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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第4章 陽の光が地に堕ちる刻
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第56話 大蛇調査 その2 古代の事情

いつもお読みいただき、本当に有難うございます。休みでもう一つ書きましたので明日の分を公開します。明日はこの続きを公開予定です。

白髪の偉丈夫は、私達の前に現れ、


「我が名は、列焼英という。

 エンキタンで一将を任されし者だった。

 訳あって、今はこの文書保管庫の守り手をしている。」


と名乗り、辺りを見回す偉丈夫。

よく見るとアジア系の男性だが、

190くらいの身長とよく鍛えられた体格をしている。


「ふー、加賀崎 湊はいないのだな?

 仕方あるまい。

 我が用向きを聞いてやろう。」


そう言って、私達のほうに視線を向けてくる。


「ええと、私達はここの研究チームが行方不明だと聞いて、

 捜索に来たのですが、皆無事でしょうか?」


と私が事情を説明する。


「うーむ、ここに来たのは9人だが、皆無事だ。

 それ以外は分からぬな。」


天明さんの方を見て、私は人数が合っているか確認する。


「無事ですか。確かに9人で全員です。

 皆さん、食事とかは?」


と聞く天明さん。


「ふむ、皆適当に食べているみたいだぞ。

 そちらの用向きはそれだけか?」


そう言う偉丈夫に、今度はアテナさんが質問を投げかける。


「すまないのだが、ここと同じく発見された遺跡で、

 大蛇のような化生が見つかっているのだが?

 私の同僚が襲われていてな。

 何か知らないだろうか?」


アテナさんから引き継ぎ、

私が襲われた経緯を細かく説明すると


「ほう、良く生きていたな。

 ふーむ、ここに来た者からは聞いていないが、

 そうか、あの大蛇が出たのか。」


と偉丈夫、それに対し天明さんが再び質問する。


「大蛇について何か知っているのですか?」


その質問に、


「うーん、外界でどうなっているのかは知らんが、

 その大蛇については知っている。」


「この文書庫がある理由だ。」


「ここは我が部族エンキタンと西方の邪馬台国諸侯連合の間で、

 交わされた終戦協定の文書を保管している。」


と答える偉丈夫


「エンキタンと邪馬台国?」


何か分からんことになったと思わず口を出した私。


「うむ、そうだ。

 この地、今は日本と呼ぶそうだな。

 我々の部族は、この地に大陸から人が来る前から住んでいる。」


「この場所から東の肥沃な大地に根差した民だ。」


「我らがこの地で千を超える年を過ごす中、

 この地より遥か西の地に、人の国が相次いで建てられた。

 そして、勢力を伸ばした彼らはやがて我らと相まみえた。」


ちょっと待てよ?

私は不意に疑問がこみ上げ聞いてみる。


「あなた方は一体どこから来たのですか?

 私が知る歴史では、

 邪馬台国が最初の国と呼べる勢力だったはずですが?」


すると、偉丈夫は、


「うん、我らか?」


と言って私達を見渡す。


「なるほど、もう外はそれほどに失われているのか。」


「我らの祖先は、異郷より来たりし者だ。

 うむ、まあそなた等も同じようなものだがな。」


そこにアテナさんが話を戻す。


「それより、何があったのだ?

 戦でもあったのか?」


その質問に、


「そうだな、始りの国とは、小競り合いが絶えなかった。

 ただ、ある時、その国と周りの部族を統一した女傑が現れてな。

 その者が、邪馬台国と呼ばれる国を作った。

 その名を、卑弥呼という。」


「当時、細かな衝突があったが、かの女王が立ってからは、

 諍い事は嘘のように無くなった。」


「それから十数年、我らと、かの国は平和を享受していた。」


「ただ、その後、女王からの書簡で、

 何度もある霊薬についての問いがあった。」


「万病を治す霊薬、大陸のほうで耳にしたと聞くが

 我らもそんなものは持たぬ。」


「幾度も送られてくるその書簡に対し、

 我らの答えは同じ。」


「そして、戦は起こった。

 我らに対し、数千の兵を挙げて侵攻してきた。

 我らも侵入してくる邪馬台の兵に対し、

 同じ境遇の部族を集め戦った。」


「初めは、かの国の優勢だったが、

 やがて我らが巻き返した。

 ただ、邪馬台の女王は術を操る者だった。」


「死した兵を蘇らせ、我が同胞すらも兵とした。

 我らは、強き者のみで組まれた隊により、

 奴らを完全に葬った。」


「だがな、それにより女王を追い詰めてしまったらしい。

 女王は数多の屍から毒蛇を作り上げた。

 その毒蛇は、異郷より来た災いの蛇の依り代となった。」


「その蛇は8つの頭を持ち、その毒を浴びればどんな勇者ですら、

 倒れた。」


えええええ___


私は嫌な予感がするぞ!

そいつはやっぱりヒュドラじゃないか。


だが、話には続きがあった。


「毒蛇は、女王の国であろうが、我らの土地であろうが、

 お構いなしに暴れまわった。

 毒を振りまき、その巨躯で邪馬台の兵や我らを圧し潰した。」


「かの蛇が暴れまわること、1年。

 大地は毒にまみれた。

 我らは、我ら自身や動物を囮に使い、大蛇を森に引き入れた。

 毒により枯れ木の多い、森の奥深くへと導き、

 我らは森に火を放ったのだ。」


「その年は干ばつにより、火は瞬く間に猛々しく燃えた。

 10日の間、大火にその身を焼かれた蛇は、

 最後の時を迎えた。

 如何に再生しようとも復活できぬように、

 我らは蛇をその頭の数である8つに引き裂き、封印した。」


「その後、我らと邪馬台国率いる諸豪族との間に和平が結ばれた。」


「後で伝わったことだが、

 女王は、冥界に繋がる術のため命を落としていたそうだ。」


「この場所は、かつての災いを再び起こさぬために建てられた。

 ある意味、かの女王の碑と言えよう。」


そう話を締めくくる偉丈夫。


私はそんな彼に、聞いてみる。


あの大蛇は再び蘇ることはあるのか?


彼は、それはないだろうと答える。

あの蛇は、ある意味特殊なのだそうだ。


まず、首が増えるとか、尻尾が増えるなどの現象は、

その存在の格が上がることを示すそうだ。


ただし、古に九尾の狐などの伝承があるように、

全ての個体がそうなれるわけではないらしい。


実際そんな大乱を起こすものもいたので、

彼らの部族は再び異郷へと去ったそうだ。


しかし、それでも万年に1度、

そんなこともあるかもしれない程度。


女王の作った屍の毒蛇に特殊な存在が宿ったため、

そんな怪物が現れたのだろうと。


そんな話を聞いたあと、

研究者の女性が、向こうの書簡庫から入ってきた。


こちらを見て、

「あれ、誰ですか?」

と聞いてくる。


偉丈夫は、「そなたらを迎えに来たそうだぞ」と答えると、

私達を見つめ、


「ああ、研究所の!

 どうしたんですか?」


と聞いてきた。


彼女の名は 加賀崎 湊。

古生物学の研究者でこのチームの責任者だそうだ。


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