺所長はそんな話をしながら、


「いや、本当に有難う。

 加賀崎君のチームが無事で良かった。

 こんなことを言うのは他の行方不明者の手前、不謹慎かもだが、

 私は本当にほっとしているよ。」


「後のことは、私の方で話してみるから安心してほしい。

 今後の調査については明日話そう。

 本当にご苦労だったね。

 今日はゆっくり休んでくれたまえ。」


そう言って、彼は私達を所長室から送り出した。


夜、6時40分。

あれから私達は、人事部で今夜から使う社員寮の鍵を貰った。

ちなみに天明さんもこの事件中は社員寮に泊るそうだ。


そして、今は夕食中。

ここの社員食堂は、日替わりのメニューに加え食券を買うことで、

食べられる特別メニューがある。


研究員は研究所で生活している人もいるし、

食事を1食しかとらない人もいる。


そのため、ストレス解消、栄養バランスなどを鑑みて、

食券として売られているものは、

高級レストラン並みのメニューが並んでいる。


そんな中、天明さんの今日の食事は中華である。

列焼英さんを見てから、ずっと食べたかったそうだ。


ちなみに、列焼英さんの出自は中国由来という訳ではない。


ただ単に、当時の日本で使われていた文字は漢字が主流であり、

邪馬台国との交渉で彼らの名前を漢字に充てたらそうなったらしい。


ペキンダックって美味しいのだろうか?


アテナさんは、ステーキである。

いつぞやのファミレスステーキと違う

A5ランクの分厚いステーキに彼女は満足そうだ。


私は普通に日替わりだ。

今日はあじがメインの焼き魚定食。

シンプルだが、とても美味しい。


4人席に陣取り食事を楽しむ私達。


私は行方不明の2つのチームについてどうなるのか?

そんな話題を同僚に向けた。


「うん?

 七果は、そんなに気になるのか?」


とそんな私の話にアテナさんが聞いてくる。


「はあ、前の時は、遺跡の部分に骸骨やら巨人とかが出ましたし。

 大丈夫でしょうか?」


そう答える私に、


「どうでしょうねぇ。

 でも、私達以外にも特殊な力を持っている方はそれなりにいますよ。」


「右藤さんとか見たでしょう。

 あとあそこには、他にも僧侶の方がいましたよねぇ。」


「毒蛇の引き裂かれた分体とかなら別でしょうけど、

 あの幽鬼とかなら、十分対処できますよぉ。

 一般には知られていませんけど、

 こういう事件って結構起きているんですよぉ。

 日本で年間の行方不明者って、最近は7万人以上いるんです。

 そのほとんどが事件として取り上げられていません。

 要するにそういう事です。」


ううむ、、

何か今まで知らなかっただけで、色々起きていたようだ。


そんな話から、明日の事に話題が流れる。


アテナさんは、


「明日は、私は一緒に行けない。

 少し東京の方へ行ってくる。」


と言ってくる。


私は、「蛇の遺跡を見てくるんですか?」と聞くと、


「いや、私の故郷に連絡を取っていてな。

 明日、届け物が本社に届くのだ。

 重要物だから、私本人が受け取る必要があってな。」


”もう小野寺殿には言ってある”


と彼女は付け加えた。


となると私達は所長次第だけど、右藤住職のいる加具茂寺に行くかな。

金剛について、聞かないと。


それからも話は続き、

私達は各自、新たな自室へと戻る。


ーーーーー


翌日、朝食を終えた天明さんと私は、所長室へと向かった。

アテナさんは朝早く、東京行きの新幹線に乗り旅立った。


小野寺所長から今日何か予定があるのか聞いたのだが、

加賀崎さんのチームからまだ連絡はなく、

今日は各々待機してほしいそうだ。


なので所長に、今日は加具茂寺に行くことを伝える。


金剛と毒蛇の関係性を聞くためだと言うと、

二つ返事で許可が出た。


うん、まあ私達は今この研究所で働く職員なのだ。

勤務中なので、勝手な行動はできない。


今回は、バス移動である。

今までは付近まで自転車だったり、車だったりしたのだが、

あのお寺、地元では有名らしく近くまでのバス路線がある。


まあ、この研究所からもバスを乗り継げば行ける。


さて、加具茂寺付近に移動した私達は、徒歩で寺へと向かう。


するとお寺の前に、大きな外車が停まっていた。


加具茂寺は歴史あるお寺ではあるが、

高級外車でVIPがやってくるほどじゃないはずだ。


非常に失礼かもしれないが、明らかに場違いな車である。


天明さんも興味津々なのか、ゆっくりとそちらの方を眺めている。


すると、何やら知った顔が修復されたであろう寺の門から出てきた。


私はその見覚えのある顔に声を掛けた。


「すみません。

 あの時の天使な人ですよね。」


そんな訳の分からない発言に、その人物は過剰に反応した。


「ううん、嬢ちゃんみたいなのに知り合いはいないが。」


と流暢な日本語で答える外国人男性。


そのまま、天明さんの方を見て、


「あれ、あんたはあの時の?

 この嬢ちゃんはあんたのお仲間か?」


と彼女に向けて聞いてくる。


天明さんは、「まあ、そんな感じです。」と答えている。


あれから彼らはこの寺から立ち去ったはずだが。


私は再び、口を開く。


「あの右藤住職は中にいらっしゃいますか?」


と聞くと、


「ああ、いるぜ。

 まだ所要があるみたいだが。」


「こっちの用事もまだ終わってないんだ。

 おっとこの車を退けないとな。」


と答え、男性は車の運転席に乗り、車を移動させる。


ふむ、外国人男性は前の時に共闘した、確かサリエルとか言ったな。


何かあるんだろうか?


私達は寺の門をくぐり境内へと入る。


誰かいないかと本殿の方へ向かうと、


右藤住職と何か場違いな外国人男性が会話していた。


うーん、とても落ち着いた品のある雰囲気に、

その身に着けた高級そうな服装。


20代だろうか、眼鏡を掛けた端正な顔立ちからは、

どこかの貴人か何かを思い起こさせる。


うむ、私の今の性別が女性だから、こんな描写があるわけではない。

何処をどう見ても、その男性からはそんな印象を受けとれるのだ。


昨日会った書庫の番人、列焼英さんも大した貴人だったが、

あちらは武将のような感覚だった。


こちらの男性はどちらかと言えば、昔の大貴族。

物語に出てくるような皇子な外見と風格だ。


そんな感想を抱く私の傍らで、

天明さんが、右藤住職に話しかけた。


うむ、さすが天明さんだ!

何か近寄りがたい雰囲気の中、割って入るその勇気。


「すみません、前にお世話になった天明ですが、

 今お話いいでしょうか?」


どうみても二人で話をしているので、いい訳がないはずだが、


「うん?ああ、申し訳ない。

 住職殿を長く拘束してしまったようだ。

 右藤殿、私は後でいいので、

 こちらのお嬢さん方のお話を聞いてあげてくれないか?」


その貴人は話の途中であろうに、

丁寧に私達へ優先権を譲ってくれた。


そして、彼は少し離れた母屋の方へと向かう。

何やら困っている人に手を貸している。


「天明殿、久しぶりですな。

 そちらは同僚の方ですかな。」


と右藤住職が聞いてきた。


「ええ、そうですね。」


と天明さんは答え、私に目を向ける。


「初めまして、七福七果と言います。

 以前は叔父がお世話になりました。


と予め用意していた設定を語る。


「ほう、七福殿の姪御さんかな。

 叔父さんは元気かな?」


と答える住職に合わせる私達。


そして、今回の騒動について説明する。


右藤住職も前の時は幽鬼や妖と戦っていた。

この方面での知識は明るいはずだ。


天明さんが、金剛とその類似するだろう毒蛇について、

質問する。


「ふむ、七福殿に譲った金剛どのは、

 確かに以前は木の像だったそうだ。」


「この寺は平安の時よりも古い歴史がある。

 寺にあるご本尊はもちろん、他の仏像も長く地元で愛されている。」


「金剛どのはそのような中で、前のような妖から衆生を守るため、

 生まれたと聞いている。

 村々を襲う怪異に対し、祭られた像が動き出し立ち向かった。

 そんな伝承が各地に存在する。

 各地にお地蔵などがあるだろう。

 あれは地蔵尊を形作っているのだが、それと習合されてな。

 そういう守り神のような像が、この寺に大切に保管されているのだ。」


「私も仏の道に生きる者、

 若い頃は悪鬼羅刹と立ち向かうため修行をしたものだ。

 まあ、本来は修行とは悟りの道に至るためなのだがな。」


「しかし、その蛇を作ったという者は信仰ではなく、

 悪鬼どもを習合し、一つの鬼としたのかもしれぬ。

 同じ思想と感情、重きカルマを抱える者たちを習合し、

 悪しき妖に仕立てる。」


そんな言葉に私は、


「兵を蘇らせ戦わせたらしいのですが、

 それでも負のエネルギーが発生するのでしょうか?」


と聞き返した。


そう、例え今は悪鬼と呼ばれても生きていた頃は只の兵士だった、

可能性が高い。


それでも、そんな強い負の感情は起こるのか?


私の疑問に対し、右藤住職は、


「うむ、そもそも、死して安寧を得るのが普通なのだ。

 例え死という苦しみを経てもな。

 しかし、件の兵士は死しても戦わされた。

 自分の意思に沿わずにな。

 その遺恨は相応の負のエネルギーとなるだろう。

 そして、周りに飲み込まれ、やがて負のカルマを負う者となる。」


「負のカルマを負った者として、意思が統一され習合する。

 急ごしらえの信仰だが、より強い負の側面で繋がり、

 素となる何かを核に纏まった。

 ただそれゆえに、何か別のものに乗っ取られることも多い。

 単なる攻撃的意思は、簡素なものだ。

 別の強い意志に容易く従わされる。」


と答えてきた。


私は、


「それなら、その核となるものを壊せば、

 毒蛇は存在できなくなるのでしょうか?」


と聞く。


「そうですな、確かに金剛どのはそのような性質がある。

 本来は仏像の一体ですからな。

 ただ件の毒蛇は身体を裂かれても消えなかったそうですな。

 そうなると、素となるモノは余程特殊なものでしょうな。」


と答える右藤住職に、

天明さんが東京にそういう怪物が復活しようとしていると告げる。


「それは、また厄介ですな。

 おそらく、素になる核を壊せば完全に地に帰るはずですが、

 壊せなければ、負のカルマによりまた復活するでしょう。」


「何とも言えぬが、人の負のカルマを集め終わり、

 今再び、その蛇は復活しようとしているのかもしれませんな。」


と住職は推測をまじえて答えてくれる。


なるほど、過去にあったエネルギーを再び溜め終わったから、

今動き出したのか。


そもそも、封印自体は毒蛇本体にかかっている。

しかし、核となるモノに何も対策は打たれていなかった。


毒蛇は色々な攻撃を喰らって、エネルギーを失ってしまった。


さらに封印された身体部分は力無く動けなかったが、

つい最近、封印を超えるだけの力を集め終えたため、

動き出したのか。


動力源を封印していなかったのが、

今回の事件に通じている。


そんな話をしていると、先程の外国人が近くに寄ってきた。


「面白そうなお話をしていますね。

 どうやら、私達にも無関係ではないようだ。」


そう言う男性は、自己紹介をしてきた。


「私は、ラファエル・サンエンタングルと申します。

 長い名ですので、ラファエルとお呼びください。」


「実は、私もこの後1か月ほど東京に滞在する予定なのです。

 良ければ、お力になりますよ。お嬢さん方。」


そこにさっき車を移動させていたサリエルを名乗っている男性が

口を挟む。


うん?

何時の間に、こいつらは近づいていたのか?


「いや、ラファエルさん。

 そんなこと、やってる場合じゃないんだよ!

 こっちもあんたの友人にせっつかれているんだって!」


そう言うサリエルに、


「いやいや、女性方が危険に身を投じようとしているのに、

 貴方は何も感じないのですか?

 それに私達もあと1か月は予定が何もないでしょう。」


とラファエルさんは答えている。


うーん、この人も天使なんだな!

そして、超有名なあの天使様か、、、

いつもお読みいただき、本当に有難うございます、次回は、本当に来週日曜日午前11時です。

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