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俺は人生を捧げない、私は全てを取り戻す!  作者: ふりがな
第3章 その献身は、誰が為
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第42話 襲われる村

なんだこれは!


ビルの建設現場だった周囲の景色は、

今、その姿を変えていた。


ナンダ_オマエハ____


辺りを見回す私の目に入るのは、

教科書で見るような古代の家屋の類だった。


人の姿は見えないが、

さっきから周囲に冷たい気配を感じる。


マダ__イキノコリ___イタノカ_


コロセ___


物騒な言葉が、私の頭に響く。


これは!

慌てて、持ってきた鞄から、例のヘッドバンドを取り出す。


頭に装着すると、


”装着者と周辺環境の位相のズレを観測”

”装着者の安全を考慮し、位相の修正を試行します”

”修正完了”


そんなメッセージが頭に響いたあと、

今まであった民家の並ぶ光景に、人影が追加された。


ちょっとした眩暈を感じ、目を瞑ると、

身体を火に炙られるような熱気を感じた。


慌てて目を開ける私の前に、

炎を上げ燃える民家の姿があった。


周辺の民家の幾つかから出火している。


いきなり、なんだ!


更に追加された人影の一つが、私を凝視していた。


その人影は2メートル近い身長を持つ骸骨だった。


鎧を着ているようだが、

そこかしこに大きな傷や穴が開いている。


その手に、錆びた剣のようなものを持っている。


京都で見た幽鬼に近い出で立ちだが、

身に着けているものは、遥かに原始的に見える。


「おじさん、危ないって言ったよね。

 さっさと隠れなよ。」


先程の少女が、こちらを見ながら、

そんなことを言ってきた。


見回せば、幽鬼っぽい人影は、

幾つも存在しており、私を見つめる幽鬼のもとへ

集まりつつある。


だが、不思議なことに件の少女を、

気に掛ける素振りは見えない。


どういうことだ!


私は急いで、鞄から錫杖と巻物を取り出し、

金剛を呼び出す。


すると、幽鬼の目が紅い光を帯びた。


金剛に、私と少女を守るよう指示すると同時に、

戦闘は始まった。


最初の幽鬼が、錆びた剣を振り上げ、

金剛に斬りかかる。


その動きは緩慢だったが、

2メートルある骸骨の振り回す剣だ。


相応に威力はあるだろう。


しかし、金剛は、剣自体を掴み、

その膂力で骸骨を自分の元へと引き寄せる。


剣を引っ張られた骸骨は、

蹈鞴を踏んで前のめりに体勢を崩した。


金剛は、そんな骸骨の頭を掴み上げ握り潰す。


さらに、寄ってきた別の幽鬼に突っ張りをかます金剛。


その骸骨は、数メートル宙を駆け、地面に叩きつけられる。


骸骨は、朽ちた鎧を大きく砕かれ、

本体も、胴体部分が破壊されたようだ。


その後も、金剛は、腕を別の幽鬼に向け、力の限り薙ぐ。

すると動きの緩慢な骸骨数体が、吹き飛んだ。


うん、身長5メートルに達する金剛。

2階建て住宅ほどの身長と重機を超える膂力を持つその身体。


幽鬼な骸骨も、普通の日本人よりも頭二つくらい大きいが、

金剛のそれとは比べるべくもない。


その上、金剛は非常に鍛えられた外見だ。

武器はもっていないが、その身体がもはや凶器以上の兵器だった。


今まで遭遇した相手が、規格外の存在だっただけで、

通常の相手なら無双できる能力がある。


なにせ、京都では、日本有数の化生である鬼や天狗を相手に、

互角以上の戦果を挙げている。


戦闘音を感知してか、この集落を燃やしたであろう幽鬼たちが、

次々と集まってくる。


しかし、骸骨の胴体を身に着ける鎧ごと握り潰す金剛。


幽鬼たちが持つ錆び朽ちた剣では、

金剛の金属めいた皮膚に傷一つ付けられない。


緩慢な動作で斬りかかってくる骸骨に掴みかかり、

投げ飛ばす。


腹に剣を突き立てる幽鬼を片手で持ち上げ、

襲ってくる別の骸骨へと放り投げる。


もはや、金剛の無双は止まらなかった。


しばらくすると、幽鬼の残骸だけが残る現場。


戦闘は圧勝かと思われたその時、

この集落?で一際立派であろう屋敷のほうから、

1体のゴツイ巨人が現れた。


今までの幽鬼は錆びた直剣をもって襲ってきたが、

この巨人は丸太のように大きな棍棒を所持している。


その大きさは、骸骨より一回り大きい。

しかし、私が最も目を引いたのは、その巨人の姿である。


有体に言えば、その身は腐り朽ちていた。


どこかの墓場から這い出てきたような出で立ちである。


こいつが首謀者だろうが、

この様子では、話が通じるとは思えない。


その巨人は、何も語らず、金剛にその棍棒を叩きつけた。


片腕で、攻撃を受け止めた金剛は空いた手で、

棍棒自体を掴もうとする。


しかし、緩慢な骸骨たちと違い、素早く武器を引き戻す巨人。

腕を空振りさせた金剛に対し、前蹴りを放つ。


衝撃を受け金剛の体勢が崩れると、

再び棍棒を今度は足を狙って、低く払う。


ゴォ_ン__


金属を叩くような重く低い音が辺りに鳴り響く。


連続した素早い攻撃に、金剛は翻弄される。


足を付く金剛に、

上段に構えた棍棒を力の限り振り下ろした巨人。


少し低い体勢になり、

頭部のガードが、おろそかに見えたのだろう。


渾身の一振りが、金剛の頭を直撃した。


この巨人、その朽ちた外見に見合わず、

意思の類があるのかもしれない。


勝負は決したとばかり、今度は私の方を睨んでくる。


だが、その判断は、まだ早かった。


視線を逸らした巨人の近くで、金剛は態勢を整え、

巨人に襲い掛かる。


両腕で巨人の胴体を抱きかかえる金剛。


万力のようなその大きな腕に抱えられ、宙づりになった巨人。


金剛は、両腕に更なる力を込めて巨人を締め上げる。


ググゥ___


それからは、巨人との力比べとなった。


棍棒を捨て、金剛の腕から逃れようと足掻く巨人。


その両腕が、何度も金剛を叩く。


しかし、懐に入られた巨人は、十全な力を発揮できない。


巨人は、金剛より戦い慣れていたようだが、

純粋な力比べなら、金剛に利はある。


ミ_シィ___


巨人の胴が軋む音を発し始め、次第に抵抗は緩慢になった。


ゴギィィイ___


その背が折れる音が響き、

金剛が、腕を放すと、巨人は地に崩れ落ちた。


しかし、その顔には憤怒が宿っており、

砕かれた背に構わず立ち上がろうとする巨人。


だが、金剛は、その頭に向かい足を振り下ろす。


頭部を粉砕された巨人は、ようやく動きを止めた。



ーーーーー


もう、幽鬼はいない。

あの巨人が、親玉か。


安全を確かめるため、周囲を見回す私。


そこに、この異常の発端である少女が声を掛けてきた。


「へぇ、おじさんの連れ、強いね。

 でも、ちょっと目立ちすぎ。」


そう言う彼女は、ほとんど被害がない。


戦闘中、その少女は身を隠していたわけではない。


普通に少し先に立って、こちらを眺めていた。


時折、金剛の大立ち回りに巻き込まれないよう、

移動はしていたみたいだが。


明らかに、幽鬼たちは、私や金剛だけを敵視していた。


何かが違う。

そんな考えが頭にこびり付く。


「まあ、あの邪魔なのもいなくなったし、

 そろそろ、進もうかな。

 おじさん、ついてくるなら、

 その連れは、還した方がいいよ。」


そんなことを私に告げ、

彼女はこの集落で一番立派と思われる屋敷へと歩き始めた。


いまだ数軒の家屋から火が上がっている。


今の私に、他の選択肢はないだろう。


金剛を送り還し、私は少女の後を追った。

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