第54話 一息つこう
今度の日曜日に更新予定ですが、
化け蛇の調査に向かうまでにまだちょっとあったので今日補完しておきます。
話、進まなかったらまずいので。
午後3時、私達は会議室で広報担当の明木さんに、
レクチャーを受けていた。
以前ここを訪問した時、天明さんがお願いしていた、
説明上手な広報さんだ。
施設の案内は、前の時に小野寺所長が簡単にレクチャーしてくれた。
今回は、この研究所の世間的な立ち位置や業務の説明を、
解説してくれている。
目下のところ、私達はこの研究所に出向の身となった。
自分の勤めるところについて、最低限知っておく必要がある。
古代人類史社会理科学研究所。
名前を聞くと、縄文遺跡とか色々な日本の史跡を、
発掘調査している研究機関かと思うだろう。
私も考古学関係の研究をしているのだと思っていた。
所謂、古墳とか、邪馬台国時代とかの調査、
あるいは、未発見だった戦国武将の手紙とか、
国宝級の重要文化財の修復とか色々思いつく。
広報の明木さんもそれは認めていた。
確かに、この研究所は考古学関連の研究が主だそうだ。
「七果さんのご指摘通り、私達の研究は考古学と密接に、
関連しています。」
そう語る明木さん。
広報担当の女性研究員さんである。
本当の業務は、古代文書の翻訳だそうだが、
ここの広報部の助っ人をしているそうだ。
実際、この研究所に勤めている職員は、
何かしらの研究に携わっている。
なんで事務専門とかの人員を雇わないのか?
それは、この研究所で行われている研究の秘匿性が、
関わっているらしい。
ここからは、何時まで経っても話が進まないので、
明木さんが話すことを超要約させていただく。
仕方がないのだ、一般人に研究者の熱いこだわりなど理解不能だし、
作者はお話を早く進めたい!
では、要約すると、
この研究所は表向き、
色々な年代の、主に古代文書を収集研究している。
実は日本の歴史というのは、古くなるほど謎だらけなのだ。
例えば皆知ってる邪馬台国、現在でもどこにあったのか不明だ。
さらに、ヤマト王権からの天皇が誕生して、日本統一まで。
実はさっぱり分かっていないことばかり。
お隣に存在した中国や朝鮮半島の国々の歴史は分かっている。
邪馬台国の卑弥呼がいた時代には、
中国では地域一番の大国があり、学問や文化が発展していた。
日本の最初期の国の長は、記録上3世紀頃の人物である。
超有名な卑弥呼女王だ。
もっと昔の王もいるが、はっきりした何かがないのだ。
だが、ここから色々拗れることがある。
後に栄えることになったヤマト王権で、最初のトップとなったのは、
大王と呼ばれる今の西洋国家で言うキングである。
この大王の系譜は、のちに天皇を名乗ることになるのだが、
8世紀頃に自身の系譜を日本書紀として編纂する。
ついで、古事記なるものも現れるわけだ。
ここで問題になるのが、天照なる女神がこの日本の地に、
その子孫を派遣し、この地を治めさせた云々である。
正確には、神武天皇と呼ばれる神代に現れた天皇のご先祖様が、
初代になっているが、邇邇芸命なる存在の何代か後の孫だそうだ。
さて、皆さん、分かってくれるだろうか?
どこから天照大御神なる存在などが出てくるのか?
紀元300年前後に女王卑弥呼が率いる邪馬台国が存在するのは、
確たる事実なのだが、その後の歴史認識はかなり不安定になる。
もちろん、その後も中国などの大陸国家との交流はあるにはある。
ただし、海を挟んだ日本という島国で何があったのか?
実際のところは分からないのだ。
特に邪馬台国以前とか、ヤマト王権の始りとか分からない部分は、
色々ある。
だが、日本人に邪馬台国以前とか、天皇誕生前何があったのか?
習ったことがある人はいるだろうか?
そして、神代の時代に授かったという三種の神器。
今でも大掛かりな行事は日本全国で続けられている。
伊勢神宮の式年遷宮などはそのいい例である。
そう疑問の果てに、日本の誕生に関する根本的な謎に辿り着く。
天照と呼ばれる女神を祭る伊勢神宮。
日本の主神格であるが、この神が登場するのは日本書紀やらなのだ。
ちなみに邪馬台国の卑弥呼とは無関係みたいだ。
日本の伝統的な神事の源流が、実は1200年ほど前に作られた
日本書紀なるものを基にしている可能性がある。
もちろん、昔からの伝統や伝説が日本書紀に、
反映されている可能性もある。
ただし、一つ疑問が出れば、いくつもの疑問が出てくるだろう。
そもそも、日本の始りの国生み神話から天孫降臨までのお話と
現代科学を基にした考古学的見地。
日本の歴史は、3世紀くらいの邪馬台国より前となると、
いきなり石器時代になってしまう。
そこを必死に考えると、今度は日本書紀の天孫降臨になってしまう。
実際、20年ごとに数十億円かけて、
式年遷宮という行事が行われ、天皇陛下も認めている。
「私達日本人の知る歴史は、色々と不可解なモノを抱えています。
皆さんは、無神論者と答えるかもしれません。
ですが、私達の知る歴史は、神代に繋がっているのです。
その謎、私達が特に意識せずに考えている歴史認識は、
実はとてもおかしなことなのです。」
「当たり前に正月には神社に参拝する方がいます。
一方で、それでも無神論者だと主張する方は多い。
私達が知っている神の名は何処から齎されたものなのか?」
「宗教というものはそういうモノだと言う方もいるでしょう。
しかし、日本は色々な面で特殊です。
国のトップが、その事実を認めつつ、国民自体も科学を信じるのに、
無意識に神話上の人物が歴史に登場していることを容認している。」
「私達はそのちぐはぐな歴史観になにがあるのかを調べているのです。」
と明木さんは締めくくった。
どうだろう?
大分要約したのだが、分かりにくかっただろうか?
その後、人事部によって、社員寮の使用について届け出をした。
明日の午後3時くらいから使用できるように手配してくれた。
今日は社員寮にあるゲストルームに泊ることになった。
一人一部屋の割り当てである。
夕食は例によって社員食堂で摂ることが出来た。
割り当てられた部屋で、
風呂に歯磨きなどの寝る準備を整えた私。
昨日今日は色々あった。
昨日襲ってきた大男だが、果たしてどうなったのか?
あれが、夢の天使?なのか、いや召使いか。
しかし、それにしては、弱すぎる。
あれが本物だというなら、アテナさんや他の異様な存在が、
それほど回りくどい真似はしないだろう。
そもそも私は、本格的な訓練もしていない。
身体能力や色々な力が使えるようになったが、
戦闘で十全に生かし切れているとは言えないだろう。
その私が少しは足止めできたのだ。
その程度の相手が、神話の神々を相手に出来るだろうか?
アテナさんはあれで全然本気ではないだろう。
私と違って、本来ある武装を全然使っていない。
さて、まだあの天使な召使い?は私達を狙ってくるだろうか?
私達が逃げ延びたことくらいは把握していそうだが。
まあ、今考えても仕方ない。
どんなに考えても答えは出ないのだから。
となると、当面は私がこうなった元凶であるあの大蛇についてか?
アテナさんはヒュドラとか言っていたが、
それってよくゲームに出てくるあの有名な怪物だろうか?
彼女は、毒を吐くので厄介とか言っていたが、
私が出会った奴は、その身体も大きかった。
あの時、千々に散っていったはずの大蛇だったが、
あれが、何本もある頭の一つとか言うのだろうか?
というか、東京付近であのサイズの大蛇が暴れたら?
特に毒を吐くって言ってたが、
それって竜のような息吹なのだろうか?
辞めてほしい。
場合によっては大惨事だ!
防護服着てないと、駄目とか、
普通に毒ガス兵器と変わらないから。
人類が倫理的に禁止している恐ろしい武器の一つ。
強力で残酷すぎるそんなものを大量にまき散らす大蛇。
それが頭が何個もあるってか!
どうするんだ、ソレ。
まあ調べてみないと分からないが。
案外、退治したあの大蛇だけかもだし。
そもそも、想像通りだと大昔の日本人に対応できるはずがないしな。




