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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第4章 陽の光が地に堕ちる刻
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第57話 大蛇調査 その3 大蛇の正体

ここに来た研究チームのリーダーである加賀崎さんに、

ようやく会うことが出来た。


天明さんはまず彼女にチームの安否を確認する。


「わたしは天明。

 研究所の第15分室に出向してきたものです。

 今回、あなた方のチームと連絡が取れなくなっている、

 とお聞きしまして、小野寺所長から調査を任されました。」


「こっちの二人はわたしの同僚です。

 こちらの列焼英さんに、事情は聞いたのですが、

 改めて確認させてください。

 皆さん、全員無事なのですか?

 後、ここから出られるのでしょうか?」


天明さんの問いに、


「初めましてですね、私は加賀崎 湊。

 この研究チームのリーダーを任されています。

 チームは全員無事ですし、ここからは普通に出られますよ。」


「そちらの列焼英さんに出る方法は教えてもらいました。

 普通にあなた方の後ろにある扉から出るだけです。」


うん?

後ろにある?


そう言えば、ここに来て研究員や列焼英を名乗る男性に、

気を取られて、周りをよく確認してなかった。


確かに私達の後方に扉がある。

なるほど、あの扉を抜ければいいのか。


「それでどうして、こんなところに来られているのですか?」


と聞き返してくる加賀崎さん。


「実は、ここと同じような遺跡で、

 研究者や調査チームが行方不明になっているところがあるんです。

 それで今問題になっているそうでして、

 小野寺所長から調査してほしいと言われまして。」


「あと、わたしの同僚のこの子が、

 同様の遺跡で大蛇や謎の集団に襲われました。」


と私を指して説明する天明さん。


「大蛇に、謎の集団ですか?」


そう言って考え込む加賀崎さん。


「大蛇に関しては、封印されていた毒蛇の一体だろう。

 ただ、その集落跡を襲っていた集団については分からんな。」


偉丈夫、列焼英さんは、そんな補足を入れる。


「ここの他にも遺跡が発見されたのは知っていますが、

 調査チームが行方不明になっているのは知りませんでした。」


と、加賀崎が答える。


そもそも、彼女たちのチームはこんな変な所に飛ばされるも、

ここの管理者、列焼英さんに出会い、色々と説明を受けていた。


そして、ここから出る方法も分かったので、

危険性がないと理解したのだが、そこで研究者の魂がうずいたらしい。


列焼英さんが私達にした説明を同じように受けた彼女たちは、

今だ謎の多き日本の古代文明、特に邪馬台国についての文献を、

列焼英さんに見せてもらっていた。


ここは文書保管庫だが、過去の災禍を忘れないための記念碑でもある。

その関係上、内容は秘匿されていないらしい。


まあ、文献と言っても、当時の古語が使われており、

解読に時間がかかっているようだが。


さて、ここは安全だ。

しかし、他のところはどうだろう?


そもそも、私が関わった大蛇関連の事柄では、

封印を施した祭壇がある集落跡?を骸骨が襲っていた。

あの集団が身に着けていた装備から古代の兵隊か何かだろう。


つまり、大蛇の封印を狙う何者かがあの骸骨たちを送り込んでいる。

この場所は安全だったが、それはここに大蛇の封印が無かったから。


うーん、そもそも女王卑弥呼が存在したのは1700年も前だ。

何故、今頃になって大蛇を狙うモノが現れたのか?


まあ、最近になって色々なことが起きてはいるが、

それにしても、これは何か別件のような気がする。


そもそも、他の事件では人的被害を考慮されていた。


そう、京都でも、例の召使いもいちいち人払いをしてから、

襲撃に及んでいる。


今回も関係しているなら、

遺跡自体に人払いの何かを掛けておけばいいだけだ。


実際そうすれば世間的に発見されることすらなかったはず。


あるいは、今まではそのような処置をされていたが、

何者かに破られたか?


人的被害を考慮せず、力を持って大蛇をどうにかしようとする輩。


「列焼英さん、封印された蛇の本体って、

 ここより東にある、他より大きな施設か何かですか?」


と聞く私。

ちょっと気になることがあるのだ。


「そうだな、ここの山々を越え、大きな平野になっている辺りに、

 蛇の胴体を葬った祭壇がある。」


と答える偉丈夫。


むう、その答えに、


「もし、仮に大蛇の封印が全て解けた場合、

 その胴体のある場所に、昔の姿で復活するのでしょうか?」


再び、私は聞き返す。


すると、

「おそらくだが、全ての封印が解かれたとしても、

 以前の8頭の毒蛇が復活するわけではないはずだ。

 当時の毒蛇は、術によって縛られた兵の屍から作られた。

 そう邪馬台国の次代の王から聞いている。

 しかし、それだけなら、あそこまでの力は持てないだろう。」


「我らも異郷から来た身だ。

 前にも言ったが、異郷から何かの存在が毒蛇を依り代に、

 こちらに現れたと考えるのが筋だろう。」


「女王の制御を受け付けず、彼らの国をも襲っていたしな。

 だが、それも身体があればの話。

 異郷の怪物も身を焼かれ、完膚なきまでに引き裂かれては、

 こちらに留まることはできぬはず。

 今復活したとしても、

 現れるのは女王が作った元々の屍の蛇だろう。」


なるほど、所謂ヒュドラのユニーク個体が憑依した毒蛇は、

既に退治されたので、

復活するのはそれより弱体化した元々の制御可能な毒蛇になると。


うむ、私はこの時、シンプルにこの事を捉えていた。


女王卑弥呼は戦争に勝つため、毒蛇を用意した。


次に天明さんに問いを投げかける。


「天明さん、いつも何か術を掛ける時、

 瞑想してますけど、実際のところ、

 大きな術のコントロールって大変ですよね?」


「そうですね、制御にかなりの集中力が必要ですし、

 術の維持には沢山の霊力が必要ですね。」


私もこの身になってから、風関連の術が使えるようになった。


風の塊を生み出し、ぶつける術などは精神集中と

その身から何らかの力を消費している感覚がある。


ヒュドラが憑依して動くなら分かるが、

術によって作られた蛇が今だ動くのは理解できない。


大蛇はそれ相応の実力があった。

実際、金剛を打ち破った。

完全体ではないのに。


術と言っても、その場限りなら大きなものを放てるかもしれない。

実際、天明さんもそうしている。


だが、女王卑弥呼は既にいないし、

何らかの方法で蘇ったとしても、大蛇の謎には答えが出ない。


つまり、術の効果時間を超えて存在し、

何を力に変えているのかが不明なのだ。


本来なら術者がいなくなった時点で、

術の維持が出来なくなり、その形は保てなくなるはず。


なのに、大蛇は1700年を超えて封印から蘇った。


答えは何か?

それは、身近にあった。


大蛇に敗れて、もう壊れてしまったが、

それによく似た存在を私達は知っている。


そう金剛だ。


アテナさんは、金剛は精霊の一種だと言ったが、

どうみても金剛は人為的に作られたもののようだった。


それにヨーロッパの本社に、タロスなるゴーレムがあるという。


使用者の指示を聞き、ある程度、自律して行動する。

呼ばれて、送還するまで、特に使用者の何かを消費しない。


少なくとも、元の私は霊力とかなかったはずだ。

なのに、あの錫杖と巻物があれば何とかなった。


例のヘッドバンドが必要だったが、

それは起動するために必要だっただけだろう。


そして、金剛が倒れた時、何かの木像が残されていた。


当時は気にしていなかったが、

あれが金剛の本体なのかもしれない。


大蛇が八つに割かれても、

今だ機能するのは本体となる何かがまだ無事だから。


単純に兵の屍から作りあげたと聞いたから、

おどろおどろしく感じたが、何かの生物を誕生させたのではなく、

金剛のような存在を生み出したのかもしれない。


金剛はあの場で倒されたが、それも本体である木像が傷ついたため。


卑弥呼の大蛇は、本体である何かがまだ残っているため、

千年を超えて活動できるのではないか?


金剛もいつから存在するのか、分からないものだった。


私は自分の考えを皆に共有した。


列焼英は、


「ふむ、当時我らは見たことがなかったが、

 確かにあの毒蛇はあまりに傷を気にしなかった。

 異郷由来の高等生命であれ、傷つけられるのを嫌うのは同じ。

 ただ、ある種の霊的素体であれば、あり得るかもしれぬな。」


と同意してくれた。


天明さんは、


「なるほど、ですがそうなると人の身で、

 恐ろしく高度な技術を持っていたことになります。

 それに金剛レベルの存在を作るには、

 多くの霊的エネルギーが必要です。」


「おそらく金剛は、時間をかけて信仰を受けて、

 誕生しているはずです。」


と言ってくるが、アテナさんは何か腑に落ちたらしい。


「そうだな、確かに金剛殿を作るのは難しい。

 だが、兵たちの無念などの妄執と念のエネルギーを元に、

 何かの素体を作り上げたのかもしれないな。

 卑弥呼とやらは、戦いに勝つことが目的だったのだろう。

 金剛殿のような自律性は捨てて、攻撃と待機という命令だけに

 絞るなら、ある程度のゴーレムとなるかもしれないな。」


「だが、そうなると、卑弥呼の元にまだ毒蛇の依り代になった

 素体があることになるぞ。

 木像であれ、何であれ、それを壊さなくては毒蛇を倒せない。」


それを聞いた加賀崎さんは、


「はあ、凄いお話です!

 私の研究が捗ります。

 もうここに一生居ていいですか!」


と興奮気味の彼女だったが、こほんと咳払いして


「ここの文献には邪馬台国のあった地方について書かれています。

 ただ、現在の場所と照らし合わせるのが困難なんです。

 今調べている文献も、

 列焼英さんの所属するエンキタン側から見た情報なんです。」


「ただ、女王卑弥呼は、エンキタンに向け進軍してきました。

 女王が軍の本陣にいたことは間違いないはずです。

 それなら、どこかに記録があるかもしれません。」


「調べるのに時間がかかりますが、どうしましょう?」


と続ける彼女。


ううん?

まずはどうするか?


とりあえず、研究チームの無事を伝えに、

研究所に戻るか、、


あと右藤住職に金剛の事を聞けば、何か知っているかも?


加賀崎さん達はまだここに残って、文献の解読を進めるそうだ。

あと何か分かったら、研究所に連絡すると言ってくれた。


とにかく、急がないと。


他の場所の封印が破られて、東京に毒蛇の完全体が出ても、

もしこの仮説が正しいなら、何度でも復活されてしまう。



 


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