第55話 大蛇調査 その1 帰らない研究員
いつもお読みいただき、本当に有難うございます。カクヨム版は明日更新ですが、こちらは一歩先に更新。次話は日曜11時更新です。
ゲストルームに泊った一行。
朝、身嗜みを整え、ゲストルームから出た私は、
同僚二人と合流し社員食堂へと向かう。
時刻は午前7時。
研究所は、既に動いている。
働き方改革とか世の中では騒がれていたが、
この研究所では熱心な研究者が多く、
併設された寮にすら戻らず研究室に泊まり込む人も多いそうだ。
そのためか、食堂は午前6時から8時まで朝食、
午前11時から午後1時までが昼食、
午後6時から午後8時までが夕食と決められていた。
この時間に食べないなら自分で買ってこい!
これが、この研究所の方針らしい。
そうしないと夜の午前2時とかに夕食を食べにくる研究員がいるらしい。
始めは、冷蔵庫にラップをして保存したりしていたが、
夕食を結局食べない研究者もいて、
どうにもならないので今の形態に落ち着いたそうだ。
ここは会社なので、私と天明さんはいつものリクルートスーツなのだが、
今日はアテナさんも制服を着ていた。
警備の人というよりは、軍人さんがセレモニーなんかで着るような、
かっちりした制服だった。
今日は朝8時30分に、所長室に呼ばれている。
小野寺所長から今後の業務について説明があるそうだ。
これは食堂に来る前に天明さんから聞いた。
朝食は、程よく焼いた食パンに目玉焼き、大きなソーセージ、
そして、野菜サラダだった。
飲み物はホットミルク、紅茶、コーヒーの3種類から選べた。
一時期は食パンに水だった私にとって、とんでもない豪華さと言える。
さて、所長室に行くにはまだ早い。
私達はしばらくエントランスでテレビのニュースを見ることにした。
ちょうど、私のアパートがある地域の事件が取り上げられている。
当初、原因不明の陥没事故と報道されていたのだが、
その規模の割に、犠牲者がいないことなどが話題になっている。
当時、何故か被害のあった数百メートルの住民が、
駅前の繁華街のほうに移動していた。
京都の落雷事故でも、同じような事象が発生していることを上げ、
関連性があるのでは?という意見が出て、
出演者同士の激しい口論が繰り広げられている。
そのうち、時間になったため、私達は所長室へと向かった。
「やあ、おはよう。
ぐっすり眠れたかね?」
そう声を掛けてきた小野寺所長。
「おはようございます。
お蔭様で助かりました。」
と私は答える。
「おはよう、小野寺殿。」
とアテナさんも挨拶を返している。
何故か、天明さんはもにゅもにゅしている。
何なのだか。
「さて、今日来てもらったのは他でもない。
昨日言っていた遺跡関連なのだよ。
実はこの研究所の研究員チームにも、行方不明者がいてね。
君たちに、調査してもらいたいのだよ。」
小野寺所長が今日の仕事について話してくる。
「場所は何処なのだ?」
と聞くアテナさん。
「発見された遺跡は全部で8か所でね。
この研究所から近い場所にも遺跡はある。
もちろん、七果君のところとは別だがね。」
「その場所に向かった研究チームはもう1週間連絡が取れていない。
本来なら警察に届けるところなんだが、
うちは、過去同様のことが多くあってね。
なんというか、研究熱心な職員が多くてね。」
「ただ今回は、他のところとの兼ね合いもある。
大事がないといいのだがね。」
”場所はここだ”
そう言って、スマホアプリを操作する小野寺所長。
すると天明さんのスマホから着信音が聞こえる。
なるほど、職員用のスマホに遺跡の位置を送ったのか。
天明さんがスマホを確認し、口を開く。
「岐阜県の山中ですねぇ。
これ車で行けるんですかぁ。」
すると、所長が、
「ふむ、飛騨高山の観光ルートと重なっていてね。
そもそも、古い街道があるのだそうだ。
今は人がいなくなった八佐部村という集落があった場所に、
件の遺跡があるのだよ。」
と答える。
「まあ、行ってみますけどぉ。」
と、天明さんが答え、
所長は、社用の車を手配してくれた。
ーーーーー
ややキツイ高ばいとカーブが続く山道を車で行く私達。
今回は、グルメ旅とはいかず、真っ直ぐ目的地に向かっている。
まあ、私の時のように大蛇が出たり、変な骸骨が出たりしてたら、
調査中の研究員の身が危ない。
ちょっと、このカーブいつまで続くんだ、、
狭い道を行く車、連続するカーブに皆無言である。
やっと、その八佐部村とやらに到着できた一行。
はあぁあぁ、
深呼吸を何度もして、気分を落ち着かせる私達。
さてと、村は荒廃しているというか、
家屋自体は、ちゃんと残っている。
以前見た竪穴式とかではない、所謂、古民家だ。
村の中を散策すると、ちょっとした広場に研究チームのものなのか?
複数のワゴン車が停められていた。
近寄ってみれば、研究所のロゴが車に描かれている。
どうやら間違いないようだ。
だが、肝心のチームが何処にもいない。
特に何もないので、手分けして探すことにした私達。
研究所を出る際、
渡された職員専用のスマホでメッセージを交わしながら捜索開始。
うーん、おかしな所はないなあ、、
辺りには、人がいた形跡はあるが、民家のほうに人は見当たらない。
結局、一度集まった私達は、村の奥にある何かの社へ向かうことに。
そんなの見つかってるなら、初めから行けばいいのにって?
いやいや、確かに怪しいが、まずは周辺から調べるのが基本だろう。
何かメッセージとか置いてあるかもだし。
いきなり、躊躇なく怪しい所に入って、2重遭難になったら危ない。
じっーとその社を見つめる私達。
そもそも、発見されたのは遺跡のはず。
私の時は、少なくとも古代の建物などなかった。
あったのはあくまで朽ち果て土に埋もれた遺構なのだ。
例の少女の言葉によって、世界が切り替わった感じだ。
しかし、今、目の前には怪しい社がある。
社と言うが、そもそも土塀に回りを囲まれ、
そこそこの大きさの門のようなものが一つ。
そして、門から中を覗くと、
古代巨石文明にあるような石柱群が円形に立っている。
建物と言えるものはない。
土塀やら門と石柱群の関係性が分からない。
どうも誰かが入り込まないように、土塀で取り囲んだようだ。
石の柱のどこが危険なのか?
私達の皆が、無言でそれを覗き見ていた。
「さて、帰りましょう!」
と言い出す天明さん。
「いや、どう見てもここだろう、天明。」
とアテナさんが指摘する。
「はあ、アテナ、貴女も知ってるでしょう?
こういう事例は、古ければ古いほど危険です。
この周りを囲んでいる塀とかなら分かります。
江戸時代かどこかの時代でしょうから。」
そう言う天明さんは、次に石柱群を指し、
「あれはどう見ても厄介です。
何がどうって、見れば分かりますよね。
あれ、只者じゃない方が関連していますよ。」
「帰って報告する。
これで十分ですよ。
わたし達は、いつから戦闘部隊になったんです?」
「然るべき人に、報告すれば何とかしてくれますよ、本当に!」
珍しく事実確認もなく帰ろうとする天明さん。
しかし、アテナさんもまた譲らないようだ。
「天明、人命がかかっている。
今回、ここで帰れば、研究チームが全滅するかもしれない。
私達が来たのは、そういう事への対応も入っているはずだ。」
意見がすれ違う中、私は石柱を見つめ続けている。
うーん、何となくここは大丈夫な気がする。
以前は、近寄ると嫌な気配が強くなったが、
今はそうでもない。
「とりあえず、行ってみよう。」
そう私は決断した。
はあ、と溜息をこぼす天明さんと
鋭い目は変わらないが口に笑みを浮かべるアテナさん。
石柱群へ近寄る私達は、眩暈に襲われ、
周辺の景色は一変した。
辺りを見回すと、そこは大量の書簡が置かれた何かの保管庫だった。
そして、そこには研究員と思われる人が、
7人ほどせっせと作業をしている。
私達が現れても、何の反応もない。
研究に没頭しているようだ。
どういう状況なんだ?
急な展開に事態を飲み込めない私達の前に、
宙より突如現れた白髪の偉丈夫が立ちはだかる。
「ほう、また来たのか!
学者というものは、かくも大変なものなのだな。」




