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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第4章 陽の光が地に堕ちる刻
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第49話 型破り

「さあ、この場にいる妖精を一人でも捕まえてみて!」


そんな妖精の女性の声が、響く中、訓練がスタートした。


妖精か。


ふむ、どうやらこの花畑の所々に、

見えている蝶みたいな光が妖精か何かなのだろう。


私もこういうのは、何処かで見たことがある。


ちょっと、状況は違うがやることは同じだろう。


とりあえず、咲き誇る花を出来るだけ避けながら、

光の集団へと近づく私。


すると、光の集団は私から離れるように動いた。


なるほど、これはテンプレだな、

そう考えた私は、ゆっくり深呼吸をした。


そして、もう一度、光の集団に近づく。

今度は、集団がどこまで近づくと反応するか?

それが知りたい。


慎重に近づくと、大体一般男性の身長くらいの距離で、

光の集団は反応した。


170cmくらいか?


うん、ならばと、2メートルほど距離を置いて、

私は目を閉じ、瞑想を始めた。


物事には、鉄板のテンプレ展開というものがある。


おそらくだが、あの妖精と思われる光は、

私が、捕まえようとしていることを警戒して動いている。


そう接近する私が、

自分達に危険を及ぼすことを恐れて、

いつでも逃げ出せるよう、距離を保っているのだろう。


一斉に遠くに去っていかないのは、私の存在を見極めるためだろう。


ふふ、私も日々、こういう事態に備え、

ネット検索や書籍を漁って、学習しているのだ。


こういう場合、やたら距離を詰めるのではなく、

私が危険ではないことを示し、あちらから寄ってくるように仕向ける。


アテナさんがこの格好をするように指示してきたのも、

そういう意味だろう。

勝手にアテナさんの意図を汲んだ私。


そう捕まえろと言われて、その意味のままに捉えるのは愚の骨頂。


これこそが、正解だろう!

我ながら、自身たっぷりに、瞑想を続ける私。


おっと、邪心が漏れてはいけないな。

と、精神の乱れを修正する。


充分に時間を置き、私の心は限りなく澄んでいる。

目を開ければ、私の周りに光の集団が集まっているはずだ。


そんな期待を胸に秘め、目を開ける私。


えっ、、、

そんな馬鹿な!


一番近くにいたはずの妖精と思われる光が、

10メートル以上離れた部分へと移動していた。


心なしか、今まで穏やかに舞っていた光が活発に動いている。


くっ、ここはお約束ではないのか!


それから私は、精神統一したり、

その状態を保って接近したり色々試みた。


試せば試すほど、光の集団は離れていく。

最後には、集団自体が散り散りに逃げて行った。


なぜだぁぁぁ、、、、、


私は、他の集団に狙いを変え、試行錯誤。


精神統一、無の境地、敵意がないことを示すため、

友好を語り掛けたりした。


全部失敗した。

というか、今までの結果を見れば、

一番最初の時が、一番近づけた。


どうなってるの???


身体能力任せで、強行に接近を試みても上手くいかなかった。


はああ、思わず溜息が出た。


もう何が原因かわからん。


今までの社会経験どころか、ネットからの情報も役に立たない。


まあ当然と言えば、当然かもしれない。


私が見たのは、都市伝説やネットの小説の類だ。


皆、実際にこんなことを経験しているわけがない。


情報自体が、皆の想像の中で展開しているものだ。


自分自身、こんな体験をしているのだから、

他にも体験している人はいるかもだ。


しかし、今の状況とは違った感じである可能性は否定できない。


必ずしも、ネットの情報が嘘であるとは限らないが、

今の私には役に立たなかった、それだけなのだろう。


ううん、頭痛がしてくる。

ついでに、何か耳鳴りもする。


おかしいな、私は頭痛持ちではないのだが。

それに耳鳴りが気になる。


少し、耳鳴りに集中してみると、

澄んだ高い音が聞こえていることが分かる。


気のせいか、集中すると音が大きくなった。

騒がしいとか、うるさいとかいうものではない。


そして、身体が風の流れを感じ始めた。


おかしい。

花などの植物、花びらや葉が風で揺らいだりしていない。


改めて、意識したら、

自分の身体から何か目に見えない渦を発している感覚がある。


あくまで、感覚であって目では見えない。


手の先からも何かが放出されているようだ。


両手の平を少し離して、合わせ鏡のように翳す。


手の平自体は、お互いに触れていないし、

何も持っていないのに、何かの圧力を感じた。


意識し始めると、

自分の周りに、風ではない何かの流れを感じ取れるようになった。


右手の手のひらを前に向け、集中してみる。

すると、何かが放射されている感覚を感じ取れた。


ふと私は、この姿になった時のことを思い出した。


あの時、無意識に使った力の中に、原理不明のものがあった。


”風鈴二閃”


あれはそもそも、太刀を使っているわけではない。


その時は、ただ脳裏に浮かんだことを実行していたし、

何等かの魔法の類と思っていた。


しかし、魔法って言っても、

何らかの力が必要であり、その制御も必要だろう。


あの術らしきものは、狙ったところに風の斬撃を発生させるもの。

無意識に使ったが、どうも今の状況と関連する感じだ。


自分の身体からも、見えない流れは発生しており、

集中すると、手に集めたり、周りの流れに干渉したりできた。


不思議だ。


改めて、光の集団にそっと近づく私。


すると、そっと近づこうと意識するからか、

周りの流れが渦を巻き始めた。


はあ、深呼吸を一回、

今度は何も考えず、無造作に妖精の光に近づく私。


目に見えない流れは、比較的穏やかになり、

光との距離は、1メートル半ばまで近づく。


結局、そこまでで、また離れていく光の集団。


なるほど、この何か分からないが、

見えない流れを妖精の光は感じ取っていたみたいだ。


その後、私の試行は、夕方まで続いた。


妖精の夫婦からストップがかかり、

元の展望スペースへと戻された私。


「ふむ、何かつかんだようだな。

 七果、ご苦労様。」


と、アテナさんが声を掛けてくる。


「はあっははは、

 こっちのお嬢さんのほうが、筋がいいよ。

 嬢ちゃんは、何か月も気づかなかったしなあ。」


と妖精の男性が言うと、


「まあ、まあ、お嬢ちゃんに花を持たせてあげましょう?

 私達は、大人ですからねぇ。」


ふふふ、と上品にほほ笑む妖精の女性。


「くっ、七果、しっかり覚えておけ。

 妖精は敵意はないが、悪意は満載だ!

 意地の悪い一族として、名高いから注意するのだぞ。」


と、悔し気に呻くアテナさん。


そろそろ、帰らないと陽が落ちて暗くなる。

あの狭い山道を帰るのだから、早く行動した方がいい。


そう分かってはいたが、もうちょっと挑戦したい気持ちもある。


「いくぞ、七果。

 妖精王よ、世話になったな!

 もう来ないから、安心してくれ」


とアテナさんが、別れの挨拶を口にする。


「嬢ちゃんにお嬢さん。

 いつでも来て遊んで行ってくれよ。

 また楽しみにしているよ。」


妖精の男性が言い返し、


「そうよう、何も用事がなくても歓迎するわぁ。」


と、妖精の女性が言い添える。


「本当に勉強になりました。

 有難うございます。

 また、来れたらお願いいたします。」


と私も別れの挨拶を返した。


車に乗って、山間部を逆戻りする私達。


今日は感慨深い出来事で満載だった。


そして、今日一日、例のヘッドバンドを使っていないことに

気付いた私。


今までアレがないと何も出来なかったのだが、

やはり、私も十分変わった存在となっているようだ。


自宅である安アパートに戻ると、

駐車場に天明さんの姿があった。


「皆ひどいですよぉ。

 わたしは仲間外れですかぁ。」


そう宣う彼女は、今日の昼頃到着して、

ずっと待っていたらしい。


昼食は牛丼を食べたそうだ。


そして、今日の用事は、今後のプロジェクトについての話だった。


「七ふ、えっと七果さん、

 貴女をプロジェクトの参加者から外すことが決定されました。」


「今後は別のチームが引き継ぎ、違う候補者が選定されます。」


「当プロジェクトに出資している

 クライアントの意向を汲んだ決定となります。」



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