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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第4章 陽の光が地に堕ちる刻
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第53話 化け蛇

相談を終えた私達。


軽い食事を頼み、朝食を終えた一行は、駅へと歩く。


とりあえず、天明さんが今勤めている古代人類史社会理科学研究所へ、

向かうことになったのだ。


自宅であるアパートは、当分封鎖されるだろう。

そもそも、再び住むにしても天井などの補修が必要だ。


家賃が、リーズナブルなアパートだったが、

今回の事で建て直す方向になるかもだ。


前と同じルートで、電車と地下鉄を乗り継ぎ、

午前9時30分、研究所に辿り着いた私達。


ちなみに、アテナさんの愛車は、何かの重量物に潰されたように、

天井がへこみ、フロントガラスが粉々に割れていた。


あれでは廃車にするしかない。


あの状況で保険は下りるだろうか?

天災扱いになりそうだが。


出勤時間にしては、遅い到着。

今回はアポなしだが、天明さんがエントランスの受付と交渉開始。


私達は、そっと後ろから観察している。


アテナさんは、どこから来ているのかって?

彼女は大阪にあるガイア神話連盟の系列会社に所属している。


例のプロジェクトのため、彼女もそちらへと出向していたらしい。


さて、交渉していた天明さんが戻ってきた。


「小野寺所長は、現在テレビ会議に出席中だそうです。

 予定では、11時頃終わるそうですよぉ。

 その後、会ってくれるそうです。」


と、のんびりした口調で結果を告げてくる。


「はあ、11時かぁ、

 それまでどうしようかな。」


そんな言葉が私の口から洩れる。


「あと1時間ちょっとだな。

 天明、どうする?」


「そうですねぇ。

 それじゃ、わたしのオフィスに行きますかぁ?」


そう言って、受付から見学者用の身分証を貰ってくる彼女


そういえば、アテナさんが天明さんを呼び捨てにしているな。

名ではなく、苗字のほうを。


各自、身分証を首にかけ、

先導する天明さんの後を着いて行く私とアテナさん。


社員用エレベーターに乗って2階へ。


エレベーターを出て、少し進んだところに、

天明さんの研究ラボがあった。


中は意外にも片付いていたが、

以前見た他の研究ラボとは違い、

彼女のラボには沢山の蔵書が置かれていた。


「よいしょぅと、

 皆さん、そこら辺に座ってください。

 何か飲み物いりますかぁ?」


と天明さんが聞くので、


「お茶、ありますか?」


と答える私。


「私は紅茶を頼む。」


アテナさんは、紅茶派か。


それぞれの飲み物を配り、天明さん自身はコーヒーを容れる。


「こほん、皆さん、私の研究室にようこそ!」


改まって、彼女が挨拶し始める。

続いて、何やら古代文学について語り始めた


はあ、と溜息を付くアテナさん。

私を見て、首を振る彼女。


”まあ、適当に聞いてやってくれ”

その顔は雄弁にそう語っていた。


まあ要するに、天明さんは古典的文学にハマっていた。


何が良いのか、私は門外漢で理解が及ばないが、

彼女が、並々ならぬ情熱を傾けているのは、

その話しぶりから分かった。


そうしていると、研究室に備わっている社内電話で

テレビ会議が終わり、小野寺所長が呼んでいると連絡が入った。

前に行った所長室に来て欲しいそうだ。


天明さんの先導で、3階の所長室へ。


インターホンで来た事を彼女が伝えると、

「入りたまえ」と返事があった。


中は、以前より片付いていたが、

所長室の一角に、文献が開かれた状態で並べられていた。


私達の方を見て、「ほう」と感心する小野寺所長。


「ふむ、皆、大変だったようだね。

 それとそちらのお嬢さんが七福君かな?」


と尋ねてくR。


「ええっ、」 その言葉に天明さんが少し驚いている。


「あの所長が、そんなことに気づくなんて!」


そもそも、一般の人は私のこの状態に違和感を持たないらしい。

それは今までで納得してきたことだった


私を知っている人は、性別や外見の変化に疑問を持たない。


そして、私を知らない人は、私を十代の女性と認識する。


しかし、元の身分証明証などを見せたとしても、

そこに違いを見出せない。


なぜ、そうなるのか?

それは例のクライアントが、ずっとこの星で活動するためだとか。

彼らは人と違う時間感覚を持っている。

そして、余りにも違う活動期間。


人の社会に溶け込むため、彼らは人の意識を操作して、

そういう違和感を持てないようにしたそうだ。


私達の敵になるであろう彼らの施策が、今は私に味方していた。

しかし、小野寺所長はそこに気づいている。


「はい、そうですが、

 なぜ、分かったんですか?」


そう率直に聞く私。


「ふむ、研究者というのはね、

 思い込みというものを排除して考える習慣があるのだよ。」


「色々な発見を妨げるもの、

 それは、先入観なのだよ。

 これはこう、それはその形、

 そんな常識的感覚が、時に発見の邪魔になる。」


「だから、ありのままを見て感じたことを素直に思考する。」


「あるべきなどという考えを捨てることで真理に辿り着くのだ。」


”まあ、私の場合は知り合いにそういう境遇の者がいるのもあるがね”


そう言う彼は、ちょっと興奮気味だ。


「天明女史が来て、君らが現れた。

 そして、色々なことが、進み始めた。

 今は時代の転換期なのかもしれないね。」


そこで天明さんが、今回のことを口に出す。


「はあ、実は、七福さんは今、七果と名乗っています。

 ついでに例のプロジェクトから外されました。

 その結果かどうかは分からないのですが、

 加具茂寺のようなことが起こりまして、

 今家がない状態なんです。

 なんとか社員寮のほうを解放していただけませんでしょうか?

 こちらのクランベリーさんも同じ状態なんです。」


そう一気に切り出す天明さん。


「ふむ、七福君、いや、今は七果君でいいか。

 そして、クランベリー君、君らは今どういう立場になるのかね?」


「実は、天明女史が勤める、うむ、彼女本来の所属先だが、

 そこからプロジェクトは別の担当者に変わったと連絡があってね。

 天明女史を含む君らを一時的に、

 こちらに預けると言われているのだよ。」


すると天明さんが、


「七果さんは、現在私の会社の正規社員ですね。

 あと、クランベリーは、、」


と言って、アテナさんの顔を見る。


「私は七果のチームメイトだ。

 そう行動するように言われている。」


と答えるアテナさん。


「ふむ、費用は君らの会社が持ってくれるそうだから、

 問題はないがね。

 担当に連絡しておくよ。」


「あと、少し話を聞いていいかね?」


と私達を見る小野寺所長。


「なんでしょうか?」


なんとなくその視線が私を見ているのを感じ、そう答える。


「君らの住んでいる地域で、最近見つかった遺跡のことだ。

 実は他にも同様の遺跡が、東京で見つかってね。

 その後、日本全国で合計8か所に渡り見つかったのだよ。」


「まあ、邪馬台国の遺跡など、日本全国で遺跡探索は行われている。

 今だはっきりしないモノが多いからね。

 ただ、この遺跡で謎の失踪事件が相次いでいてね。

 研究者が何日も研究所に籠ったりすることはあるのだが、

 ここは日本だからね。

 普通は家か、宿泊施設に一旦帰るのだよ。

 しかし、この発掘現場から戻らない者が出ていてね。」


「そこで、君のその姿。

 その物騒なクライアントの仕業かもしれないが、

 それ以外で何かあったのじゃないかね。」


「君たちが家を無くしたのは今日か昨日だろう?

 それなら、今朝のニュースにあった、

 大規模な陥没事故関連じゃないかね。」


「だがね、その遺跡関連の事件は、

 2週間ほど前から顕著になっていてね。

 ちょっと前から天明女史の様子も慌ただしかった。

 何か発見された遺跡について知らないかね?」


そう言われると、説明するしかないかな。

人命がかかっているみたいだし。


それに、加具茂寺の一件に関わっていて、

彼は、こういうことに偏見もないようだ。


手短に、遺跡で古代の集落に飛ばされたことと、

そこで遭遇した大蛇の事を伝えた。


聞いていた小野寺所長は、


「うーむ、正直、古代に日本全体を勢力下とする文明はなかったはずだ。

 少なくとも、邪馬台国などは、日本の一部地域の勢力でしかない。

 それも関東や北海道には届かないはずなんだが。」


「集落はただ単に古い家屋だったのかも?

 今でも古い家屋を使っている集落は有りますし。」


と私がその疑問に答えようとするが、


「そう、うーん。

 とにかく、その大蛇とやらは、危険だったのだね?」


その問いに、


「それはそうです。

 十メートル超の蛇で、私を襲ってきましたから。」


「そうか、一応君たちの住んでいる地域も、

 調べる必要はあるのだが、

 問題なのは、東京の遺跡なのだよ。

 都心からは外れるが、場所は人の住む場所に近い。

 当初はクマ騒動で現地を警戒していて見つかったそうでね。

 その跡は大きなものだったが、

 草木に覆われて隠されていたのではと考えられている。

 そして、他の場所で見つかった遺跡と年代が一致している。」

 

「調査は続けられているが、

 七果君の言うような祭壇跡が見つかっている。

 ここからが問題なのだが、東京の遺跡は他より規模が大きいのだ。

 この一連の失踪事件は、この遺跡関連かもしれないし、

 遺跡を作った誰かは、

 祭壇を作って何かを祭っていたのかもしれない。」


説明している小野寺所長の顔からは、ある種の困惑が見られる。


「この際、君らに近くの遺跡を見てきてもらいたいのだよ。

 何もないに越したことはないのだがね。」


そう言葉を続け、


”人事部に連絡しておいたから、

今日のところは社内の応接施設を使ってくれたまえ。”


私達は再び、2階の天明さんの研究室に戻ってきた。

昼食は社員食堂で済ませていた。


今はそれぞれ、飲み物を手に持って、

小野寺所長の話を吟味中だ。


「8つの遺跡に、蛇の化け物かあ。」


そして、自分の名乗る真名を思い浮かべる。


天明さんもその考えに至ったのか、


「8つ首の大蛇、ヤマタノオロチなんかでるんですかねぇ。」


と、言い出した。


アテナさんも、


「ふむ、日本のヒュドラか?」


とそれに乗っかる。


「ヒュドラ?」


確かにそんなモンスターも西洋の神話にいた


アテナさんが本物のギリシャ神話から出てきたわけだから、

そんなのもいたのかもしれない。


「実際、そんなのいるんですか?」


と、私は半信半疑で聞いて見る。


「うむ、異郷由来の化け蛇だ。

 頭が複数あってな、数が増えるほど手強い。

 神話にあるような不死性はないのだが、

 再生能力は確かに高い。」


”だが、それが問題じゃないんだ”


と続けるアテナさん。


「奴らは強力な毒を吐く。

 霊性の高いものであっても、

 その毒に耐えられないこともある。」


「今回のは、討伐したものの当時は、

 倒し切れずに封印でもされたのかもしれん。」


”問題は、毒を吐く巨大な蛇が、

大都市部の近くに復活するかもしれないということだな。”


と、アテナさんは締めくくる。

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